(ううぅ…なんだかとっても居心地が悪いかも…)


今朝の出来事は現場でもあっという間に広まっていて(まぁ当然よね…)。

休憩時間やお昼の間中、周りの人たちから根掘り葉掘り聞かれまくったのだ。

今日はクラスメイト役の子達も参加しての撮影だったので、余計にひどかった。


「ねー!早野さんのお部屋ってどうだった!?」

「お泊まりしたんでしょっ、やっぱりチューの一つくらいしたんじゃない?」

「てか、それで手出さなかったら男じゃないでしょー!!」


………人の気も知らず、散々な言いようだ。


(私、もう恥ずかしくて死ねる…!)


おかげで撮影が終わった段階で、私は真っ白に燃え尽きた。

早野さんは「まだ俺の片思いなので、京子ちゃんはそっとしておいてください」と、大人たち(おもにスタッフよね)をけん制してくれた。

これでスタッフまで加わってたら…

間違いなく私、今日は使い物にならなかったかも。


(…さて。今夜はどうしようかな…)


今夜はさすがに早野さんにお世話になるわけにもいかない。

だるまやは…今夜は私にもマスコミの方がはりつくかもしれないから、ご迷惑になるかも。

お店のお邪魔はしちゃいけないわよね。

かと言って、敦賀さんのお宅に戻るのは、もっとまずい。

敦賀さんに二股疑惑とか、イメージダウンに繋がるような事はできないし。

何より…彼の杏子さんにいらぬ心配をかけさせてもダメだ。

自分がもしその立場なら…絶対に嫌だ。


(…椹さんか社長さんに相談しようかな?)


その時、携帯が振動した。

着信は社さん…


「もしもし、キョーコちゃん?」

「社さん!ごめんなさい、私からお電話するって言ってたのに…」

「いやぁ…いいんだよ、キョーコちゃんも今朝から大変だったでしょ?」


…。そうよね、あれだけマスコミの方がいらしてたら、社さんや…敦賀さんにもばれちゃうわよね。


「…はい。」

「それでね、キョーコちゃんはこれから社長の所に行ってもらうことになるんだ。

今、蓮と一緒にキョーコちゃんのスタジオ付近まで来てるんだけど、この後蓮に事務所に送ってもらって…」

「嫌です!」


咄嗟に大声で社さんの話をさえぎってしまった。


「き、キョーコちゃん!?どうしたの…?」

「あ、あの…大声出してごめんなさい。

そんな敦賀さんのお手を煩わせるのもあれですし、私は一人で行けますから。」

「…キョーコちゃん。蓮の奴、何かした…?」

「別に、敦賀さんは…

ただ、こんな一後輩の送り迎えなんてしていたら、敦賀さんの彼女さんにご迷惑をおかけしちゃいます。」


自分で言っておいて、自分で傷つくなんて良くないと思うけれど。

これ以上は放っておいて欲しくて、ついひがみっぽく言葉が口をつく。


「…キョーコちゃんが何の事を言ってるのかはわかるんだけどね。

それについては蓮本人から直接聞いてやってほしいんだ。

今は会いたくない…?」

「…………」


会いたいような、でも顔を見てしまったら余計気持が戻れないような。

なんて返事をしたらいいのかわからなくなった。


「わかったよ。とりあえず、今は俺だけ例の物をキョーコちゃんに渡しに行くね。

それで、俺も事務所に戻らないといけない用事があるから、今日は俺と一緒に行く。

…それでいい?」

「…わかりました。ありがとうございます、社さん…」

「いいんだよ!可愛いキョーコちゃんのためだもの!お兄ちゃんに何でもワガママ言いなさいっ!」


疲れた頭に社さんの気遣いがとてもありがたくて、敦賀さんに会いたくない私は社さんのお言葉に甘えることにした。




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蓮さん会いたくない発言聞いてさらに凹め…!

反省するのだー


でも早く誤解解けないともっと混線するよね。