慶應義塾大学、東京医科歯科大学、東京大学、大阪医科大学の共同研究グループが米科学誌「Nature Medicine」オンライン版に発表した記事(2012.3.4)によれば、摂取限度を超えたビタミンEは骨粗鬆症のリスクになると言うことです。

骨では、骨を作る「骨芽細胞」と骨を壊す「破骨細胞」(骨を壊す=骨を吸収する)が互いに働きながら骨の新陳代謝が行なわれていますが、この骨芽細胞と破骨細胞の新陳代謝(骨代謝)のバランスが崩れると骨粗鬆症が発生しやすくなります。

ビタミンやミネラルは骨密度との関わりが深く、特にビタミンDやカルシウムは骨粗鬆症の治療にも一般的に使われています。
ビタミンE ついては、アンチエイジング効果が期待できることから中高年女性も積極的にサプリメントを摂取しているようですが、今までビタミンEの骨への影響については良く分かっていませんでした。

共同研究グループは、破骨細胞が小さく骨をうまく壊せないために全身の骨量が増加していて、しかもビタミンEの主な成分「αトコフェロール」を血中に輸送するタンパク「αトコフェロールトランスファープロテイン(αTTP)」を欠損させたマウス(血中のビタミンEは極めて少ない)の骨で解析しました。
このマウスに破骨細胞を培養してビタミンEを添加すると、破骨細胞が巨大化して骨を壊す(吸収する)能力が亢進しました。これはビタミンEが破骨細胞の巨大化に必要なタンパク質の産生を誘導することを証明したと言うことです。

(難しいですが、ここまでがビタミンEの影響力を明らかにした実験です!)


そして正常なマウスに人がサプリメントとして通常に摂取している分量のビタミンE(体の小さなマウスにとっては多量のビタミンE)を加えた餌を8週間与えたところ、破骨細胞が巨大化して骨破壊(骨の吸収)が亢進して骨量が減少し、マウスに骨粗鬆症が発症しました。
これらの結果より、ビタミンE の過剰摂取は破骨細胞を巨大化させて骨破壊(骨の吸収)を促進し、骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが明らかになりました。

美容やアンチエイジング効果もあるビタミンEでも厚生労働省が定めた上限800900mg/日を超えることがないように注意して下さい。

因みに通常の適量摂取なら100mg/日程度ですが、1000mg/日を超える摂取を継続すると悪影響が出ると言うことであり、

通常ではそれほど多量な継続摂取はなく、余程のことがない限りビタミンEの摂取は有効で安全だと考えます。