雲一つない真っ青な空の日が続いたおかげで、海の日を含めた三連休はとても忙しかった。
県内でも有名な海水浴場であり、更に昨年から話題の人気店。
あっという間に外まで長く行列が伸びた。
海の家のはずなのに、どこぞのテーマパーク並み。
みんな海に来たんじゃないのか?と聞きたくなってしまう。
三連休は無事に売上目標の2倍を楽々クリアし、大入り袋がバイトに振る舞われた。

「今年もみんなすごいよなぁ。去年来てくれたお姉さん達、連休中ずっと通ってくれてたじゃん。」

昨日は終業式だったので、今日は一日ぶりの仕事の日。
社と二人で電車に揺られて最寄り駅を目指していた。

「社にも去年から付き纏ってた子、来てたよな。」
「あぁ…まぁ、あの子は店の外でまで追っかけしないでくれるから、楽だけどね。
俺達、あの店出たら普通の高校生なんだし。」

俺の方は去年も通ってくれた客とか、一応顔は覚えていたけど…
正直そんなのどうでも良かった。
スタッフからも男性客からも人気を集める最上さんが、とにかく気になってしょうがない三日間だったから。

『私みたいに地味で色気のない女、表に出ても皆さんの足を引っ張りますので』
そう言って裏方作業に彼女は撤しようとするが、高校生と言っても全く違和感ない可愛い顔に、スレンダーな体。
雰囲気がほわほわと女の子らしい最上さんに、みんな食い付いた。

「ねえねえ、家どこ?」
「彼氏いるの?キョーコちゃんて呼んでいい?」

スタッフの先輩達はみんな「キョーコちゃん」と呼び、気に入られようと常に彼女を気遣う。
興味を示さなかったのは「可愛い系は趣味じゃないんだよねー」と宣った貴島くらいだ。
(いや、これも最上さんに失礼だから正直のしたいくらいだったが)
客の男たちも「可愛い」と言って次々ナンパしてくる。
はっきり言って、とても気に食わない三連休を過ごしたのだ。

(バイトが始まれば、もっと最上さんに近付けると思ってたんだけどな………)

なかなか思い通りにいかなくて、胸がむかむかする。
「……お前、今俺の話聞いてたか?まあ愛しのキョーコちゃんが人気ありすぎて気になるのはしょうがないけどなー。」
「…………は?」
「…は?って何だよ?お前、キョーコちゃんが好きだろ?」
「好き?まあ、いい人だし、好きだと思うけど?」
「…………はぁ!?お前、バカか!!無自覚なのかよ!!
キョーコちゃんと喋ってる時の顔、すっごいイキイキしてるし、いつも目で追ってるじゃないかっ!」

肩を掴まれガックンガックンゆらされる。
電車の中で危ない奴だなー…俺は掴まってるからいいけどさ。
………まぁ言われてみればそうかもしれないけど、それと「好き」ってどう関係があるんだ?
今までの彼女達に感じていた事と違い過ぎるから、人間として尊敬できるってこういう事なのかなー…って思ってたんだけど。

「……お前、あれだけ彼女切らさずに来てたのに…本当の恋愛ってした事なかったんだな。
顔がいいってある意味罪だよ……」
「む、罪って何だよ。失礼な奴だな…あ、もう着くぜ?」

社の意味のわからない言葉とともに車内アナウンスが流れ、最寄り駅が近い事を知らせてくれた。



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「孫に1週間以上会えてない!」と言う父の為に、実家へ強制連行。
おかげさまで何にも書けず、こんな時間のアップになりました。
そして久々のパステル更新。
蓮くんここで恋愛音痴発覚。
あれだけ一目惚れ描写書いておいて、自覚はなし…それもまたヘタ蓮?
「好き」って奥が深いんだぜ…
社っち、教えてあげて!