【なぜファーストガンダムは魅力的なのか?】ジオン軍の失敗:岡嶋裕史
- ジオン軍の失敗 (アフタヌーン新書)/岡嶋 裕史
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こんにちは。TMstarです。
今日紹介する1冊は、岡嶋裕史さんの「ジオン軍の失敗」です。
これはTaka@中小企業診断士(業務休止中)さんの書評 を読んで、
「カワテツさんと語る会」の前に近くの書店で購入したもの。
最近コアなファンが急増中の「アフタヌーン新書」。
完全に一般の読者マーケットを無視し(笑)、
オタク(腐女子含む)にターゲットを絞ったラインナップが、潔い。
その5月の新書に、かの「ウチのシステムはなぜ使えない」の岡嶋裕史さんが登場!
うお、岡嶋さんこんな方面までお得意なのですか?
本書はファーストガンダムで登場したジオン軍のMS(モビルスーツ)の開発をネタにして
一般の企業でも陥りがちな
「(製品開発における)戦略の失敗」を解析する
という大胆な試みがなされています。
本書のポイントは
MS論という「重力」からいまひとつ抜け切れなかった岡嶋さん
です。
★本書の3ポイント★
1.ビジネス書とは違うのだよ、ビジネス書とは!
2.ビジネス書っぽさは飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ
3.認めたくないものだな。自身の若さゆえの過ちというものを
★超個人的感想★
なんといっても驚きは、あの岡嶋裕史さんが本書を執筆されていることです。
確かに岡嶋さんは
IT関連の技術やSEの苦悩などを、専門家でない人たちに向けて平易な言葉で解説できる、素晴らしい文章力をもっておられる方ですが
さすがに「ガンダム」までが守備範囲だとは思いませんでしたよ!
しかも取り上げる題材は連邦軍ではなく、ジオン公国のモビルスーツ群。
ジオン公国のモビルスーツ開発を、一般の製品開発に置きかえて
「失敗する製品が世に出てしまうのはなぜか?」
について分析しています。
この(アニメやマンガの内容をリアルな世界のビジネスに展開して語る)手法は
オタキング岡田斗司夫さんの「世界征服は可能か?」などがありますが
正直な感想をいえば(個人的には)
「世界征服は可能か?」のほうに軍配を上げたいと思います。
というのも本書「ジオン軍の失敗」は
あくまでジオン軍のモビルスーツの研究という枠から
いまひとつ抜け切れていないように感じるからです。
ジオン軍の戦術、戦略、MS論として読む分には、十分に面白いのですが
そこから「失敗する製品が世に出てしまうのはなぜか?」ということを展開して語るには至っていない
というのがボクの印象です。
「suggestion」ということで、一般論化した主張が数行にわたって書かれていますが、それだけ。
岡嶋さんならば、もっと一般論化して展開できる才能があるはずなのに。
「アフタヌーン新書」の方針なのか、あくまで「ファーストガンダム」ファンをターゲットにしたような内容が
非常にもったいない、と感じます。
まあ、そういう目線や期待をしなければ、本書は面白いと思いますよ。
取り上げているMSも
MS-06F ザクⅡ
MS-06R 高機動型ザクシリーズ
MS-07 グフ
MS-09R リック・ドム
MS-14 ゲルググ
MSM-03 ゴッグ
MSM-04 アッガイ
MSM-07 スゴック
MAM-07 グラブロ
MA-08 ビグ・ザム
MSN-02 ジオング
と魅力的なMS群ばかりです。(MSMシリーズのボリュームが多いような気がしますが)
特にジオングの項は、たくさん付箋を貼りました(笑)。
しかしどうして常に取り上げられるのは「ファースト」なのでしょう。
「Z」「ZZ」「V」「W」「G」「∀」「種」・・・
ガンダム30年の歴史の中で出てきたガンダムやMSは数知れません。
しかも30年も前のアニメですよ。
それでも常に「ファーストガンダム」について語られることが多いのはなぜでしょう?
たぶん、それだけ敵MSが魅力的だったのでしょう。
魅力的な物語には、魅力的な敵が出てくるという要素が必要です。
シャア・アズナブルしかり、ランバ・ラルしかり、黒い3連星しかり・・・。
そして大河原邦男さんが描く魅力的なMS群。ネーミングもいい。
いまや40代のおっさん達がMG(マスターグレード)ガンダムのプラモデルを買うわけですよ。(そこそこ金持っている世代ともいえるが)
小学生の頃、朝早くホビーショップに並んでガンプラを買った、という甘酸っぱい思い出のある人は
ぜひご一読ください。
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