編集長歳時記#6 2月号 勘三郎さんを忘れずに… | 中洲ママ40年 藤堂和子の“中洲通信” 「博多で待っとぉよ。この指とまれ!」



中洲ママ40年 藤堂和子の“中洲通信” 「博多で待っとぉよ。この指とまれ!」


今年も1ヶ月が過ぎ、毎日何をしているのかと思うほど、
時間が足りないのはなぜなのか…。
歳を取って、行動が鈍くなり、
物事を思い出す時間も長くかかってしまいます。
若い時のようにテキパキとさばけないのは
仕方のないことだと自覚しています。
しかし長年使ってきた脳までぼけてきたのか、
話をしていて「ホラあの人」「アレ何?」とか、
頭のコンピュータも
少し調子が悪くなってきたのは自分でも感じます。
昔はコンピュータという言葉こそ
あまり使われていませんでしたが
若い頃は、「和ちゃんの頭の中はどうなっているの?」
と言われるのが自慢できるぐらい感度良好だったのに…。


この歳になると、私より年上の人だけではなく
年下の人でも、お別れする時が必ず来るものです。
昨年12月に57歳の若さで急逝された
十八代中村勘三郎さんの息子さんである、
六代目勘九郎さんの襲名披露が、
今月2月2日から博多座で、行われます。
私も勘三郎さんのお芝居や踊りが大好きで、
これまで何度も東京や横浜、京都などで観てきました。
四国のこんぴら(金比羅)歌舞伎に
行けなかったことは心残りです。
勘三郎さん急逝というニュースを、
歌舞伎界やファンの方々がどれほど惜しまれていたのかは、
想像を絶するものがあります。
どの道に生きている人も、
その地位を得るまでの努力や苦悩は、
人にはなかなかわからないものです。


勘三郎さんが亡くなった時に、
京都・南座で、勘九郎襲名披露を兼ねた
「吉例顔見世興行」に出演中だった
勘九郎さんと七之助さん兄弟。
「親の死に目に会えるような役者になるな」と
勘三郎さんは息子さんたちに
いつも言っていたと聞いたことがあります。
勘九郎さんと七之助さんは南座での夜の部出演後に
勘三郎さんの様子が気になり東京へ戻ったところ、
容態が急変しており、未明に看取ることになったようです。
ふたりは勘三郎さんを看取った後、
すぐに京都へ戻り、舞台を務め上げました。
看取ることはできたものの、すぐに舞台に上がることは、
どんなに寂しく、辛いことだっただろうと思いましたが、
やはり「舞台」という、お客様を目の前にして
涙も見せられない役者という仕事の凄みを改めて感じました。
勘九郎さんはその日の襲名披露口上で
「父を忘れないでください」と言ったそうです。
父・勘三郎さんの功績を忘れずに、若き六代目勘九郎が
歌舞伎界に新しい風を起こしてくれることを期待したいですね。


今回は、勘九郎さんの襲名披露ということもあって、
勘三郎さんファン、中村屋のファンにとっても、
たまらない舞台になることは間違いないと思います。
勘九郎さんも、目の動きがお父さんに似てきたな
と思うのは私ひとりだけでしょうか。
何にせよ、1999年(平成8年)に
演劇専用劇場として福岡に博多座が出来てから13年、
身近で、こんな舞台が観られるようになったのは
福岡、九州の人たちにとっても本当に幸福なことです。
多くの人に、是非博多座に観に来て欲しいと思います。
歌舞伎界にも、また博多・中洲にも新しい風が吹いて、
私の頭の回転も少しは良くなりますように…。


【公演情報】
中村勘太郎改め 六代目中村勘九郎襲名披露
二月博多座大歌舞伎
会場:博多座
期間:2月2日(土)~2月26日(火)
料金:
A席18,000円
特B席15,000円
B席12,000円
C席5,000円
http://www.hakataza.co.jp