自閉症の教育が楽しくなる本 ~効果的なTEACCHモデルの活用~ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

柴田 静寛+秋田県自閉症治療教育研究会:編 無明舎出版 定価:1800円+税 (2003年4月)


    私のお薦め度:★★★☆☆


この本は、東北の地、秋田で、自閉症児への支援を続けておられる先生方が、教育現場で実践されてこられた数々の事例をまとめられた本です。


自閉症児の療育は、はじめてこの障害に接した担任の先生にとっては、確かにどうしていいのかわからない・・そんな困惑をひきおこすものでしょう。そこで、助けとなったのがこれらのTEACCHの技法だったのです。


本書でとりあげた事例は、TEACCHプログラムの成書で言われている内容を忠実に実施したり、しかも全面的にとり入れている訳ではありません。
もしかしたらTEACCHプログラムの全容をとり入れないとTEACCHプログラムもどきで本物ではない、と言う方もいるかもしれませんが、現場にいる人たちにとっては本プログラムはあくまでもひとつの方法であり、私たち関係者がいかに彼らの学習や作業、生活に寄与できるかが問題ですので、TEACCHプログラムを採用して少しでも彼らにプラスの効果があればいいと考えています。


我が家が10年前に、小学校に入学した息子のために、TEACCHの本を参考にして見よう見真似で教室を構造化し、スケジュールを分かるように視覚化し、そして課題もワークシステム化していったのと、全く同じ思いの実践です。
「TEACCHもどき」かもしれませんが、その技法をとりいれることにより、子どもが嘘のように見通しがもてて安定し、暮らしやすくなるところがTEACCHのすばらしさだと思っています。


この本の中でも、随所に出てくる「TEACCHプログラムを導入することで、見通しをもてるように・・・」「TEACCHプログラムを導入し、予測のしやすい環境に・・・」、正確には「TEACCHメソッド(TEACCH的技法)の一つである・・を導入して・・」ということかもしれませんが、なんにしろ子どもたちを混乱から救い出す助けとなることは間違いないところでしょう。


TEACCHプログラムは単なる手法ではなく、哲学であり、行政や社会をもまきこんだシステムだとは思いますが、現場においては 「少しでもプラスになることならば・・・」というのが正直な話でしょう。


そして「少し」ではなく、大きく助けになるのが「TEACCH」であり 「TEACCHもどき」ですね。

特に家元制・免許制でもなく、商標登録してあるわけでもありませんので・・・ 子どもたちのために 「効果的なTEACCHモデル」を大いに活用させていただきたいと・・、本書をお薦めします。


ただ、やはりTEACCHを本当に活用していくためには、技法だけではなく、それを支える理念も理解していただきたいので、実際編だけでなく本書の第2章「TEACCHプログラムの概要」もしっかり読んでいただきたいと思います。また、もしうまくいかなかった時などに、TEACCHを疑うのではなく、上辺だけの模倣ではなかったかと、原点に戻る意味でも・・・この本は入門書、一つの事例集だと考えて、他に専門書も多く出ていますので並行して読んでいただくようお願いします。


       (2003.9)


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目次


序文 ・・・・・・・・・・・・・・ 佐々木 正美


はじめに


1章 自閉症とはどんな障害か


  1 自閉症のとらえ方


  2 自閉症の人たちの特徴

      コミュニケーション
      社会性
      こだわり
      感覚的な特徴
      飛びぬけた能力(ピークスキル)
      知的障害との違い


2章 TEACCHプログラムの概要


  1 TEACCHプログラムとはなにか

      理念
      7つの原則


  2 TEACCHプログラムのすすめ方


  3 TEACCHプログラムで教えること


  4 キーワード


  5 発達に応じた指導

      自閉症児の発見から療育へ
      評価
      課題分析
      何を目標にするか
      指導の実際


3章 TEACCHプログラムの実際(幼児編)


      学習に向けた準備をはじめよう
      “遊び上手”にヘンシーン!
      みんなといっしょ、おいしいおべんとう
      さあ始めよう、マイコミュニケーション
      お勉強が好きになったよ
      毎日のできごとが分かって明るい表情
      お母さんと保育士の連携プログラム
      就学をスムーズに迎える


4章 TEACCHプログラムの実際(児童・生徒編)


      することが分かって楽しい学校
      次の勉強なにかな?
      ぼく、はじめての場所も平気だよ
      ぼくも家庭学習できるよ!
      学校から帰ったあとのいきいきライフ
      学習に集中する
      パニックをのりこえて勉強に集中


5章 TEACCHプログラムの実際(青年・成人編)


      ひとりからみんなの中へ
      安心して仕事ができるまで
      こだわり・孤独もなんのその!
      初めての施設もへっちゃらよ
      ぼくたちにもこんなことができた!


6章 困った時への対応


      解説
      保育所の生活になじめない
      集会?! 大キライ!
      不安になって友だちをたたく
      学校から帰ると、まずおやつ
      殻にとじこもり、周囲との関わりを拒否
      時間が気になり、混乱とトラブル続き
      テーブルをひっくり返す中学生
      いくつもの問題行動に悩んだ日々
      どうしても苦手な脳波検査
      日課よりもこだわりを優先


  資料編

      秋田県自閉症治療教育研究会
      あきたスペースクラブ
      全国の児童相談所
      (社)日本自閉症協会
      参考図書