2013年12月 * 拍手設置(加筆なし)
**原作沿い設定作品
※シリアス系・オリキャラ有・途中大人表現有(限定記事入ります)
特にオリキャラが蓮に絡むのが嫌いな方はご注意くださいませ。
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事故から2週間が経った。
敦賀さんはまだ記憶が戻らないが、今日から本格的に仕事に復帰する事になった。
(結局私、何にもお手伝いになってないんじゃない?)
お弁当用に取り分けたおかずを、丁寧に詰めていく。
1つは敦賀さんの、もう1つは私の。
私もまだ学生の身だし、京子としての仕事もあったから、ずっと敦賀さんと一緒にいられたわけじゃなかった。
仕事で帰りが遅くなる事もあったので、そんな日は冷蔵庫に作った物を入れて「先に召し上がってくださいね」と出かけたにも関わらず、敦賀さんは私の帰りを待っていてくれた。
「ごはんは誰かと一緒に食べるのが美味しいから」
そう言ってニコニコしながら温め直しをする私の隣に立つ。
そのキッチンの温かささえ、心地よく感じてしまう私はもう手遅れなのだろうか。
この気持ちに蓋をしようとしても、もう鍵が壊れてしまったみたいで、いくら閉めても溢れてくる。
敦賀さんの隣に居られる事が、嬉しくて切なくて。
胸が苦しくなる。
敦賀さんの笑顔を独り占めしたくなる。
(そんなの、ダメよね。だって敦賀さんの『キョーコ』さんが、本当に私なのかどうか確認してないもの。)
結局聞けなかった『キョーコ』さんの事も、時々頭によぎる。
だけど、今だけは。
今日までは私が敦賀さんの事を独り占めしている。
例え記憶がなくなった敦賀さんでも。
それだけでも、私の心と頬はほわんとほんのり色付く。
*
「最上さん、そろそろ出掛けるね。」
「あっ…わかりました、少々お待ちくださいね?」
いつの間にか出かける準備が整っていたらしい敦賀さんが、キッチンに顔を出してくれた。
私は慌ててお弁当の蓋を閉め、用意していた弁当袋に箸と一緒に入れて渡した。
「はい、お弁当です。今日はちゃんと昼食の時間が取れると社さんから伺いましたので作りました。ちゃんと食べてくださいね?」
「いつもありがとう。最上さんが作ってくれるご飯は美味しいから、残す事はないよ。社さんも一緒だし、心配しないでね。」
そう言いながら、玄関までお見送りに行こうとする私の頭を撫でた。
「ほら、最上さんも今日は朝から学校だろ?遅刻しない?俺は大丈夫だよ?」
「いいんです、私がお見送りしたいので。敦賀さんは私の事毎日お見送りしてくれたじゃないですか。」
「だって俺は休みだったからね。」
とたとたと敦賀さんの後をついて玄関まで向かう。
「今夜は少し遅くなるかもしれないから、先に寝てていいよ?」
「家主より先に寝るなんて出来ませんよ!お待ちしてます。」
「じゃあせめてご飯はちゃんと食べておいてね。本当に上がり時間がわからないんだ。」
「わかりました、そういう事ならお先にいただいてますね?」
なんだか夫婦みたいな会話を交した後、敦賀さんにそっと抱き締められ、そして顔の位置を合わせて頬と頬を触れ合わせた。
「…ん。行ってきます。」
「行ってらっしゃいませ。」
敦賀さんは、何事もなかったかのようにさっと靴を履くと出掛けていった。
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こんなやりとりしといて、いまだ思い出さないうちの敦賀氏はとんだへたれですかね?
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