西田 清・髙橋 宏・別府 哲・藤本 文朗:編著 クリエイツかもがわ (2000年2月)
私のお薦め度:★★★☆☆
本書は、自閉症協会奈良県支部が1999年に開催された「第6回 発達講座」の内容をまとめられたものです。
本書の中で、初代の支部長になられた河村舟二氏が書かれているように、奈良県支部は全国47都道府県の中で、最後に支部ができた県です。1998年のことです。
それから、わずか1年で発達講座も回を重ね、本書をまとめられ、またHPのコンテンツも「ライブラリー」をはじめ、あっという間に充実されて、すばらしい内容となっています。すでに他県からのお手本になるような活動ですね。
本書は、そのHPのライブラリーにも多数収録されている、西田 清先生(28年間の教育実践をされ、同時に奈良県支部の事務局長も務められています)や、当日講演された、別府哲先生、髙橋 宏先生、藤本 文朗先生のお話、それに河村支部長や親の方の思いのこもった文を収録されています。
もっとも、その講演内容は、全障研でよく語られる、内的世界を豊かにする話や、集団の中で心を開かせる話、心の支えになる人を作っていくなどの、発達保障に基づくお話が多いので、好き嫌いもあり、評価は分かれるかもしれませんね。
ただ、第3章の親のみなさんのお話は、全国共通で共感を持って読んでいただけると思います。
特に、河村支部長の自分のお子さんが大荒れで大変な時期に、みんなのためにと支部を立ち上げるために奔走する姿は心をうたれます。こんなボランティア精神のあふれる方によって自閉症協会が成立しているのですね。
奈良県支部の更なる発展をお祈りしています。
(2001.12)
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- 父母と教師が語る自閉性障害児者の発達と教育/西田 清
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目次
はじめに
第1章 自立をめざす自閉性障害児者のライフサイクルと教育
- 恋するまでに発達した則君と私の28年間の教育実践 ・・・西田 清
Ⅰ 自閉性障害児との出会い
1 障害児教育と出会うまで
2 自閉性障害児の則君との出会い
3 自閉性障害についてのとらえ方の変遷
Ⅱ 則君の問題行動の変化や発達の様子
1 小学校における発達
2 幼児期・小学校での問題行動や言葉の指導のまとめ
3 心を開き、他人から学べる発達集団とは
4 自閉性障害児を発達させる集団の条件とは
5 自閉性障害児の集団への接近と参加
6 身のまわりのことをできるようにしておく課題
- 身辺自立は、心の自立を促進させる
7 学校生活のなかでの主な取り組みについて
Ⅲ 中学校・高等部から青年期への発達と課題
1 則君の中学校での発達
2 西の京養護学校高等部2年生から3年生頃の様子
3 高等部で担任だった渡辺浩三先生の卒業時点のまとめ
4 中学校・高等部での課題
5 34歳の現在の様子
6 青年期の主な取り組みと課題について
7 豊かな中年期をめざすためにも、豊かな青年期をどのように過ごすか
第2章 はじめて自閉性障害児に接する保育者・教師へ
- 生活年齢から考えた発達課題表 ・・・・・・・・髙橋 宏
ライフサイクルを通して保育・教育実践を考える
○ 生活年齢から考えた発達課題表
1 幼児期から小学校低学年
2 小学校中学年から高学年
3 中学校・高等部
4 思春期・青年期
第3章 自閉性障害児者と生きて
1 わが子と歩む (杉藤 麻美)
2 たすけ愛、はげまし愛って
- 就職できるまでのわが子の発達 (浦 三恵子)
3 自立と結婚への夢を語るわが子 (国吉 ヒロ子)
4 学びあう親の会 (河村 舟二)
第4章 乳幼児期の自閉性障害児の内的世界と発達保障 ・・・・ 別府 哲
1 自閉性障害児の子どもの内的世界
2 心の支えとなる人を作る
3 心の支えとなる人を形成する
自閉性障害独自のプロセスと「問題」行動
4 「わかって」楽しめる「あたりまえの生活」をつくる
- 『ライフ・オブ・パピースクール』から学ぶ
5 ライフサイクルからみた自閉性障害児の乳幼児期の課題
第5章 自閉性障害者と社会参加 ・・・・・・・・・・・・・ 藤本 文朗
1 自閉症協会奈良県支部の活動に接して、感動
2 自閉性障害者との出会いから
- 私の40年間の研究をふり返りつつ
3 社会参加の実態をさぐる
4 自閉性障害者研究の動向と、その実践的反映と展望
5 まとめにかえて - 今後の課題
おわりに