監督として選手に伝えていくこと。 | 徳本一善オフィシャルブログ「-ICHIZEN-」by Ameba

監督として選手に伝えていくこと。

最近、オリンピック選手、世界選手権マラソン銀メダリストを育てた人からこう言われた。
「確かに日の丸つけさせてオリンピックや世界選手権でメダル取らせる事はすごい事だけれども多くの選手を犠牲にしてきている。日の目に浴びているのはほとんどそういった指導者だよ。
でもね本当にすごい指導者は、どんな選手でもその選手の能力を引き出してくれる指導者が本当にすごい指導者なんだと僕は思うよ。僕はね今のこの弱いチームで教えられたんだよ。」と

僕はその言葉に、ものすごく考えさせられた。
僕の未熟な指導でも、部員全員の能力を引き出すという難題から逃げないと決めた。

去年とは段違いにチームの雰囲気は良くなってきている。
選手主導のチーム。
彼らに訴え続けた事が少しずつ実を結んでる。
僕が目指したチームの理想に。だけどまだまだ甘いし先は遠い。
一部の選手はもう監督の僕がいちいち言わないでも分かって行動している。
そしてその一部の選手が必死でチームをまとめてくれようとしている。
今まで自分がやらなければいけない事を無駄にやっていた。
無駄な事でもその時は必要なやらなければいけない事だったから。
選手主導になればこの無駄は省ける。

この無駄を省いたことで、新たなやらなくてはいけない無駄な事を追加できる。
チームが強くなればなるほど、監督、コーチ、スタッフ、選手の役割が明確になり効率が良くなる。
今はそのおかげで彼らが強くなる環境、彼らが強くなるトレーニングメニューをもっと良いものにするために考える時間が増えた。また他のところから勉強して知識を得る時間も増えた。
今はまだまだ弱いチームだけど彼らは心配ないし勝手に強くなる。考える事ができ、目標を見失わない強さがあるから。
そういった選手に成長してくれた事がうれしい。
できる事なら部員全員がそんな気持ちでグラウンドにいてほしい。毎日の生活を大事にし積み重ねて欲しい。
でも、50人もいれば、自分より練習してもない生活もだらしない選手が強かったりする。練習そのものがきつすぎて逃げたり、集団生活になじめなかったり、その度に自分の力に失望し、見切りをつけてしまう。また故障が原因で走る事さえできない状況に苛立ち、一部の選手はあきらめていて、目標が見当たらなくて。苦しんでる。きっといろんなところでそんな選手がいるのだと思う。
でも僕は彼らに訴える。
「逃げるな」と。
うちのような弱いチームでもみんな始めは箱根を夢見て強くなりたいと入部してくる。
それでも僕らのいる世界は競争社会。強い者が日の目を浴び、弱い者は影を潜める。うちの選手は日の目を浴びる可能性が低い選手ばかりだと思う。
だからこそ自分自身が全身全霊で走ると決めたこの4年間に背を向けないでほしい。
期限付きの「逃げない事」
大きな目標は小さな一歩から始まる。まずは今日より明日の進歩を感じてほしい。
そして自分の限界は自分だけのものという世界がある事を知ってほしい。
確かに勝負の世界には相手がいる。でも相手に勝つ前に自分に勝つことをしないと勝てるものも勝てないと僕は信じてる。
つらい事、きつい事、逃げ出したい事、必ずぶち当たる出来事だと思う。僕も大学の4年間何度も経験した。あとは逃げるか逃げないかだけ。
目標とは必ず達成しなければいけないものとは僕は思っていなくて、近づけるという事の方が大事だとも思ってる。失敗する事の方が当たり前で、成功する事の方が珍しいぐらいに思ってる。
もちろん結果がついてくれば最高に決まっている。
でもいつだって勝者は一人。
うまくいかない時こそ逃げずに向き合う事が僕は大事だと思ってる。
逃げた人を否定してるとかではなく、僕の人生で彼らに教えてあげられる事は、逃げなかったことでどうなっていったのかという事。僕の経験した人生しか教えてあげられないから。
そんな僕の経験が嫌だとか違うとか思うのなら逃げれば良いさ。
最後は自分の人生は自分で選択しなければいけないのだから。(今の選手はそれすらも決めきれない)
僕の人生の醍醐味はつらい、苦しいときに逃げずにうまく立ち向かって生きてきた事。
僕はミーティングで同じ事を何回も言う。
一度あきらめてしまった彼らの目はどこかしら死んでるように見えるから。彼らの心に響かせるには何度も熱く訴えるしかない。
例え「監督ばかじゃねぇの?」と思われても、僕自身ができる事は胸ぐら掴んで、「お前それでいいのか?逃げるな!」と問いかけてあげる事しかできない。
この事を何度も言える強さを指導者として彼らのことをあきらめない強さ身につけていきたい。
それが僕が生きてきた「逃げない」という生き方だから。
選手にはその思いを伝えていきたい。
もっと良いチームにしていきたい。