「おい、蓮。最近どうしたんだよ?結構気持ち悪いぞ?」

部活帰りに突然社に突っ込まれた。

「…え?気持ち悪いって…」
「正確にはな、気持ち悪いほどにイキイキしてるんだよ!」

…失礼な。別に今までと変わらずに、普通に過ごしてきてるんだが?

「別に普通だと思うけどな。」
「いんや!!絶対に違う!」

人指し指をズビシと突きつけられる。

「まずな、お前が珍しくまじめに試験勉強してた事だ!俺の貸したゲームもせずにちゃんと勉強してただろう!
学年で1番なんて、余計な事で目立ちたくないお前にしては珍しすぎるんだ!」

…まぁ、入りたい大学が出来たんだし、真面目に勉強してもよくないか?

「ユーレイ部員してたバスケ部にも、今日はちゃんと練習に顔出してるし。
何より、お前が女の子を振るって初めて聞いたぞ!瑠璃子ちゃんに別れ切り出したそうじゃないか!?」

女の子は本当におしゃべりが好きだなー。もう噂になってるのか。
…確かに初めてかもしれないな。

「別にいいじゃないか。…今は誰とも付き合いたくない気分なんだよ。」
「本当かー?『来る者拒まず、去る者追わず』だったお前がか?
どんな心境の変化なんだよ。」

心境の変化…かどうかは良くわからない。
だけど、最上さんに認めてもらえる男になりたくて。
早く大人になりたくて、今目の前の事をとにかく一つずつこなしていく事にしたんだ。
それには女の子と付き合ってる暇は無いと考えたんだけど…

「別に…ただ、早く大人になりたいと思っただけだよ。」
「…?何だそれ??それと彼女振るのとどう関係するんだ?」
「さあ……あ、ほら。社の分、食べないならもらうけど。」

先輩から買ってきてもらったコロッケを、社の手から奪う。

入学当時からあちこちの部活に引っ張りだこだった俺。
名前を貸す代わりに色々賄賂を贈られるのだが……
正直、食物には全く興味がなくて、いつも社に押し付けていた。
ところが、今年の春にバスケ部の先輩が『味がリニューアルしてて、本当に美味しいから!』と勧めてくれたこのコロッケは別格だった。
揚げ物なのに油がしつこくなくて、衣はサックリ中身はほくほく。
しかも冷めても美味しい。
そのコロッケは、食に興味のない俺を虜にした。
先輩から聞いた情報だと、その店は昼間は定食屋・夜は居酒屋をやっているらしいのだが…
以来、バスケ部の練習に出る時には、その店のコロッケを先輩から贈られるようになった。

「ほーんと、食の細いお前がよく食べるよなぁ。
不思議でしょうがないんだけど。」
「何でだろうな?俺もよくわかんない。」

「……敦賀くん?」

社から奪ったコロッケをぱくっと頬張った時、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには最上さんがいた。



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部活帰りの買い食いー♪
(いや、蓮は買ったわけじゃないけど)
やっぱり青春の醍醐味?とか思うエピなので、食の細い蓮くんにはちょっと無理かなと思いつつ入れちゃいました。
さぁ、そのコロッケのお店は…ベタ過ぎて予想つきまくりですよね。
あはは、ごめんなさい…!