カルヴィン・トムキンズ著『優雅な生活が最高の復讐である』の最初の章から、一部抜粋して紹介したい。
スコット・フィッツジェラルドのような作家は、作品によりも人生のほうに関心があつまるので、その文学的評価がきちんと定まるには長い時間がかかるだろう。いまもなおフィッツジェラルド物語の伝説的要素はまぶしく輝いていて、判断の邪魔をしている。かれの小説に、われわれはつい、あの華々しい人生を理解するための鍵をさがしてしまう。さまざまに語り継がれるうちに1920年代の教訓劇、浪費された才能の悲劇ということになった、かれの人生の鍵をである。
しかし、そういうことはあるが、フィッツジェラルドが自分の悲劇をともかくもありのままに描こうとした小説『夜はやさし』は、このところ、アメリカの古典という地位を獲得しはじめているのである。この本は、初版がでたときは、失敗作とみなされ、かれが1940年に死んだときには絶版になっていたが、いまではどこの現代文学の教室でも必読図書になっている。失敗作、とみなす批評家はいまでもたくさんいるが、その場合も、高貴なる失敗作、傷ついた傑作、というふうにいわれる。
精神分析医の主人公ディック・ダイヴァーの破綻が十分に描かれていないという不満もけっこうあるが、そう言う批評家も、ダイヴァーは読者のこころを深くつかまえるアメリカ小説では稀有なヒーローであるという点は認めている。かれの破綻ぶりが、曖昧とはいえ、あまりにも激烈なので、みごとに完成したプロットをもつ『華麗なるギャツビー』のような小説もやけに小ぎれいなものに見えてしまう。
フィッツジェラルド著『華麗なるギャツビー』を映画化させた、バズ・ラーマン監督の同名タイトル作が、レオナルド・ディカプリオ主演で2013年5月にアメリカ公開となる。私的な勘違いで、監督を務めたのがニューヨーカー<マーティン・スコセッシ>だと昨日まで勝手に思い込んでいた。スコセッシは、来月17日に70歳の誕生日を迎える。
ところで、ジョルジオ・アルマーニを身に纏った英国人俳優<ユアン・マクレガー>が、年2回発行される雑誌“GQ STYLE”の、イタリア版(2012-13 秋冬号)の表紙を飾った。
このブログで彼を取り上げるのは、今年のカンヌ国際映画祭、さらに遡ると、2010年の第23回東京国際映画祭で上映されたユアン・マクレガー主演作『ゴースト・ライター
』に足を運んだとき以来だろうか。
彼の出演作品はほとんど観ているが、特に記憶に残っているのは、ダニー・ボイル監督作『トレインスポッティング』(1996)をはじめ、トット・ヘインズ監督作『ヴェルヴェット・ゴールドマイン』(1998)、マーク・フォースター監督作『ステイ』(2005)、ウディ・アレン監督作『ウディ・アレンの夢と犯罪』(2007)、マーセル・ランゲネッガー監督作『彼が二度愛したS』(2008)、ロマン・ポランスキー監督作『ゴースト・ライター』(2010年)の、6作品だ。
そして、12月1日に日本公開となる作品が、ウディ・アレン監督作『恋のロンドン狂騒曲
(原題:You Will Meet a Tall Dark Stranger)』(2010)と、
サム・メンデス監督作『007 スカイフォール
(原題:Skyfall)』(2012)だ。
時代は今、“ロンドン”なのかというくらいに、今年最も注目を浴びた国が、夏季オリンピックも開催された英国だろう。先日、スコットランド独立の話題について、少しばかりツイッター上で触れたばかりなのだが、スコットランドの作家<アーヴィン・ウェルシュ>は今何を想うだろうか。
フィッツジェラルド著『夜はやさし』が出版された、翌1935年生まれのニューヨーカー<ウディ・アレン>は、12月1日に77歳の誕生日を迎える。
同監督作品で、今年日本で公開された『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)はパリが舞台となり、今年アメリカとイタリアで公開された『To Rome with Love 』(2012)はローマが舞台だ。
彼の撮る作品はかつてニューヨークが中心だったが、近年ではロンドン三部作をはじめ、バルセロナ、パリ、ローマなどヨーロッパに移って以降も、とても興味深くもある。ぜひ一度、ここ東京を舞台に、ウィットに富んだオトナの恋愛映画を撮って欲しいものだ。
『恋のロンドン狂騒曲』はともかく、今年下半期で最も注目度が高い作品はといえば、ジェームズ・ボンドが主役の『007 スカイフォール』に他ならない。
また、007シリーズ全22作品を収録した「007製作50周年記念版ブルーレイBOX
」(¥33,000)が昨日リリースされたばかりだが、ブルーレイでこの価格は破格の安さだ。俺自身、2008年にリリースされた「007 カジノ・ロワイヤル付スペシャル・コンプリートBOX」(¥43,000)を当時購入しているため、今回の購入は見送るが、007ファンはマストバイの商品だろうか。
最新作『007 スカイフォール』は、ロンドンプレミアが10月23日に開催され、一般公開は、英国が10月26日、米国が11月9日、日本が12月1日と続いていく。
ジェームズ・ボンドの生みの親である英国人作家<イアン・フレミング>は、007シリーズをジャマイカの別荘“ゴールデンアイ”でも執筆していたが、俺自身、時間に余裕があった大学時代に頻繁に足を運んだのがアメリカであり、東海岸及び西海岸、ハワイが中心だった。もちろん、フロリダのキーウエスト、ジャマイカにも足を運んだが、10代だった当時からもうかれこれ20年以上が経過した。
最後になるが、『007 スカイフォール』の劇中で、英国人スパイ<ジェームズ・ボンド>役を演じるダニエル・クレイグが身に纏う衣装などについて注目して観るのも、或る意味、面白い観方なのかもしれない。
スーツはNYの最高峰ブランド「トム・フォード」を身に纏い、靴は英国製「クロケット&ジョーンズ」。靴に関していえば、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』以降は、英国製「チャーチ」を愛用していた。クルマは、英国車「アストン・マーティン」で、前作及び前々作で登場した洗練の極みとも言えるデザインの「DBS」とは趣を異にするが、今回の車種はクラシックカー「DB5」だ。
スイムウェアは英国の「オールバー・ブラウン」。付け加えると、『カジノ・ロワイヤル』で着用したスイムウェアのほうが高級で、イタリアのラ・ペルラの男性版「グリジオ・ペルラ」だった。
他には、NYブランド「ビリー・リード」のピーコートも今回身に纏う。アタッシュケースは英国ブランド「グローブ・トロッター」。時計は、スイス製「オメガ」のSeamaster Planet Ocean。
使用する携帯電話は、日本ブランド、ソニーの「Xperia T」。他には、英国車「ランドローヴァー」のディフェンダー、船では、プルーヴァのスーパーヨット「Regina
」も。
飲み物は、俺のお気に入りシャンパンでもあるフランスの「ボランジェ」以外に、シングルモルトのロールスロイスと形容されるスコッチ・ウィスキー「マッカラン」が登場する。
ジェームズ・ボンドが優雅に暮らすことは、或る意味、過酷なスパイを生業?とする、過酷な人生への、最高の復讐なのかもしれない。
Have a nice weekend!