話せば尽きない | tmpブログ

話せば尽きない

9/14    ヨコハマ 曇り空 湿度高し

なんだか蒸し蒸ししてますね。写真はチューンド・アコースティックのYAMAHAのヘッド面が艶だし研磨後に目痩せが出たので再度トップ面のみコーティング中のショットと、ネックの設定変更中のCCR-312 のネックの接ぎ木後の下地処理中のショット。

こうした部分的な作り替えの場合でも生地加工、接ぎ加工、下地処理から仕上げ塗装、リセットアップ調整までを行いますので最低でも3~4万程のコストとなります。

メーカーの量産現場では途中製品に不具合を生じての作り直し的な作業をものすごく嫌います。
最も生産量の多い現場などでは1日で千本以上の個体が製造されていますので不良が出た場合はすぐにその個体をラインから外して修正専門の担当に回され、そこで修理するか破棄するかを判断されます。小傷の場合は殆ど修正に回されますが、コレを直す手間隙を考えると採算上全くのNGと言う場合は破棄されて最後は焼却処分です。

ワタシは過去に初期 ESP 社のエンジニアからスタートし、そこから独立してムーン・コーポレイションを設立しチーフエンジニアとして小ロット製作にも従事しておりましたので、1本の楽器をまともにセットアップすることの手間隙をよ~く熟知しております。

その後に女神工房と言う日本では珍しい個人工房も立ち上げて構造設計の研究やCFSの開発や55hz電源の研究、また弦をペグでロックする機構など数々の今では世界的にも定番となっているアイテムの発案/具体化などを行ったのちにもメーカーさんの製品開発の仕事を何社かさせて頂いたりして、その後に今日の t.m.p に至っているわけなんですが、要するに個人製作から量産現場まで様々な製造形態での生産/製造、開発に拘って来た経験がある上でのこれからのお話しなんですが、

例えば、ストラト1本分のパーツ一式が目の前にあって(ボディ&ネックは塗装済み)
それを丁寧に組み上げる場合、熟練工であっても一日朝から晩まで掛かっても1人で2本組むのが限界なんです。
実質、1人でいい仕事をする場合はセットアップは1日1本が理想です。その場合、単に問題無くセットアップされているかどうか、だけのレベルではなく楽器としてのクオリティを判断した上で良しとする作業内容での話しです。それを1日2本は正直かなりキツイです。

それ以上の本数を上げる場合は完成度を落とすか、もしくは分業システムで何人かで作業を分担して1日に2~3本の完成させるしか無いんです。ネック周りとボディ周り、電気系、などと担当を分けて数人でセットアップするわけですね。
ですから1日で数百本~千本以上も生産されている現場に楽器としてのクオリティを求める事自体が非現実的なんです。そうした量産現場には専門家では無い人々を使って生産出来る様にシステム化されパート要員さんが配置され、大量生産されているワケですから「この個体、鳴りが悪いんですが・・」なんて話しは全~く通用しません。
ちゃんと規格通り傷無く完成出来ていれば良いのであって音の善し悪しなんてのは論外です。
実際に今日、単なる何百枚もの板っぺらだったのが1ヶ月半後には数百本の製品として完成し工場から市場に出荷されてますからね。
でも量産品は安く大量に生産しなくては儲けが出ないんです。ですから生産スピードが命。

なので製作に時間が掛かれば掛かる程、利益はどんどん減って行きます。
途中で不良品が出た場合、やり直すコストの方が完成品で得られる利益を完全に上回ってしまいますので、破棄される事が多いのです。
これは大まかな量産品の製造コストの目安ですが、多くの場合、製品定価の10%程が製造原価です。そんな値段で工場は製造してるワケですから大変なんですよ。
プログラミングマシン加工でガンガン大量加工して目紛しく作業工程を進めて行かなくては利益なんて望めないんです。本当に製造現場はいつの世でも気の毒です。

また、本来のカスタムショップ製の在り方として、1人の熟練ビルダーが1本を板材加工から全ての行程を担当し最初から最後まで1人で製作し完成させるのが本来の理想的な姿ですが、それが1日数十本も完成させなくてはならないとなると、もう多人数で分業するしか無くなるんですね。
で、結局はライン製作が行われます。でなくては1日に数十本完成させることなど無理なんです。

カスタムショップ製とは言え、プログラムルーターマシンでの木部加工から生地研磨、塗装、セットアップと分担が分かれてのロット製作ですから、基本的には量産ライン品と作り方は全く一緒なんです。
現実には たった1人の職人が全ての行程をこなして完成させている楽器は、たぶん皆さんが想像されているより、ず~っと少ないのです。

特に日本人は情報に踊らされ易い民族として有名ですからね。踊らされ過ぎない様に注意しましょうね。世界中でカスタムショップ製と銘打つ製品が一番売れてるのが 日本らしいですから。

そもそも何でこんな話しをしたかと申しますと、カスタムショップ製だからチューンナップの必要は無いですよね?っておっしゃる方が多いからです。
 
ワタシからの返答は
「する必要の有る無しはご自分で判断して下さい。ワタシはその個体を更に素晴らしく出来る技術をアナタに提供出来ますと申してるだけです」

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