ナダルにクレーコートでほとんど勝てないフェデラー
ナダルは15歳でプロデビュー後、この17年間(正確には16年間)で、フェデラーと対戦したクレーコートでの成績は、(ナダルが当時18歳だった)2005年に1勝、2006年に3勝、2007年に2勝1敗、2008年に3勝、2009年に1敗、2010年に1勝、2011年に2勝、そして2013年に1勝し、トータルで13勝2敗(勝率86.7%)となり、この数字だけ見れば、勝負にならないほど圧倒している。フェデラーにとってクレーコートは大きな関門ではなく、クレーコート上で対戦するナダルが大きな関門なのだ。フェデラーは近年、ナダルが出場するクレーコート・シーズンの参加を2013年の対戦を最後に回避しているが、それに関してこれ以上言及するのは野暮な話だろう。
(或る意味、逃げているようにも思える)フェデラーとは対照的に、ナダルは休むのを嫌うように昨年も試合に連続で出場し、最終的には故障した。で、両者の最終的な世界ランキングはどうなったのか? 2017年のナダルは「進化したニュー・ナダル」とも形容され、格段にパワーアップしたその結果、世界ランキング1位の座に見事に返り咲いたのだ。
なお、ナダル、フェデラー、ジョコビッチというこの伝説的な3人が出場した全試合における勝率(2月19日付時点)は、驚異の8割超えを記録しており、そんな選手は他にはいない。要は、この8割を超える勝率は、彼らがほとんど負けないことを意味している。
先述した伝説的な選手たちの話をさておき、手首の負傷から今年復帰した日本人トップの錦織圭くんについて。彼は日本時間の2月28日(水)にアカプルコで行われたATP500大会「メキシコ・オープン」初戦で、カナダの超新星18歳のシャポバロフに逆転負けを喫した。
今から10年前の2008年(当時18歳)、ATP250大会「デルレイ・ビーチ・オープン」で優勝を飾った錦織圭は、皮肉にも今回、若手18歳のデニス・シャポバロフに逆転負け(7-6, 3-6, 1-6)を喫し、世代交代の波に飲み込まれたのだ。
なお、錦織は昨年出場した大会で1度も優勝できなかった一方、次世代の若手が頭角を現し、アレキサンダー・ズベレフ(20歳)が5回、アンドレイ・ルブレフ(20歳)が1回それぞれ優勝を飾った。上の表は、2月19日付時点のランキングだ。
参考までに、ナダルは18歳(2005年)で全仏オープン優勝を飾り、同年だけで15回優勝した異次元な存在の選手ではあるが、彼が18歳で手に入れた華やかなタイトル獲得数15(通算では75)に対し、錦織はプロデビュー後の通算タイトル獲得数はわずかに11だ。錦織くんのATPツアータイトル獲得数は、「ATP250大会」で5度、「ATP500大会」で6度ある一方、オリンピックをはじめ、「グランドスラム(全豪・全仏・全英・全米の4大大会/ITF2000)」及び「ATP1000マスターズ」など世界ランキングの上位選手が集まる大会ではタイトルを1度も手にしていない。
今回、錦織くんの初戦敗退はとても残念な結果だったが、(全豪オープン3回戦のケルバー相手に勝負にならなかった)シャラポワの悲惨な試合のように、その内容が悪すぎただけに、初戦敗退を喫したその試合に俺は「彼のテニス人生の黄昏」を見てしまったような気がしてならない。
BIG4と錦織圭、そしてフォニーニ
不思議と、BIG4(ナダル、フェデラー、ジョコビッチ、マレー)と比較されることも少なくない、日本のトップ選手<錦織圭>(現在世界ランキング26位)の対戦戦績は、対ナダルは2勝9敗(勝率18.2%)、対フェデラーは2勝5敗(同28.6%)、対ジョコビッチは2勝11敗(同15.4%)、対マレーは2勝9敗(同18.2%)となっており、BIG4に対してそれぞれ2勝ずつ勝利を収めるなど、金星をあげている。なお、錦織の自己最高ランキング(キャリアハイ)は4位(2015年3月2日付)だが、自己最高ランキングが11位以下の選手で、ナダルに勝利した選手はほとんどいない。そんなスペインの王者に3勝した選手が、他でもないイタリアの天才肌で華のある男<ファビオ・フォーニーニ>その人(キャリアハイ13位)なのだ。しかも2015年にナダルからクレーコートで2勝を挙げているのだから、ナダルにとってフォニーニは正にクレーコート上の天敵なのだ。
ナダルはバルト海に面したポーランドの風光明媚なリゾート地<ソポト>で2004年8月に開催された「オレンジ・ワルシャワ・オープン」で初優勝(当時18歳)を飾って以降、錦織くんの通算タイトル獲得数11とは対照的に、「グランドスラム」優勝16回(準優勝7回)、「ATP1000マスターズ」優勝30回(準優勝15回)、「ATP500大会」優勝19回、「ATP250大会」優勝9回、そして「オリンピック(2008年北京)」優勝1回、合計75回もの優勝を飾っている。ナダルよりプロデビューが4年早いフェデラーの優勝回数は現在97回を数えるが、その差は22回ゆえ、それを追い越すのは時間の問題だろう。
付け加えるなら、ナダルが出場した2004年開催の「オレンジ・ワルシャワ・オープン」の女子部門で優勝し、2015年の「全米オープン」で優勝を飾り、翌2016年にフォニーニと結婚したのが年上妻<フラビア・ペンネッタ>だ。この夫婦はイタリアを代表するテニスエリートであり、2017年に待望の第1子となる長男<フェデリコ>を儲けている。父親となったフォニーニは今、世界各国を転戦しながら、家族のために戦い続け、現在開催中のATP250大会「ブラジル・オープン」では準決勝まで勝ち進み、試合は日本時間の本日24時半に開始予定だ。一方、ナダルには2005年(当時18歳)から付き合っている同郷の恋人<マリア・フランチェスカ>がいるが、2人は結婚していない。
アルマーニの広告に起用された唯一のテニス選手
最後になるが、今から8年前となる2010年(当時24歳)、サッカー以外のスポーツ選手でアルマーニの広告に起用されたのが、他でもない<ラファエル・ナダル>その人だ。同年10月、ナダルは東京の有明コロシアムで開催された「楽天ジャパンオープン」に出場するため、初来日を果たした。ナダル・フィーヴァーで沸いた同大会は、7日間で史上最多の8万人(前年比70%増)を超える入場者数を記録し、決勝ではモンフィスを6-1, 7-5のストレートで破り、見事優勝を飾ったのだ。
奇しくも、2010年はナダルが「全仏オープン」と「ウィンブルドン選手権」を制覇し、そしてフェデラーから1位の座を奪い取ったアニヴァーサリーな年でもあったのだ。今夜は8年ぶりに、ナダルが当時表紙を飾り、楽天ジャパンオープンに密着した特集号「テニスマガジン」(2010年12月号/写真:一番上)に久々に目を通してみたい。進化し続けるナダルの復帰が、とてもとても待ち遠しい今日この頃だ。