五所川原町のねぷた館、黒石のこみせ通り、三内丸山遺跡…三か所も津軽を案内してもらって、本当に本当に感謝しかなかった。
同じ場所をひとりでめぐっていたら、自分の舵ではきっと見ないで通り過ぎた場所があったはず。発見できなかった景色があったはず。

こんな突然の来客に、おいしいものを食べさせたい、良いものを見せたいと思ってくれた友人のお父さんの気持ちがうれしかった。津軽の価値をちゃんと知っているということにたいして魅力を感じた。


お父さん曰く、「雪はいやだけど、冬がこなければ春は来ない。」

彼らはそんな風に、ありのままの自然を受け入れ、堅実に生活しているように見える。どうにもならないことをどうにかしようとして、それが案外簡単に叶っちゃう都会の生活は便利ではあるが、自然そのもののあり方とはひたすらかけ離れている。

また、「こっちの電車の乗客は、みんなほかの乗客に全然興味がないかんじ。見えてないんじゃないかっていうくらい、他人を見ないね。」と私が言ったら、
友人が、「みんな寒いからひとのことなんてかまってないのよ、みんな自分の家が一番好きなの。早く家に帰りたいなーって思ってるの。」と答えた。


あー、だからか。

夕ご飯は鱈のお味噌汁。
私は自分の父親そっくりに、「本当においしい、おいしい」を発する。うっかりすれば、涙が出そうだ。


おとまちゃんの道



「今度は雪のないときにいらっしゃい、冬がいちばん何にもないんだから。」と笑って見送られる。お土産までいただいて、友人と友人のご家族にたくさんお礼を言って、お世話になったこの家を、津軽を、ひとりで去る。

冬の津軽は、何にもなくない。私は結局、ひとりになんかなれなかった。



おわり