瑞希に雑誌を捨てられそうになり、彩花は思わず泣いてしまった。そこで、彩花はモデルになりたいという気持ちが本気のものだったのだと気づいた。
「いつまで泣いてるの、手伝って」
瑞希の言葉にはっとした彩花は袖で涙をぬぐった。彩花はすぐに手伝おうと思ったが、雑誌が目に入り、一番上の雑誌を手に取った。それは、数日前に読んだ雑誌とは違い、彩花と同じくらいの年の子が載っていた。彩花はそれを食い入るように見た。自分とどこが違うのか、何でこの人はモデルになれたのだろうかなどという疑問が彩花の中で渦巻く。
「彩花、見てないで元の場所まで運んでよ」
「えー、もうちょっとだけ」
「あんた、本当に切り替えが早いわね……」
ついこの前までぐずっていたと思っていた彩花がころりと変わってしまったので、瑞希は今までの肩の荷が下りたと言わんばかりにそばに寝転んだ。
「本当に疲れる。あんたみたいな妹がいると」
「なっ、どういう事だ!」
「何でもないわ」
「何でもないわけないだろ!」
彩花は勢いよく雑誌を閉じた。
雑誌を瑞希の部屋まで運び終わり一段落つくと、彩花は前に読んでいた雑誌を持っていった。自分の部屋の前で雑誌に載っているモデルと同じポーズをとってみる。
「こんな感じか?」
彩花は雑誌と鏡に映る自分を交互に見ていた時、瑞希が部屋に入ってきた。
「本気でモデルを目指すって言うのなら少しくらい手助けしてあげる」
「ホント! そんな事できるの?」
彩花は瑞希にそんな事できるのかと少し驚き思いながらも舞い上がった。 彩花は瑞希があまりにもモデルについて詳しく教えてくるので、どうしてこんなに分かるのだろうと疑問に思ったが、瑞希が間髪入れずに話してくるので口に出す事はなかった。
「じゃあ、私は買い物に行くから」
と瑞希は言い、買い物に行ってしまった。彩花は瑞希に色々と言われて、まだ頭の中がごちゃごちゃしていたが、取り敢えず、ポーズの練習を再開した。
「もうちょっと雑誌をじっくり見てみようかな」
彩花は次のページをめくった。
「ん?」
彩花はそのページに載っているモデルの一人が目に入った。そのモデルは、誰かに似
ているような気がした。どこかで見た事があると彩花は思ったが、誰だかはいまいち分からない。しばらく、じーっとそのモデルを見ていた彩花は、はっと気づいた。
「瑞希姉ちゃん!」
着ている服や、身に着けているアクセサリーによっていつもの冷静なしっかり者の姉という雰囲気とは違ったが、そのモデルはまちがなく瑞希であった。この事に衝撃を受けた彩花は、いつもと違うモデルの「瑞希」を見て、固まってしまった。
(つづく)
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