「あら、京子ちゃん。今日はもう全部撮り終わったの?」

社さんと別れてロビーへ降りようと歩みを進めると、間宮さんとマネージャーさんにお会いした。

「はい、今日は上がりなんです。」
「もうそんな時間だったのね、別スタジオにいるとそっちの進み具合がわからなくって。」

間宮さんは、夕方から早野さんとともに別のスタジオで最終回の番宣の為、バラエティの収録に参加していた。

「なかなかトークが進まなくてね。どうしても今朝の話を聞きたがられて…」
「あぁ…それはご迷惑をおかけしました。」

今日のトーク番組は芸能界の大御所が司会を務めている。
早野さんはその大御所のお気に入りだから、どうしても突っ込んだ話をしたかったのだろう。
でもそれでは番宣にも何にもならない。
間宮さんは大先輩なのに、嫌な思いをさせてしまったわ…

「別に京子ちゃんが悪いわけでもなんでもないじゃない?こればっかりはどうしようもないわよー。」

間宮さんのマネージャーさんがカラカラと笑い飛ばしてくれる。
お二人ともこのドラマの撮影が初対面だが、とても仲良くさせていただいている。
役に入ればライバル同士、激しくぶつかり合う設定なのだが、役が抜ければ間宮さんも間宮さんのマネージャーさんも面倒見のいい姉御肌なので、一緒にいてとても楽だった。

「私たち、これから社食で晩御飯なのよ。途中まで一緒に行きましょ。」
「はい。」

エレベーターホールまで着くと、ちょうど到着したエレベーターの中から誰かが降りてきた。
真っ白な表情のない顔にうつろな目。
だけど目線が合った瞬間に、明確な敵意を向けられた。

「あれ、あなた…高遠、杏子ちゃんじゃない?」

彼女と共演した事が1度だけある間宮さんはすぐに気がついた。
私はその名前に肩をびくりと震わす。

「…最上キョーコ…あんたさえいなければ…」

初対面なはずなのに、向けられる明確な敵意。
様子のおかしい彼女に戸惑って動けないでいると、間宮さんのマネージャーさんにいきなり突き飛ばされた。

「…きゃああぁぁーーーっ!!!」

後ろに倒れ込むのと同時に響いた間宮さんの悲鳴。
はっとしてマネージャーさんを見ると、高遠さんの足元で蹲っていた。
服がどんどん赤く染まっていく。

「あなたも私の邪魔をするの?…早くしないと、王子様が待ちくたびれてるわ…」
「っうぅ…二人とも、逃げなさい!!」

マネージャーさんのすぐ側にいた間宮さんはパニックを起こしている。
このままじゃ間宮さんも危険だ…!
最初に感じた敵意…というよりもはや殺意。
あれは私に向いている。
私がここを動けば間宮さんは助かる?

私はすぐ走り出した。



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長くなる予感のせいで、こんな所でぶった切る。
杏子をぶっ壊しすぎたなぁ…
修羅場を予定より一つ減らしたら、残った修羅場がとんでもないことに!
こんなはずでは…!!
さっさと続き投下しなくては気持ち悪い!