東京マラソン2015観戦記 | 計測工房社長・藤井拓也のブログ

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マラソン大会などのスポーツイベントのタイム計測のプロフェッショナル、株式会社 計測工房の社長である藤井拓也のブログ。

昨日開催されました東京マラソン2015 の観戦記です。
写真は40km地点で全て私が撮影しました。


150222-1
1位 E・ネゲセ(エチオピア) 2時間6分0秒
35kmから40kmまでのスプリットタイム14分36秒は見事と
しか言いようがなく、集団から一気に独走態勢に持ち込ん
での優勝でした。ネゲセ選手ただ1人だけが前半ハーフ
よりも後半ハーフの方が速いネガティブスプリットでした。

今回、大会主催者側としては日本国内最高記録である
2時間5分18秒の更新を目指して1km2分58秒のペースで
30kmまでペースメーカーに引っ張らせましたが、微妙に
ペースが上がり切らず、優勝タイムが6分台にとどまった
のは残念でしたね。


150211-2
2位 S・キプロティッチ(ウガンダ) 2時間6分33秒 PB
2012年のロンドン五輪の男子マラソン優勝者である
キプロティッチ選手ですが、40km地点は3位通過だった
ものの最後の2.195kmは優勝したネゲセ選手をも上回る
6分38秒でまとめ、これまでの自己ベスト2時間7分20秒
を更新するタイムでの2位は額面割れしない結果でした。
海外招待選手では今回唯一の自己記録更新でした。


150222-3
3位 D・チュンバ(ケニア) 2時間6分34秒
ラストで2012年ロンドン金のキプロティッチ選手にかわ
されるも、2時間6分台で3位。
東京マラソンの表彰台に上がるには6分台が必要とい
うのが至近数年で確立されましたね。日本選手にとって
は日本記録に近いタイムを出さないと表彰台になかなか
上がれない大会と言えます。


150222-4
4位 S・デチャサ(バーレーン) 2時間7分20秒


150222-5
5位 P・ソメ(ケニア) 2時間7分22秒


150222-6
6位 M・ゲネティ(エチオピア) 2時間7分25秒


150222-7
7位 今井正人(トヨタ自動車九州) 2時間7分39秒 PB
今回は優勝争いをするという目標を公言していた通り、
日本人で唯一最後まで先頭集団にくらいつき、これまで
の自己記録2時間9分30秒を大幅に更新する日本歴代
6位の好記録で7位入賞
。2013年、2014年と2年連続で
東京マラソンと同じワールド・マラソン・メジャーズの
一角であるニューヨークシティマラソンに参戦し、6位、
7位と続けて入賞してきていただけあって、世界レベル
で戦ってきた経験が今回見事に開花しました。これで
マラソン歴も10戦を数え、名実ともに日本のエースの
1人になったと思います。
なお、今回マークした2時間7分39秒は日本人現役最速
記録となりますが、これでも今大会で7位というのが世界
の現状。今井選手も今回は35kmからペースダウンして
しまい、表彰台争いまでは絡めませんでしたが、あと一歩
粘って6分台を出すことが日本選手の次の課題だと思い
ます。今井選手も、せっかくここまで積み上げてきたので
次の一歩をぜひ踏み出してほしいと思います。


150222-8
8位 T・ケベデ(エチオピア) 2時間7分58秒
日本国内最高記録(2時間5分18秒)の保持者も、今回は
今井選手に遅れを取りました。


150222-9
9位 佐野広明(Honda) 2時間9分12秒 PB
日本人2位は伏兵の佐野選手でした。世の中一般的に
は無名だと思いますが、箱根駅伝マニアにはおなじみ。
麗澤大学時代は2009年の第85回箱根駅伝で学連選抜
の一員として10区を走り区間2位。この時は川内優輝選手
と学連選抜でのチームメイトでした。
今回の記録は従来の自己記録2時間10分29秒を更新し、
自身初のサブテン(2時間10分切り)。トラックのスピードは
平凡ながら、ロード型(マラソン型)の典型的な選手だと
思います。今後に期待が持たれます。


150222-10
10位 N・ベンジャミン(モンテローザ) 2時間9分18秒 PB
日本大学時代は箱根駅伝でもおなじみのベンジャミン
選手は、従来の自己記録2時間16分42秒を大幅に更新
してサブテン達成しました。


150222-11
11位 五ヶ谷宏司(JR東日本) 2時間9分21秒 PB
12位 Y・アスメロン(エリトリア) 2時間9分41秒

日本人3位の五ヶ谷選手も、先述の佐野選手と同様、
世の中一般的には無名だったと思います。これまた
箱根駅伝マニアにはおなじみの選手で、専修大学
時代は2010年の第86回箱根駅伝で1区で区間3位。
今回の記録は従来の自己記録2時間11分43秒を更新
し、自身初のサブテン(2時間10分切り)。
佐野選手とまったく同様にトラックのスピードは平凡な
がら、ロード型(マラソン型)の典型的な選手だと思い
ます。特に五ヶ谷選手は終盤の落ち込みの少なさが
光りました。

オリンピックや世界陸上において「マラソンニッポン」の
地位を守るには、今井選手のような「メダルを狙うエー
ス」も必要ですが、「堅実に入賞するポイントゲッター」
も必要だと思います。かつての油谷繁選手(中国電力)
や、大崎悟史選手(NTT西日本)、最近では中本健太郎
選手(安川電機)のようなタイプの選手が堅実派と言え
ますが、その系譜を引き継げる候補が、今回台頭した
佐野選手や五ヶ谷選手ではないでしょうか。


150222-13
13位 出岐雄大(中国電力) 2時間11分14秒
今年、箱根駅伝で初優勝した青山学院大学の基礎
を固めたと言える出岐選手がついに復活しました。
青山学院大学時代にマラソンで2時間10分2秒をマー
クしましたが、その後の長い低迷から見事復活です。
今回は自己記録の更新こそ、なりませんでしたが、
かなり近いところまで戻ってきました。出岐選手は、
「エース候補」の逸材だと思います。ここから次のステ
ップが楽しみです。


150222-14
14位 佐藤舜(上武大学)  2時間11分39秒 PB
もし東京マラソンに「新人賞」があれば間違いなく、
この佐藤舜選手でしょう。大学生ながら3年連続で
東京マラソンに参戦し毎年記録を伸ばしています。
(2013年が2時間15分10秒、2014年が2時間12分15秒、
そして2015年が2時間11分39秒)
大学生でトップレベルでのマラソン3戦という経験自体
が出色だと思います。卒業後が実に楽しみな存在。


150222-15
15位 森田知行(カネボウ) 2時間11分41秒
自己記録は2時間9分12秒。


150222-16
16位 濱崎達規(小森コーポレーション) 2時間12分12秒 PB
従来の自己記録は2時間19分16秒で、7分も更新して
マラソン開眼的結果となりました。


150222-17
17位 山本亮(SGHグループ) 2時間12分46秒
2012年ロンドン五輪の日本代表にして、自己記録は
2時間8分44秒の山本選手ですが復活ならず。


150222-18
18位 黒﨑拓克(コニカミノルタ) 2時間13分16秒
自己記録は2時間9分7秒。


150222-19
19位 阿久津圭司(SUBARU) 2時間13分26秒 PB
従来の自己記録は2時間14分46秒。


150222-20
20位 佐藤悠基(日清食品グループ) 2時間14分15秒 PB
日本の長距離トラック界最強の選手。2013年の東京
マラソンに続いて2度目のマラソン参戦も前回同様に
失速。ただ前回の記録2時間16分31秒は大幅に更新。
通常は2時間16分の選手が2時間14分を出したら健闘
したと言えますが、佐藤悠基選手にはそう言えるはず
もなく、やはり佐藤悠基選手がマラソンをやるからには
日本記録を破るような走りが期待されます。


150222-25
25位 松村康平(三菱重工長崎) 2時間16分8秒
昨年の東京マラソンで2時間8分9秒の日本人トップと
大ブレイクし、アジア大会でも銀メダル。次代の日本
のエース候補かとの期待に応えきれず。この失敗を
どう生かすかに尽きると思います。


150222-30
30位 徳本一善(モンテローザ) 2時間18分26秒
箱根駅伝出場を目指す駿河台大学の監督をしながら、
自身も現役マラソンランナーを続ける徳本選手。
今回は自己記録更新ならず(2時間14分35秒)。
徳本選手ブログに詳細→こちら


150222-37
37位 藤原新(ミキハウス) 2時間19分40秒
2012年の東京マラソンで2時間7分48秒をマークし、
現役最速記録保持者だった藤原選手も、また不発。
今回のレースで今井選手に現役最速記録保持者の
称号も奪われる形になりました・・・。


150222-38
55位 平塚潤(TEAM R×L) 2時間23分13秒
元エスビー食品のトップ選手で現在46歳の平塚潤さん。
今回の記録は2時間23分13秒でこれは46歳日本最高
記録
でした。若い頃とほとんど変わらぬ雰囲気です。
ちなみに従来の46歳日本最高記録は私の慶大競走部
の大先輩である角田進さんが1994年にマークしていた
2時間24分28秒でした。ついに角田さんの偉大な記録が
破られました。しかし平塚さん、このまま競技を続行して
行けば、4年後には50代の日本最高記録2時間28分14秒
も確実に破れるのではないでしょうか。


150222-F
女子1位 B・ディババ(エチオピア) 2時間23分15秒
東京マラソンの女子は日本国内の選考レースではない
ため、日本の有力選手が参戦しないのが実に残念。
せっかくワールド・マラソン・メジャーズ大会なので、
日本選手にも経験の場にしてほしいものです。




私のように陸上観戦が趣味(と言っても普段は土日が
仕事なのでほぼ観戦できない)という人間にとって、
世界最高峰ワールド・マラソン・メジャーズの東京マラソン
は最高に贅沢な観戦大会です。自宅からコース上まで
最短なら30分ぐらいで到着します。40km地点は本当に
オススメの観戦ポイントです。沿道は観客で溢れかえる
東京マラソンにおいて、他の地点に比べると驚くほど観客
が少ないポイントなので見やすいです。

以上、東京マラソン2015観戦記でした。