要約&追記 「ヤマザキパンはなぜカビないか」と臭素酸カリウム | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

いつもご訪問いただき、ありがとうございます。

当ブログ、最近は更新も滞りがちであるにも関わらず、ここのところずっと、コンスタントに毎日700~800PV(ページビュー)のアクセスをいただいています。ありがたいやら申し訳ないやら。クリック募金をするために訪問していただいている方が多いのかな、と想像しています。

ところがさらに、4/10に1,028PVと久しぶりに1,000を超えたと思ったら、4/12の1,635PVをピークとして、8日間1,000PV超えが続きました。なぜ増えたのか、ページ別アクセス数で調べてみたら、2011/11/24に書いた記事

『続々「ヤマザキパンはなぜカビないか」 臭素酸カリウムについて』

に、1日に500PV以上のアクセスが集中していたことがわかりました。アクセス解析の検索ワードを調べると「臭素酸カリウム」が上位に来ていました。
Googleで「臭素酸カリウム」を検索すると、私のこの記事が1ページ目の結構上位にきていましたので、何か臭素酸カリウムに関する話題(テレビ番組で取り上げられたとか?)があって、検索でたどり着いた方が急に増えたのかと推測します。

この話題は、松永和紀さん主宰のFOOCOM.NETというサイトで「ヤマザキパンはなぜカビないか」という面白い記事があったので、それを読んで11/22に

「ヤマザキパンはなぜカビないか」 ~FOOCOM.NET記事より

という記事を書いたのが発端でした。
「ヤマザキパンはなぜカビないか」は渡辺雄二氏の著書で、これを鈴鹿医療科学大学教授の長村洋一氏が批判しています。

この私の最初の記事に対して、いつになくコメントをたくさんいただいたので、これは整理してみないとと考えて、素人ながら色々と調べた結果を元に、結局合計5回にわたって、関連記事を書いたものでした。

この5回シリーズ、われながら力作だった(中東某国勤務中でヒマだった:笑)と思います。アクセス数がもっと少ない頃だったので、まだ読んでいただいていない方にはぜひ読んでいただくとありがたいです。

しかし、ちょっと科学的な観点で小難しいことも書いていますので、そこまで読む気にならない方のために(と言いつつ、本当は自分でも思い出すために)ここに要約してみようと思います。


・渡辺氏は、ヤマザキパン(だけ)がカビないという実験結果(?)を元に議論をスタート。そもそもここが間違っている。
 ヤマザキパンがカビにくいのは、衛生管理がしっかりしていてカビの胞子が付着していないから。他の大手のパンもカビにくいし、ヤマザキパンも袋から出して胞子がつくと(たまには出さなくても)カビが生える。個人のパン屋さんのパンは、衛生管理が大手ほどしっかりしていないのでカビの胞子が付着しており、早くカビがはえる。
 議論の最初の事実認識が間違いであるので、その後の議論には何の価値もない。

・渡辺氏は、さらに「ヤマザキパンだけがカビない」原因を、大手では山崎だけが使用している(らしい)発がん性が疑われる食品添加物である臭素酸カリウムが原因だとの結論を導いている。万一本当にヤマザキパンだけにカビが生えない事実があったとしても、人間や動物に対する発がん性という性質と、植物のカビに対してその生育を阻害するという性質とには、一般には何の関係もないと考えるべきである。ここでも渡辺氏の論理のお粗末さが露呈している。

・しかし一方で、渡辺氏の馬鹿馬鹿しい著書は別にして、ヤマザキパンはなぜ発がん性が疑われる臭素酸カリウムを使い続けているのか、は興味深い疑問点。
 調べたところ、ヤマザキパン以外の他社、敷島や神戸屋は臭素酸カリウムの代わりにビタミンC(L‐アスコルビン酸)を使用している。

・なお、臭素酸カリウムは「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」物質。「ヒトに対して発がん性がある」ことが立証されているもの(発がん危険性が2段階高いグループ)は、ホルムアルデヒドやベンゼン、放射性ヨウ素の他、タバコやアルコールが挙げられる。

臭素酸カリウムは、何のためにどのように用いられるのか?
 品質改良剤として小麦タンパク質であるグルテンに働き、パン生地を形成する働きがあり、製造工程において分解される、と。
 臭素酸カリウムの残留分析は検出限界0.5ppbの検査方法で「検出せず」で管理されていると。
 0.5ppbとは、食パン25mプールで1杯分に小さじ1杯の1/100(0.05g)程度。このような少量ではどのような毒物でも健康に影響があるとは思えない。

・一方、パンに生えるカビのうち、コウジカビは毒物(マイコトキシン)を産出するものがあり、カビが生えたものを食べるのは健康上好ましくない。
 フグやキノコを食べて死ぬ人が毎年出ることからも明らかなように、「天然=安全、人工=危険」という単純な図式は間違っている。天然の物質にも人工的に合成された物質にも、健康に対して安全なものと危険なものとがある。

・食品添加物には指定添加物(合成添加物)と天然添加物とがある。指定添加物については厳格なリスク評価がされており、ふつうの食生活をしていて健康に害がある恐れはほぼないと考えてよい。天然添加物については十分な評価がされていないので、稀に害があると判明する場合がある(例:アカネ色素)。
 
食品添加物の使用は、リスク-ベネフィット(利益)の関係で捉えるべき。例えば、安全が十二分に確認された(とされる)合成保存料を摂取することと、傷んでしまった食品を食べて食中毒を起こすことのどちらのリスクを許容するか。
 それを消費者が個人の意思で選択できるように、表示が義務付けられることが重要。

・「暮しの手帖」で、主婦に「癌の原因」が何と思うか聞いたところ、1位が食品添加物(43,5%)、2位が農薬(24%)。癌の専門家では1位が「ふつうのたべもの」(35%)で2位がタバコ(30%)。専門家では食品添加物は1%、農薬はゼロ。
 正しい知識を持って正しく怖がることが大切だが、なかなか難しい。


以上、要約でした。


今回、少しだけ新情報を追加します。

「続々」の記事で私はこのように書きました。

「敷島パンが言っているように、誰でも受け入れそうな食品添加物であるビタミンCが臭素酸カリウムの代替品として使えるのであれば、こちらに切り替えたらいいと思いますが、山崎には置き換えられない理由というかこだわりがあるのでしょう。

それは、製造工程上・経済的な理由かもしれませんが、私は品質的な理由であるような気がします。好き嫌いはあるでしょうが、「超芳醇」は他社の食パンに比べてかなりしっとり柔らかい(気持ち悪いくらいに…)と思います。これが臭素酸カリウムの効果かもしれないな、と。」


今回、追加で調べてみて、前回にはたどり着かなかった記事を見つけました。

パン生地改良剤 (臭素酸カリウム)の安全使用について
(社)日本パン工業会 科学技術委員会小委員会


2004年の文書のようです。
ここに、臭素酸カリウムとビタミンCとの効果の違いについて書かれていました。

(引用開始)
(1) 食パン生地の微細構造
臭素酸カリウムではグルテンの薄い膜がデンプン粒を包み込むように被っているのに対し、ビタミンCではグルテンの膜が厚くデンプン粒はむき出しになっている。

(2) 生地熟成時の生地物性変化
臭素酸カリウムではビタミンCに比べて生地の伸長力が大きく、抗張力が小さく、伸展性のある生地ができる。

(3) 製品品質への影響
・ビタミンCでは 酸味・刺激臭により風味がマスキングされるため本来のパンの香りがでにくく、また遊離アミノ酸量が少なく焼色がボケる傾向にある。
・臭素酸カリウムの方が老化が遅く歯切れ感も良い、ビタミンCでは歯切れ感が悪く口の中でクチャつきダマになる傾向にある。
・現在、ビタミンCを用いる時は、その欠陥を補うため、ビタミンCを油脂でコーティングして発酵が進みすぎなくしたり、生地物性を改善するため数種の酵素剤を用いたりしているが、臭素酸カリウムによる生地改良効果には及ばない。
(引用終わり)

私の推測は当たっていたようです。
ヤマザキは、自社の求める品質へのこだわりから、批判をされても臭素酸カリウムを使い続けているようです。(もちろん、消費者の安全には万全の自信を持った上でのことでしょう。)

他社の食パン(うちで他に食べるのは神戸屋か敷島?)では、少し酸味を感じることがあったように思うのですが、これはビタミンCに由来するものなのかもしれません。


以上、急なアクセス増加に驚いて、昔書いた記事を見直してみました。


(ところで、イタリアでは「食パン」を売っていません。スーパーなどで売っているパンはどれも、私にはあまり美味しくありません。
先日帰国したときに久しぶりに日本の食パンを食べましたが、今まで以上に美味しく思えました。)


2014.6.8 追記 東日本大震災支援のお返し セルビア洪水復興支援にご協力を!!



-----------------------------------------------------------------------------------------

よろしければ、クリックしてください。クリックした方には何の負担もなく、1円が募金されます。


東北関東大震災 緊急支援クリック募金