イラスト版 子どものアンガーマネジメント 怒りをコントロールする43のスキル | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会:監修 篠 真希・長縄 史子:著
合同出版  定価:1700円 + 税  (2015年7月)
 
          私のお薦め度:★★★★☆
 
今月は自閉症関連の専門書ではなく、子どもたち全般を対象とした「怒りをコントロール」するためのマニュアル本です。
と、言っても先月の18歳の春でも、武藏博文先生の『楽しく学べる怒りと不安のマネジメント カンジョウレンジャー&カイケツロボ』の本の紹介があったように、発達障害児にとって、感情、特に怒りの感情をうまく表現できないことは大きな課題となっています。
周りの人たち以上に、本人が苦しんでいるように思えます。
 
そこで、今月とりあげたアンガーマネジメント本の紹介です。出だしが「この本を読むキミへ」のタイトルで始まっているように、子どもたちが自分で読んで、考えられるように書かれています。
 
まず第1章で「怒りってなんだろう」と、怒りのメカニズムや性質について、小学生にもわかるような言葉で解説しています。
「怒りは大切なきもちのひとつ」
「じぶんのなかの怒りを認めよう」
「怒ることは悪くない」
「怒りはじぶんを守るためにある」
と、怒りを認めるところからスタートします。

「怒っちゃダメ!」「怒ることはいけないこと」って小さいころから言われてきたり、怒りすぎて後から反省したり、悪かったなぁと後悔することがあると「怒り」のきもちはイヤだなと思いやすい。
けれど「怒り」はなくならないし、なくすこともできない。怒りたいときには怒ってもいいし、逆に怒る必要がないときには怒らなくていいんだ。
怒ってもいいというと、ビックリするかな? 安心する人もいるかもね。バカにされたり、頭ごなしにしかられたりしたとき、アタマにくるのは自然なことなんだよ。怒りは人をきずつけるためにあるんじゃなくて、じぶんを守るためにあるのだから。
 
そして、「怒りはコントロールできる」ということで、問題となりがちな4つの怒りに対して、それぞれをコントロールするための43のスキルの紹介が始まります。

この問題となる4つの怒りとは「1.しょっちゅう怒ってしまう(頻度が高い)」「2.怒りがずっと続いてしまう(持続する)」「3.強く怒ってしまう(強度が高い)」「4.怒りをぶつけてしまう(攻撃性がある)」です。
それに対するマニュアルも、3段階あって「★☆☆」が低学年向き、「★★☆」が中学年向き、「★★★」が高学年向きと分類され、子どもたちのプライドを守るようになっています。本文の中には「障害」という言葉は一切使われていないことも、高機能な子どもたちには薦めやすいと思います。
 
ワークショップ形式で、自分の中の気持ちや状況を書き出してみるページも多いので、コピーして何度も使ってみるのもいいと思います。
例えばこんなページです。
 
「自分の中の “べき”が怒りの原因」

“べき”というのは、じぶんはあたり前だと思っている 強い思い込みのこと。
どうでもいいと思ってことには怒りを感じないけど、“ 絶対にただしい!”と思うじぶんの思いこみがハズレたときに怒りたくなるんだ。
「~するべき(~するべきじゃない)」と思っていることはあるかな?
「~はあたり前」「~しないといけない」でもいいよ。
それが絶対にただしいことなのかを考えてみよう。
怒りたくなるタネをさがそう!→まわりの大人やともだちにインタビューしてほかの人の意見を聞いてみよう。

これは子どもだけでなく、大人にとっても“べき”論で叱っていることがあるかもしれませんね。それが本当に自分にとっても、相手にとっても“正しい”ことなのか、ワークショップで書き出してみることが必要なのかもしれませんね。
 
文部科学省は、アンガーマネジメントを「感情理解教育」と翻訳しています。アメリカでは心理教育、心理トレーニングともいわれており、理論を覚え、技術を習得し、くり返し練習することで上達していきます。スポーツや料理を覚えるように、くり返すことでだれもができるようになります。
しかし、技術的な側面もありますので、だれもがプロ級にうまくなるとは言いません。ただ、野球であればキャッチボールくらいはできるようになりますし、料理であれば卵を割ることくらいはできるようになります。単純にやり方を知っているか、知らないかで大きな差が生まれるのです。
(あとがき:「保護者・指導者のみなさまへ」より)
 
発達障害をもつ子どもたちが苦手としているのが、まさに「感情理解」ですね。でもキャッチボールや卵を割ることができるようになれば、本人も周りの人も心穏やかに暮らせることも増えてくると思います。
そのためのヒントになれば、と本書をお薦めします。
 
          (「育てる会会報 208号」 2015.8より)
 
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目次
 
  この本を読むキミへ
  アンガーマネジメントチェック
  じぶんの怒りのチェックシート
 
第1章 怒りってなんだろう
 
  1 イライラ、怒りのきもちってなんだろう?
  2 怒ることは悪くない
  3 問題となるのは4つの怒り
  4 怒りの性質をしろう
  5 怒りのしくみを理解しよう
  6 怒りをコントロールするのはじぶん
 
    コラム1 怒りのボキャブラリー
 
第2章 衝動的に怒らないようにしよう
 
  7 怒りたいときは、まず6秒ルール
  8 ともだちにずるされたとき 【★☆☆】
  9 あそんでいた遊具をとられたとき 【★☆☆】
 10 クラスの意見がなかなかまとまらないとき 【★★☆】
 11 ならんでいたのに割りこみされたとき 【★★☆】
 12 りふじんに怒られたとき 【★★★】
 13 やりたくない仕事をおしつけられたとき 【★★★】
 
    コラム2 衝動のコントロールエクササイズ
 
第3章 かんがえ方を変えてみよう
 
 14 じぶんのなかの “べき” が怒りの原因
 15 ゆるせるこころをひろげよう
 16 ケンカになったとき 【★☆☆】
 17 キライな子のとなりの席になったとき 【★☆☆】
 18 ともだちがとつぜん怒ったとき 【★★☆】
 19 あそびに入れてもらえなかったとき 【★★☆】
 20 先生にしかられて腹がたったとき 【★★☆】
 21 じぶんだけがソンをしている気がしたとき 【★★★】
 
    アンガーログ
    コラム3 キミの “べき” は発展途上
 
第4章 じょうずな怒り方をマスターしよう
 
 22 怒るときの3つのルール
 23 怒るときの4つのタブー
 24 貸したものを返してくれないとき 【★☆☆】
 25 ともだちが言うことを聞かせようとしたとき 【★☆☆】
 26 いつもおなじ子にめいわくをかけられるとき 【★★☆】
 27 バカにされたとき 【★★☆】
 28 約束をやぶられたとき 【★★★】
 29 ウソをつかれたとき 【★★★】
 
    コラム4 怒るとからだはどうなる?
 
第5章 怒りの後の行動をじぶんできめよう
 
 30 行動をきめるわかれ道(1)
 31 行動をきめるわかれ道(2)
 32 まわりの子にうたがわれたとき 【★☆☆】
 33 練習しても逆上がりができないとき 【★☆☆】
 34 先生がじぶんの言うことを信じてくれないとき 【★★☆】
 35 ともだちに悪口を言われているかもしれないとき 【★★☆】
 36 成績が思うように上がらないとき 【★★★】
 37 理由はわからないけどイライラするとき 【★★★】
 
    コラム5 怒りの温度計
 
第6章 アンガーマネジメント総まとめ
 
 38 じぶんなりのテクニックをさがそう!
 39 きもちが落ち着くものリスト
 40 感情のボキャブラリー
 41 ふり返りリスト(悪かったこと)
 42 ふり返りリスト(よかったこと)
 43 アンガーマネジメントクイズ
 
    保護者・指導者のみなさまへ
    各トレーニングの課題とねらい
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