奥平 綾子:著 小学館 定価:1400円+税 (2006年5月)
私のお薦め度:★★★☆☆
「ダダくん 11の不思議」という本書ですが、下の目次の「11の不思議」の各項目を見ておわかりのように、自閉症児を持つ家族にとっては、すでにおなじみの事柄が並んでいるように思います。
でも、これが「不思議」と思えるくらい、一般の方にとってはまだまだ自閉症は「不思議な障害」ということなのでしょうか。その意味で本書は、自閉症の関係者向け・・というよりは、一般の方向けに書かれた本かもしれませんね。
本書の内容は、自閉症の特性の数々を「11の不思議」という形で紹介し、それぞれに属するダダくんの個人的エピソードを、ハルヤンネさんが2003年から2004年にかけてインフォシークに「違う☆(ほし)から来た息子」として書かれてた中から添付するというスタイルで作られています。
著者のハルヤンネ@奥平綾子さんについては、ここで改めて紹介することもないと思います。ネットの世界では、以前はダダ母さんのハンドルネームで活動され、今は(有)おめめどう-自閉症サポート企画-の社長として幅広く活躍されています。ご主人のダダ父さんの作られた「ダダ父通信」は、自閉症児を持つ家族にとっては、バイブル的なサイトでしたが、今ではダダ父さんより、ハルヤンネさんの方が有名になられたかも知れませんね。
先に述べたように、一般の方向け、という感じの本書なので、自閉症の持つ特性について “一般的に”説明している本書なので、その意味ではニキさんワールド「自閉っ子、こういう風にできてます!」や「俺ルール!」のように、私たち“関係者”がその世界の不思議さに驚かされるような箇所は少ないと思います。
しかし、11の不思議の各項目の後につけられた、「違う☆から来た息子」から転載されたエッセイには、同じ親として、特にこれから子育てに取り組まれようとしている自閉症児をお持ちの若いお母さん方には共感される方も多いのではないでしょうか。
ようやく就労した自閉症児を育ててきた親としては、将来の二次障害に繋がらないかと、若干の懸念を持つ箇所もありますが (・・・親(社会)と子(本人)の価値観のぶつかりあいはあえてスルーして、相手(自閉症の世界=子どもの世界)の文化を最優先に尊重しているように見える箇所など・・・)、それはたとえ子どもであっても、相手の人権・人格をトコトン尊重していくというダダ家の生き方なのでしょう。
一方で、我が家の場合は、たとえ自閉症児であっても、相手が未成年の間は親が保護者として(自らの価値判断で)、社会的にも許されないと思えることは、厳しく律していく・・・というスタンスで育ててきました。
これはどちらが正しい、というよりもそれぞれの家庭の教育方針の違いであり、ダダさんチからは個人的に批判されたこともありましたが、互いに認め合っていただきたいなと思っています。
本書に書かれているようにハル@スポック船長はダダくんのナビゲーターに徹しておられますし、我が家はテッペイにとっての親権者・療育者の道を選びました。
さて、あなたはどちらの道をお選びになられますか?
(2006.5)
--------------------------------------------------
- 自閉症の息子 ダダくん11の不思議/奥平 綾子
- ¥1,470
- Amazon.co.jp
- レイルマン―自閉症文化への道しるべ/奥平 綾子@ダダ母
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
- レイルマン (2)/奥平綾子@ハルヤンネ
- ¥1,785
- Amazon.co.jp
--------------------------------------------------
目次
まえがき
違う☆から来た息子
自閉症との出会い
四つの柱 ― 受容の過程
一人一人のプロフィール
障害とじょうずにつきあう
権利を持った一人の人間
年齢ごとのプライド
自閉症ってどんな障害?
11の不思議
不思議 1 五感が独特
不思議 2 好きなことはすっごくできる
不思議 3 絵にできることならわかる
不思議 4 形のないもの、絵にできないものは苦手
不思議 5 人との付き合い方がうまくない
不思議 6 見える形なら伝え合える
不思議 7 見て納得できれば、変更もへっちゃら
不思議 8 始めと終わりがわかればできる
不思議 9 見て、触って、やってみて覚える
不思議 10 一つの場所では一つのことを
不思議 11 繰り返しが好き
あとがき