先日、サロンにお誕生日のお客さまをお招きしてプチお誕生会を開催☆
お茶会のような小規模なもの。
メニューは、
ビーフシチュー♡
サンドイッチ♡
その日はサンドイッチをわたしと師匠と2人で作る予定だったのだが、思わぬハプニングが勃発。
前日から胃痛を抱えていたわたし。
途中までは元気だったのだが、途中から雲行きが怪しくなり、師匠に胃腸薬をもらって飲んだ。
薬を飲んで間もなくして、師匠からサンドイッチ用のパンと生クリームを追加で買ってくるよう頼まれる。
それが、来客予定時刻の一時間前のこと。
おつかいに行ったスーパー。事件はそこで起きた。
会計を済ますと、突如胃に激痛が走り、駆け込んだトイレの個室でわたしは動けなくなった。
悶絶すること15分。
これ以上遅くなってはヤバイと、痛みを1度押し殺して根性でハァハァ言いながら帰宅した。
帰宅すると、「遅かったね…」と台所から師匠の呆れた声が聞こえた。
家から徒歩2分のスーパーで、サンドイッチのパンと生クリームを買うのに20分以上要していたんじゃ、初めてのおつかいかよと思われても無理はない。
わたしは目を閉じて内蔵にこう語りかけた。
なんとか今夜の宴いっぱい持ち堪えよ…
わたしが台無しにしてはならない……
そう念じた直後、再び胃に激痛が走り、その場にうずくまる。残念ながら、まったく声は届かなかったようだ。
師匠はわたしが目の前で体調を崩すのを何度も見たことがあるのと、わたしが他人から心配されるのを嫌うのを知ってるので、
「またか」という表情をしただけでそれ以上なにも言わず、台所に戻ってサンドイッチを作り続けていた。
サンドイッチ作りを手伝わねば……と思ったが、ま、サンドイッチくらいあの人にとっちゃなんでもないよね☆と安心して委ねた。←
痛みを我慢出来ず、わたしは額に脂汗を光らせながら、
「ちょっと大丈夫じゃないでいす」
と報告して、なだれ込むようにトイレへ駆け込んだ。
言葉で言い表せない痛み。
ここのところ毎日のように家族に怒りを感じては飲み込んでた。飲み込んだ怒りが、いま、我が身を焼き尽くそうとしている。
そういえば、会社勤めをしていた頃は、しょっちゅうこんなふうにおなか痛くなってた。
下手したら毎日。
ここまで痛いのは久しぶりだけど、あの頃はこれが日常茶飯事だと思ってたから、痛みにも慣れてしまっていたっけ。
いかに自分の体や心に無頓着だったか。
今考えてもゾッとする。
これは長丁場になるやつだと思ったので、早め早めに報告を入れなければ、と思った。
「結構ヤバイやつでいす」と、わたしはトイレの中から叫んだ。
出ないなら無理に出すな!脱肛するぞ!と恐ろしいことを言われたので、トイレを出て、横にさせられた。
おまえ腰がおかしいんだろ!と言われ、そのまま否応なしに師匠の整体を受ける。
鈍痛のあまり、あいでででででで!!!とオヤジのような声が出た。
でもそれをやってもらったら、すこし腰痛が楽になった。
笑えるくらいほんとに何でもできちゃう。この人は本当に稀有な人だよ!!
とにかく胃腸に の の字を書けと言われて、こういう風に、とさすってくれた師匠の手は驚くほど大きく、信じられないほど温かかった。
ふと気がつくと、師匠の飼い猫であるひめちゃんとがんもちゃんが傍で私をじっと見つめていた。
雌の猫は人間の変化にすごく敏感である。
自分も歯が痛くて辛いはずのひめちゃんに、余計な心配をかけてはいけない。
自分は大丈夫だ、と言い聞かせた。
がんもちゃんは、わたしと会話が成立する世界で唯一の猫である。通称キャットパートナー。オス。
がんもちゃんは、のたうち回る私をただただ不思議そうに眺めていた。
ほかのオス3匹は異変を感じ取って、近寄ってくることはなかった。
これが自分の家だったら、こういう時にそばにやって来るのはやはりメスの猫であるずんだとモミで、普段一番甘えてくるオスのもんちは「いつもと違うよ!いつと違うよ!」とビビってどっかに隠れてしまうのだろう。
男ってやつは……ぶつぶつ
ところで、お客さまが見える約束の時間が刻一刻と迫っていた。
誕生日のゲストを前に、のたうち回った挙句、ブリブリベチベチといった類の汚いサウンドだけは轟かせてはならないと思った。何があってもそれだけはしないと誓った。
百歩譲って、師匠になら聞かれても仕方ないと思えた。もう、充分呆れられているので、ブリブリベチベチなんて、いまさらだと思うはずだという確信と安心があった。
この世界中で、ブリブリベチベチの類の音を聞かれてもいいと思える人が家族以外に何人いますか。
わたしは、32年間、男の人の前でオナラをしたことが無いので、将来ブリブリベチベチの類の音をこの人になら聞かれてもいいと思える男性に出会えたらいいなと思ってるよ。もちろん、医者を除いて。
汚い話でごめんね。
話を戻します。
わたしは横になったままひたすらお腹にのの字を書いて、師匠はわたしの手当てとご馳走の準備ですったもんだして、おでこに冷えピタを貼ってくれた数分後のこと。
ついに鳴ったよピンポンの音。
舞台に立たなくちゃ
わたしは女優。
覚悟を決めた。
わたしと師匠は平静を装ってお客さまを出迎えた。
師匠は素知らぬ顔で普段通り、最高のおもてなしをした。グラスを並べ、料理を並べるとお客さまから歓声が上がる。
わたしは根性と女優魂でテーブルに座り、笑顔で接待した。だらだらと脂汗を流しながら。
見たかこの根性……と思ったけど、やっぱり胃痛には勝てなくて、楽しいおしゃべりの途中で、胃痛を堪えきれず思わず真顔になる。
お客さまの表情が無表情に変わるのを見て、鏡のようだと思った。私の明らかなる異変がバレてることが判った(;´д`)
結局、2度席を立った。
辛うじてブリブリベチベチの類のサウンドをお届けせずに済んだ。
師匠は、終始スマートに空気を取り持ってくれ、お客さまたちに心配をかけないように、話が途切れないように努めてくれた。
彼女こそ女優だった。
こんなことを言うのは図々しいが、倒れたのが師匠の家でよかったと思う。友達は、その子の家で倒れたのはそれだけ気を許していたから、と言った。本当にそうかもしれない。
あと、これがもし実家で起きていたら、母親は間違いなくわたしに下剤を飲むように勧めてきたに違いないから、その点でも不幸中の幸いだった。
出るようで出ない状況で下剤を飲むと、死ぬほど辛い。それを知っているのは何度か経験があるから。
その処方が間違っていると初めて知ったのはその日だった。
誰よりもとんでもない目に遭った師匠に、この場を借りてお詫び申し上げますw