志賀 利一:著 エンパワメント研究所:発行 筒井書房:発売 定価:1100円 + 税 (2000年2月)
私のお薦め度:★★★★☆
まず、問題行動への対応にはいる前に「問題行動」とはなにかという整理から始めましょう。
(1) 自分の身体・健康上に著しい危険をもたらす
(2) 他者の身体・健康上に著しい危険をもたらす
(3) 誰もが有意義と認める学習・労働・レジャーへの参加を著しく妨げる
(イントロダクション 「問題行動とは」 より)
こう、定義したうえで、これらの行動を頻繁にみせる人を目の前にして
「どうしてこんな行動をしてしまうのかわからない」
「なんとか速やかにこの行動をやめてもらう手だてはないものか」
「できればこんな行動は二度と起こさずにいて欲しい」
そう悩んでいる人・・親や先生、療育関係者の助けになるように書かれた本(マニュアル)です。
対処の方法は目次にあるように、PLAN(計画)→DO(実行)→SEE(評価) --→ PLANの流れで、きちんと記録につけて評価を繰り返し、問題行動を分析し、行動を適切なものに変えていこうとする手法です。
特に巻末の付録「状況を4つの箱に整理してみよう」の記入用紙は、実際の問題行動の理解・分析にすぐに使える様式だと思います。
「間接的な状況」で、遠因というか、おかれている状況・・気分や体調までを含めた状況を書き出し、「直前の状況」でその問題行動を起こすトリガー(ひきがね)となった状況を把握します。そして実際の問題行動を記載したあと、「直後の状況」で、その行動が彼にとってどのような結果をもたらしたのか、彼は何を得ることができたのか、を分析・記入します。
書いて記録に残すことで、行動の前にあった「間接的な状況」や「直前の状況」の問題点がわかります。また、目標としたい「行動」や「直後の状況」も整理でき、どのように「直前の状況や「間接的な状況」をコントロールすれば適切な行動に導けるか、周りのみんなでアイデアを出し合うこともできます。
彼らが、問題行動をこじらせ、「強度行動障害」に陥ることのないよう、このマニュアルが有効に使われることを願っています。
(2002.05)
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- 発達障害児者の問題行動―その理解と対応マニュアル/志賀 利一
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目次
イントロダクション
5つの事例
マニュアルの目的
問題行動とは
問題解決の流れ
理論的な背景
CHAPTER1 PLAN(計画)
1-1 行動に名前を付ける
1-2 状況を整理する
1-3 問題が続いている原因を取り除く対処計画
1-4 予防的な対処計画
1-5 計画の検証
1-6 対処の決定
CHAPTER2 DO(実行)
2-1 実行する
2-2 記録をつける
2-3 予測しなかった事態に対処する
CHAPTER3 SEE(評価)
3-1 記録を整理する
3-2 継続か修正かを決定する
CHAPTER4 TIPS(事例集)
4-1 問題行動がおきない分析
4-2 計画的な無視の効果
4-3 周囲が許容できる戦略
4-4 問題は小さいうちに
4-5 何が関係しているかわからない
4-6 コミュニケーションアプローチ
4-7 奇抜なアイデアに溺れない
4-8 多様な専門的意見
これからが本当のスタート
問題行動をなくす名人はいない
長期的なゴールを設定する
参考資料
付録
問題行動の状況を書きこむ様式
状況を4つの箱に整理してみよう
間接的な状況
直前の状況
行動
直後の状況対象者のフェースシート