Long Time Gone | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

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僕がまだ年若く、今よりもっと傷つきやすい心を持っていた時分に、父がある忠告を与えてくれたけれど、爾来僕は、その忠告を、心の中で繰り返し反芻してきた。「人を批判したいような気持が起きた場合にはだな」と、父は言うのである「この世の中の人がみんなお前と同じように恵まれているわけではないということを、ちょっと思い出してみるのだ

FS・フィッツジェラルド著『華麗なるギャツビー』より


今週はトリュフのディナーをはじめ、シャンパンの宴が続いたおかげで、いつもの朝の日課であるスポーツジムに、金曜日だけは足を運べなかった。土曜日の朝は、書棚から目に留まった3冊を選び出し、リビングルームのアイリーン・グレイのガラステーブル上に置き、ホテルのフィットネスへと向かった。イタリアのテクノジム社製のトレッドミルで10kmほどのランニング、そして少しばかりの筋トレで、汗を流した。
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シャンパン
から解放された週末の昼下がり。軽い食事を済ませ、ビジネスメールの処理を終えた頃、自宅リビングでは珍しく、いつものピエール・エルメフレデリック・カッセルではなく、ラデュレのマカロンが用意されていた。



コルビュジエのポニースキンのシェーズロングに横たわり、読書の秋を満喫する時間、BGMとしてセレクトしたのは、ガリアーノのアルバム“LIVE AT THE LIQUID ROOM”と“”の2枚だ。

以前のブログでも記したが、80年代後半から90年代におけるアシッドジャズアシッドハウスクラブジャズとも当時のHMV渋谷店のフロアでは分類されていた)の記憶は、俺自身、生涯忘れることはないだろう。


このガリアーノ名義のラストアルバムライヴ・アット・ザ・リキッドルーム』は、(俺も足を運んだ)1996年12月14日(土)新宿リキッドルームで行われた伝説の夜を彩った貴重な音源であり、時代の空気を感じられる傑作なのだ。ジャイルス・ピーターソンをはじめ、U.F.O.も帯同し、同時期に来日中だったインコグニートアスワドのメンバーも会場に姿を現した、とライナーノーツにも記されている。
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ところで今回、読書の秋に選んだ本は、新刊ではないが、
ロン・インサーナ著『ウォール街でコーヒーブレイク』(1997年)、ジョーダン・ベルフォート著『ウォール街 狂乱日記』(2008年)、ジョセフ・E・スティグリッツ著『フリーフォール グローバル経済はどこまで落ちるのか』(2010年)の3冊だ。
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この3冊を改めて読み返そうと思ったのは、このベルフォート著『ウォール街
 狂乱日記』が、マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオのコンビで映画化されるからだ。撮影は去る8月に始まっており、日本公開に関して現時点では未定だ。

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自伝
である同著の作者、ジョーダン・ベルフォート は、1962年生まれの50歳で、現在はロサンゼルスのマンハッタンビーチに住んでいる。本の書き出しは、1987年5月1日の物語から始まるが、一部抜粋して紹介したい。


マンハッタンの五番街にそそり立つ、近代的な41階建のビルの23階。黒光りするマホガニーのデスクが並び、黒い電話線が迷路のように錯綜している。15メートル×20メートル以上もある広いフロアも、立ち並ぶデスク、電話、コンピュータのモニタ、それに70人もひしめく嫌らしいヤッピーどもで、息が詰まるようだった。午前9時20分。彼らはスーツの上着を脱ぎ、とりどりに『ウォール・ストリート・ジャーナル』に顔を埋めて、世界の帝王の身分を満喫していた。



世界の帝王。目指す甲斐があった。そんな男たちの脇を通り過ぎながら、安物の紺色のスーツにどた靴の自分も、できるものならあやかりたかった。だが、新たな上司は、それが身の程知らずな願いであることを、すぐさま思い知らせてくれた。「お前の仕事は……」安物のスーツの襟につけたプラスチックの名札に視線を走らせながら彼は言った。「……つなぎ屋だ。わかるか、ジョーダン・ベルフォート? 



私は私で、灰色のコンピュータのスクリーンを点滅しながら横切るオレンジ色の市況データに目を回していた。一枚ガラスの壁の外には、ミッド・マンハッタンの光景が広がっていた。遠くにエンパイア・ステートビルも見える。天国まで伸びる孤高のビルの頂は、大空を突き上げていた。若き世界の帝王にふさわしい眺めだった。そしてそんな座は、ますます遠のいていくようでもあった。



昼食は意外な成り行きになった。行く先は41階の五つ星レストラン、「トップ・オブ・シックシーズ」だった。エリートが会食し、世界の帝王たちがマティー二で神経をほぐしながら武勇伝を交換する場所だ。



いま私が綴ろうとしているのは、その狂気―ウォール街開闢以来、最も強気の博打打ちだった者たちの狂気―の物語だ。その過程で、私の頭の中にこだましていた声をそっくり再現したい。それは皮肉で、軽薄で、利己主義的で、たいてい卑しい声だった。その声が、私のたがのはずれた快楽主義を正当化した。その声が、周囲の人々を堕落させ、操り、アメリカの若者世代全体に混乱狂気をもたらした。



・・・到着してみると、スイスの「エレガントで洗練」とは「陰鬱でむっつり」の別称であることがわかった。スイスの銀行家たちに借りを作ってしまった以上、彼らが選んでくれた宿が気に入ったふりぐらいはしなければならない。それに1泊4000ドルというのだから、そう悪い宿でもないのだろう。柳のように細いホテルの支配人は、有名人の宿泊客リストを見せてくれた。マイケル・ジャクソン? やはり、好きになれそうもない宿だ。



一部抜粋したとおり、彼のウォール街の日常をはじめとした、とてもわかりやすい内容の自伝本ではあるが、或る意味、俺とは気が合いそうだ、マイケル・ジャクソン?(笑)



同書は2000年の映画『マネー・ゲーム 株価大暴落(原題:Boiler Room』にインスピレーションを受けた作品のようなのだが、過去にも、ウォール街のビジネスエリートを題材にした映画は沢山作られているが、マーティン・スコセッシ監督による本作『The Wolf of Wall Street』は、以前のブログでも取り上げたデヴィッド・クローネンバーグ監督作『Cosmopolis』同様に、私的には日本公開が大変に待ち遠しい作品なのだ。
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昨日、この『ウォール街
 狂乱日記』を読み返している間、ガリアーノの“FREEFALL”と“LONG TIME GONE”が頭の中をループしていたのだが、彼らの音楽は、近未来の世界を予見していたかのように、その鋭い内容の歌詞と合わせ、洗練されたサウンドが、90年代の心地良い世界へと俺をタイム・トラヴェルに誘(いざな)ってくれたのだ。



同著の中から、作者が伝えたかったのであろう一節を紹介したい。




それは悲しい皮肉だった。私の権力は単なる幻影に過ぎず、先読みを誤ればすぐに崩れ去る砂上の楼閣なのだ。まるでひねくれたゲーム理論家になったようだった。私は常に、次の一手とその結果、さらに次の手は……と考えることに時間とエネルギーの大半を費やしていた。それはまったく神経のすり減る仕事であり、そうやって五年間も暮らした今、私は良き自分を見失ってしまったかのようだった。実際、日々の安らぎを得られるのは、ドラッグ美しい妻の甘美な肉体に溺れている時だった。



同書以外の2冊に関しても、書きたかったのだが、機会を改めて、書き綴りたいと思う。最後になるが、ガリアーノの96年リリース曲“Freefall・・・最高!



反逆」は一つのパッケージとして売買されてる。「ノスタルジー」は新たな方法で過去を歪めてる。メインストリームの更新を誰も制御できない。自分の手を汚さず、混沌を処理しなくてはならない。でかくなればなるほど、偽りの部分も膨らんでいく。について唄っても、正直で賢いとは限らない。壊滅を打倒しろ、平凡な堕落を用いて。考えてる時間があればあるほど、恐怖に脅える時間も増える。



はどんどん落ちていく


Have a nice day!