自閉症や知的障害をもつ人とのコミュニケーションのための10のアイデア | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

坂井 聡:著 エンパワメント研究所:発行 筒井書房:発売 定価:1400円 + 税 (2002年11月)


    私のお薦め度:★★★★☆


コミュニケーションにトコトンこだわる坂井先生の本です。
教育現場で子ども達のために工夫を続けていらっしゃいます。


香川大学教育学部附属養護学校で生徒達に実際に行なってきた支援の数々・・いろんなアイデアの詰まった手引書です。
そのスタートはまず、『 困っていることは何だろう?』と考えるところから始まります。
あくまで本人の立場にたって、支援を必要としているのはどんなことだろう? そしてその支援はどのようにしたら実現できるのだろう?


もちろん、坂井先生は学校の“先生”ですから、本人の能力を高め、できることを増やそうとすことにも力をそそぎます。できることが増えれば、本人にとって生活の幅や選択肢も広がっていきます。
でも、訓練だけを「ガンバレ、ガンバレ」と声かけするより、支援の工夫で今持っている能力で、生活を豊かにすることもできるはずです。

この本はそちらの視点から、今子ども達に提供できる手段やAAC機器などが紹介されています。


まずは、視覚的な支援の助けとなるボードメーカーの紹介です。このソフトを使えば、絵の苦手な方でも、パソコンで手軽にシンボルの画像が作れます。自閉症児たちにとって、視覚的支援が有効なことは、もうみなさんご存知なことと思います。


次のアイデアは構造化についてです。スケジュールの構造化で、私達がよくうっかりするのは、これから始めることはカード等で示しても、それをいつまで続けるのかを示し忘れること・・・そのためのアイデアとしてタイマー、それも見てわかるような、タイムログやQHW(クウォーターアワーウォッチ)の使い方の説明です。時計を読めるように教えるのは学校の授業ですが、たとえ読めるようにならなくても、こうしたタイマーを使えば終わりの時間を見える形で伝えられ、安心して活動できるようになります。


・・・・こういった、具体的なアイデアを、ご本人の授業での失敗体験も交えて、楽しくわかりやすく提供していただいています。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、いくつか項目だけでも紹介します。


子ども達の方からコミュニケーションを発信するためのコミュニケーションブックやVOCA(音声を出力できる機器)、携帯電話やデジタルカメラを支援機器として使う方法、子ども達を理解してもらうためのサポートブックの作り方などなど・・・


学校や家庭で、すぐにでも取り組みたい、子ども達の助けとなる一冊です。


       (「育てる会会報 56号 」2002.12)


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自閉症や知的障害をもつ人とのコミュニケーションのための10のアイデア―始点は視点を変えること/坂井 聡
¥1,470
Amazon.co.jp

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目次


はじめに


1 支援するとはどういうことか


  1-1 ノーマライゼーションが変えた自立観
  1-2 ICIDH から ICF へ
  1-3 障害をもつということは
  1-4 障害にとらわれず 「困っていることは何だろう?」と考えてみる
  1-5 支援と訓練
  1-6 自己決定すること


2 視覚的な支援をしてみる


  2-1 エコラリアが出たときには
  2-2 自閉症をもつ人たちはどう理解あいているの?
  2-3 視覚的にわかりやすくすることが重要だとわかっていても
  2-4 パソコンでつくれば簡単に


3 構造化


  3-1 冷たい感じ
  3-2 なぜ構造化しないの
  3-3 本当にそうでしょうか
  3-4 これだけで十分ですか?
  3-5 本当にわがままなのか
  3-6 タイマーの活用をしてみる
  3-7 タイマーをどのように使うのか
  3-8 スケジュールは必要ですか?
  3-9 シンボルを入れたらわかるかも
  3-10 あともう一歩
  3-11 時間を量で表してくれる時計


4 構造化に魅了されているあなたへ


  4-1 その構造化は間違い
  4-2 この失敗が語ること
  4-3 じゃあどうすればいいの


5 構造化だけでは


  5-1 儀式的行事で
  5-2 儀式的行事の位置づけ
  5-3 ある質問
  5-4 構造化が通用しない
  5-5 どんな工夫がありますか?
  5-6 こんな工夫もあります


6 生活に活かすために


  6-1 学校ではできるのに
  6-2 暮らしのなかで生きる力に
  6-3 家庭での支援のアイデアをどのように考えるのか
  6-4 地域生活に広げられる
  6-5 支援はなくならなくてもいい
  6-6 わかるように伝えるために工夫する


7 発信にこだわる


  7-1 環境が整ったとしても
  7-2 本当にしゃべれているの?
  7-3 周囲の人に受け入れられにくい行動で表現している
  7-4 要求、注目、拒否の表現を探る
  7-5 どれにする?
  7-6 じゃあ次は


8 テクノロジーを使う


  8-1 VOCAって知っていますか?
  8-2 どんなVOCAがあるの?
  8-3 VOCAの特徴を活用する
  8-4 どんなことばを入れるの?


9 支援機器の活用


  9-1 バランスよく使い分けること
  9-2 コンピューターをどのように使いますか?
  9-3 コンピューターが変える障害
  9-4 生活の範囲が広がる可能性も
  9-5 こんな問題が出たら・・・
  9-6 デジタルカメラを使ってみる
  9-7 携帯電話を使ってみる


10 適切な支援を受けることができるように


  10-1 サポートブックって何だ?
  10-2 どんな内容が必要?
  10-3 最低限必要な情報では?


おわりに


  参考文献
  本書で紹介したVOCAや支援機器が購入できる会社情報