―――ふろむ☆かなえびじょん!―――


昨日、突然社さんから電話を受けた。
どーせまた、あのバカップルの砂吐き話かと思ったら違った。

『キョーコちゃんと1週間も連絡が取れない』

いつもストーカーのように付きまとい、スケジュールまで横流しさせていた2人が連絡とれなくなるなんて。
あの顔だけヘタレ俳優はともかく、社さんまでとれないとなるとは考えがたかった。
だけど今回は本気でキョーコが逃げまくっているらしく、最終手段で私に連絡が来たのだ。
……どこまでもバカップルめ、私の手を煩わせないでほしいわっ!

『本当ー!?行く行く!明日モー子さんに会いに行くわぁ!』

社さんの目論み通り、キョーコはあっさり釣れた。
そして今、途中で会った天宮さんと3人で、ラブミー部室でお茶がてらメインの話を始めたところだった。

「ねぇ。そう言えば、あんたの彼氏、どうしたの?また食事を摂らないって、社さんが泣き付いてきたわよ。」

〈ぶふぅーーっ!!〉

飲んでたお茶を盛大に吹きこぼすキョーコ。

「わっ!汚いわねぇ!」
「キョーコさん、大丈夫?」

私は机を拭く係。
天宮さんはキョーコにハンカチを差し出す係。
キョーコがヘタレ俳優への想いを自覚しはじめた頃から、ガールズトーク時はこの役割が出来上がっている。

「んで?今度は敦賀さんと一体何があったわけ?
社さんも『よく分からない事をキョーコが言った』って言ってたわよ?」
「…実は、社さんに…アレについて話を聞こうとしたけど。敦賀さんが怖くって…」
「は?あれ?」
「そう。アレ…」
「あれじゃわかんないわよ、もっとはっきりわかるように説明しなさいよ。」

「……だから、その、男の人に付いてるアレについて聞こうかと」

《ぶふぅーーーーーっっ!!!!》

どうせいつもの大した事ない痴話喧嘩と思って油断していた。
私も天宮さんも、二人揃って盛大にお茶を吹き溢してしまった。

「わっ!ちょっと、二人とも大丈夫?」

ちっとも大丈夫じゃないわ!!

「ちょっと待ちなさい!!それは一体どういう事!?
何があったか今すぐ言わなきゃ、あんたとの友情もここまでだからねっ!!!」
「そんなぁ!モー子さあぁぁぁぁん!!」

こうして私達二人は、あの日あった出来事を、包み隠さずキョーコに暴露させた。



「ふーん。そういう事ね………」

全く。あのヘタレ、純情乙女にいきなり何してるんだか。
まあ、片思いの時期の長さを考えると、ずいぶん待ったとは思うけどね………

(手順とムードが足りないわよっ!

しかもがっついて怖がらせてるって!!)

「どうしよーモー子さんっ!!わたしっ、すっごい怒っちゃったけどいけなかったかしら!?
もう別れるしかないのかしら!?」

〈ばたんっ!!〉

「待ってくれキョーコ!!!」

キョーコがまたお得意のぶっ飛び思考であらぬ方向へ話を進めようとした時、部室のドアが壊れんばかりの音を立て、あのヘタレが入ってきた。

「きゃっっ!敦賀さん!?」

慌てて私の後ろに隠れるキョーコ。
敦賀さんは私とキョーコの前まで来ると、いきなり床に正座し、頭を下げた。

「「!?!?」」
「お願いだキョーコ!もう怖がらせないから、別れるなんて言わないでっ!!」

…………。
えーっと。これが本当に芸能界一いい男なの?
なりふり構ってられないのは分かるけど、彼女に土下座………。
敦賀連が土下座………。

(かなり貴重…な物見たかもしれないけれど)


「あんた達、痴話ゲンカなら余所でやんなさいっ!!!」




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桃は置いといて、ラブミーガルトー。
確かに芸能界一いい男の土下座は貴重です。
なりふり構っていられませんからねぇ。