6/25快楽亭ブラック毒演会 | 落語探偵事務所

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 快楽亭ブラック毒演会、2016年6月25日、於東京・お江戸上野広小路亭。

 演目

 快楽亭ブラ坊 「置泥」
 快楽亭ブラック 「なめる」
 快楽亭ブラック 新作落語(「人生劇場」?)

 仲入り

 快楽亭ブラック 「三十石」
 快楽亭ブラック 「せむし茶屋」

 昨日は久しぶりに1日オフで、落語会に行こうとして『東京かわら版』を開いたら、行きたい落語会が4つもあり、悩んだ末に(悩むほどのことでもないですが…)最もディープでダークでブラックな会を選びました。

 開口一番は2か月前に二つ目になったブラ坊さんの「置泥」。マクラでは、落語協会の女性の落語家さんと仕事が一緒になった時のエピソードを面白おかしく。本編は一転して古典落語「置泥」をみっちりと。

 そしてブラック師匠が登場。マクラでは、今行われている参議院選挙から、その昔比例代表区(拘束名簿式の頃)で青木茂の「サラリーマン新党」、野末陳平の「税金党」やアントニオ猪木の「スポーツ平和党」などの新党ブームが起きた頃、「原発いらない人びと」という新党が出た時の“欲求・要求をそのまま党名にするとは、やりやがったな”という話から、供託金が積めるのなら「○○○○やりたい…党」(○○○○はもちろん放送禁止の4文字です)みたいな新党を立ち上げて、新作パロディ落語「オマン公社」(元ネタは新作落語「ぜんざい公社」)に出てくる「国営オマン公社」の新設等を公約として訴えていきたいと抱負を語られ、爆笑しました。

 さらに、歌舞伎の話題から、1席目の「なめる」へ。艶笑噺ですね。私は三遊亭圓生師匠の口演をCDで聴いたことがありますが、ライヴで聴くのは今回が初めてです。ブラック師匠の口演は濃厚かつキワモノ系のポルノを観るようでした。いや~、面白かった~。

 2席目は新作落語(「人生劇場」?)。映画『人生劇場』の「残侠篇」「飛車角」等へのオマージュであり、パロディである新作落語です。ブラック師匠は昭和の日本映画にひじょうに詳しく、専門誌などで映画批評を執筆されています。口演のくすぐりなどで日本映画が紹介されることが多く、その度に観たくなります。今回はマクラで映画『水戸黄門漫遊記 人喰い狒々』(1958年)等についてのディープな紹介があり、興味深々でメモしてしまいました。仲入り前に“お腹いっぱい”状態になりました。

 仲入りでブラ坊さんが、ブラック師匠の新作CD『珍②』と、「落語芸術協会の小さな巨人「滝川鯉朝」の弟子でありながら芸協に所属せず気が向いた時に魔界から現れて落語を口演する、国籍・性別・年齢不詳の落語家。魔界の住人なので放送コードを気にせず語るその芸風は過激で落語界の異端児「快楽亭ブラック」をはるかに凌ぐと噂される」という『謎の落語家 瀧川九鯉トリス デビュー盤』というCDの2枚を販売されていたので、1枚ずつ購入しました。楽しみ~。

 仲入り後は上方落語を2席。

 「三十石」。大ネタです。マクラでは、ブラック師匠自身が○○川での観光川下り船に乗った時、観光解説だけでなく本来船頭が歌うはずの舟歌がテープで流された…という残念な思い出を語ってから、本編へ。船頭の舟歌もきっちりと歌い上げておられました(ここで拍手を入れようとしましたが、タイミングを失ってしまいました)。みっちりと聴いて、もう本当にお腹いっぱいになりましたが…。

 「せむし茶屋」。テレビ・ラジオなどでは放送できない上方落語の大ネタです。桂米朝師匠の口演がCDで商品化されているものを聴いた記憶があります。別名「卯の日参り」。えげつないネタも多い上方落語の中でも、そのえげつなさでは突出している噺です(えげつなさすぎるので内容については触れません…)。「三十石」で居眠り気味だった観客の目も覚め、観客のほぼ全員が目を爛々と輝かせて聴き入りました。私の記憶に依りますが、ブラック師匠の口演は、多分独自のくすぐりやギャグを入れていないと思いました。それが無くても十二分にえげつなく必要ないからでしょう。“お腹いっぱい”だったところに、ディナー並みのボリュームのあるデザートが出てきて、“別腹”でガツガツ平らげてしまったような感じだったでしょうか。サゲの後、東京の落語家ではブラック師匠しか演(や)る落語家はいないこと、立川流独立前にブラック師匠が池袋演芸場の落語協会の寄席定席で高座にかけた時に、先日亡くなった柳家喜多八師匠から「後味の悪い噺だね」と言われた思い出についてさらっと触れました。

 たっぷり2時間半。ブラック師匠の大ネタ3席に新作1席。
 その中でも1席は東京ではブラック師匠の会でしか聴けない大ネタ…。私だけでなく、観客みんながお腹いっぱいのいっぱいになったはずです…。

 ブラック師匠のサービスてんこ盛りの会で、満足満腹になって、帰宅の路に着きました。