「誰かっ!誰か来てーっ!!」

背後で間宮さんが叫んでいるのが聞こえる。
横目でちらっと確認すると、間宮さんは倒れたマネージャーさんの隣で座りこんでいる。
高遠…杏子さんは私の方へ歩いてきていた。

(…良かった、間宮さんはこれで無事ね。)

私はもと来た道を走っている。
こちらの方面へ向かえば、誰かしら撮影スタッフに出くわす可能性も高いし、社さんもまだこっち方面にいるはず。
私も女優なんだから体に傷を付けるわけにもいかないし、とにかく助けを求められる人を見つけなくては…!

しかし、こういう日に限って誰ともすれ違うことがない。
私は段々不安に駆られてきた。
社さんに連絡を取ろうと走りながら鞄の中から携帯を探し出すと、着信を受けて振動していた。
相手は…敦賀さん。

(なんでこんな時に…っ!)

出るかどうか考える暇はない。
迷わず通話ボタンを押した。

『最上さんっ!今どこにいる!?』
「敦賀さんっ!楽屋のあるフロアです!!」
『わかった!楽屋に向かっ…』
「それは私の王子様よ!!」

後ろから重さのある鞄を投げ付けられ、バランスを崩して前のめりに倒れこんだ。
弾みで携帯は更に前へと転がっていく。

「嫌ねぇ、あなたの王子様は『ショーちゃん』でしょ?何、人の王子様にまでちょっかいだしてるのよ。」

いつの間にか追いついていた高遠さんの手には、血に濡れた果物包丁があった。

「それはもう過去の話よ!!私はもう恋とか愛とか、そんな愚かしいものはしないのっ!」
「あんたがするしないじゃないわ!!」

せっかく起こした上半身を思いっきりブーツで蹴られ、壁に肩を打ち付ける。

「あんたが恋愛しようがどうしようが、別に関係ないわ。
…だけど、あんたが居る限り、コーンは私のもとへは来てくれないの。
あんたの存在自体が邪魔なのよ。」
「……え?どうしてコーンを…」

この極限状態に来て、何故彼女がコーンの事を知っているのか。
危険な状況なのはわかってはいるが、どうしてもそっちが気になった。

「別にどうだっていいでしょ?あんたはコーンが妖精だと信じたまま死.ねばいいの。」

…何それ。コーンは妖精じゃない?

振り下ろされる包丁がゆっくりとスローモーションに見える。
コーンが妖精じゃないと言う言葉が、私の頭の中で繰り返されている。

私、もうおしまいなのかぁと頭の隅で思った時、高遠さんと私の間に何か黒い大きな影が割って入った。




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さあ、間に合ったのは誰!?
と言うか、まさかの杏子がコーンの正体バラすとか!
お、おかしい。
当初の予定ではそんなはずでは…オロオロ(汗)
というか、46まで続いて終わらないってどういう事!?