キミがいると、それだけで世界は色付くから。





゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚  恋はパステルカラー ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚





都心から1時間足らず。

まだ海開き前だと言うのに、ここは早くも夏を先取りした若者たちで溢れている。



(みんな気が早いよなぁ。まだ海の家は半分が準備中なのに)



すでに水着で海に入っている者もいれば、浜辺でビーチボールで遊んでいる者もいる。

今年の早い梅雨明け宣言がよっぽど嬉しかったのだろう。

はしゃぐ彼らを横目に、俺は一軒のカフェへと入っていく。



「…社長、来ましたよ。」

「おお!蓮よく来たな!今年もよろしく頼むぞー。」



この人…ローリィ宝田は、日本を代表する外食チェーン店の社長で、俺の伯父だ。

伯父の店はどこも一風変わっているのが特徴で、どれも全て伯父のアイデア(と、勘)だ。

それが爆発的ヒットを生んでいる所が、伯父の能力の高さなのだろう。



この海の家もそうだ。

『海に愛は必要不可欠!そうだ、ホストクラブのような海の家を作ろう!』

……とわけのわからない事を言って、本当に作るのだから恐ろしい。

出来上がったのは、こじゃれたカフェテリアのような雰囲気の建物だった。

そして、スタッフを顔のいい男で揃えたのだ。

伯父の目論み通り、店は大繁盛。

若い女性が口コミで集まり、それを目当ての男もやってくる。

清潔感ある店内は、老若男女問わずに人気を博し、無事今年も夏の間開店する運びとなったのだ。



去年、いきなり呼び出されたと思ったらここでのバイトを言い渡された。



「どうせヒマしてるだろ?周平にはOKもらってるし、バイト代はずんでやるぞ」



そんな事いきなり言われても、俺だって意外に忙しい。

彼女とのデートだって行かなきゃいけないし(でもどうせ長続きしないけど)

名前貸してる部活の助っ人にだって行かなきゃいけない。

父さんも何勝手にオッケー出してるんだよ!

………。

とは言うものの、かなり良い時給に…俺は飛び付いてしまった。



「ついでに、顔のいい友達とか紹介してくれよ。」



と言われて、いつもよくつるんでる社や貴島を巻き込んで、昨年の夏を過ごしたのだ。



今日はまだ試験期間中だから、俺だけが顔を出しに来た。



「で、どれを手伝ってほしくて俺は呼ばれたんですか?」



ちなみに、働くスタッフ達は、みんな俺と伯父の関係は知っている。

だが、だからと言って特別扱いしてほしいわけじゃない。

だから俺は、伯父の事を『社長』と呼ぶ。



「ああ、すまんな蓮。せっかく来てもらったんだがな、もう終わったんだよ。」

「…は!?俺まだテスト期間中なんですよ?それが『今すぐ手伝ってほしい』の一言で駆け付けた俺に対する仕打ちですか!」



…まあ、勉強はそんな今さらガツガツし直さなくてもいいんだけど。

実は借りたゲームをこっそりやろうとしてた所での電話だったから、ついムッとしてしまうのだ。



「椹くんの所に入った新人が手伝いに来てくれてな。その子かなり優秀で、あっと言う間に片付いてしまったんだよ。」



何だよ、それ。

そんなにデキル奴なら、最初から1人でもっとテキパキやってくれればよかったのに。



「あ、ちなみにな。今年は彼女にもここで働いてもらう事にしたぞ?」

「……彼女?」

「ああ。面白い女の子だ、なかなか興味深いぞ?」



……ビックリした。

ここの家具やら何やらは、何げに重い。

女の子一人の力でそう簡単には退かせないはず。



「社長さん、お待たせしました!ゴミも捨てましたし、これでもう大丈夫です。」



りんとした声が後ろからかかり思わず振り返ると、1人の女の子が立っていた。



「………!!」



室内にいても、少し眩しい夏の日差し。

しかし、それ以上に眩しい笑顔はまだ少し幼さを残し。

肩下10cmで切り揃えられた黒髪が艶やかに輝く。

細身のブラックジーンズに、作業で少し汚れてしまったパステルグリーンのポロシャツが、いかにも女性らしい彼女を中性的に見せる。



そんな彼女に、俺は一歩も動く事もできず、ただひたすらに見つめる事しか出来なかった。







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一目惚れから始まる恋もある~♪

実はマック、海に遊びに行ったの10歳が最後なんです(爆)

だから、今時の海の家事情とかはまったく知りません。

全てはマックの妄想です。

矛盾とか色々あるかもしれませんが、気にしないでください…