Nike Breaking 2 | 計測工房社長・藤井拓也のブログ

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マラソン大会などのスポーツイベントのタイム計測のプロフェッショナル、株式会社 計測工房の社長である藤井拓也のブログ。

先日(2017年5月6日)、スポーツメー

カーのナイキが主催し、マラソンで

「2時間突破」を目指したプロジェクト

「Breaking 2」がおこなわれました。

 

結果は、2016年リオ五輪の男子マラ

ソン金メダリストで、世界歴代3位の

2時間3分5秒の自己記録を持つ、

ケニアのエリウド・キプチョゲ選手が、

2時間0分25秒で走破

惜しくも2時間突破はならなかった

ものの、現世界記録(2時間2分57秒)

を大きく破り、あわや2時間突破かと

いう記録をマークしました。

 

このBreaking 2は公式な大会では

なく、気温、湿度、風、走路などが

最適な環境での実施ということで

イタリアのF1サーキットで夜明け前

の時間帯スタートでおこなわれ、

設定ペースを示すレーザーポインタ

が道路を照らし、そして入れ替わり

立ち替わり複数のペースメーカー

が設定ペースで引っ張り、給水の

ドリンクも並走する自転車から渡す

といった、通常の陸上競技のルール

を逸脱した形式での実施のため、

残念ながら公式記録にはなりません。

 

ナイキによる、話題づくりと販促を

前提とした壮大な実験だったと思い

ます。

 

しかしながら、42.195kmの距離を、

キプチョゲ選手が2時間0分25秒で

走ったという事実は、キプチョゲ選手

本人ならびに世界のトップ選手達の

意識の中に、「世界記録を破って、

2時間1分台、2時間0分台、そして

1時間台への到達」を空想から現実

に変換した瞬間だったと確信します。

 

今後、2時間2分57秒の世界記録が

更新されるたびに、今回のプロジェ

クトの2時間0分25秒が引き合いに

出され続けるでしょうし、いずれ公式

な大会で2時間0分25秒以上の記録

を出すという目標が世界のトップ選手

達に具体的に示されたと思います。

 

 

少なくとも陸上競技の歴史の中で

前例のない試みだったことは間違い

なく、「非公式でも世界記録を上回る

記録を出して、そこを境目に意識の

変換を図る」という概念は斬新でした。