昨日(2011年12月4日)の福岡国際マラソン
の主役となったのは、
「市民ランナー」or「公務員ランナー」の川内優輝
選手(埼玉県庁)でした。
2時間9分57秒で日本人トップとなる3位入賞。「再び市民ランナーが
実業団選手を破った」としてメディアでも話題になりました。
川内選手が従来の陸上界の枠組みから逸脱した異端ランナーである
ことはすでに周知のことですが、私なりに川内選手を分析してみました。
川内選手の特徴を挙げてみます。
(1)42.195kmへの恐るべき適性
川内選手の自己ベスト記録は、5000m13分59秒38、10000m29分2秒33、
ハーフマラソン1時間2分40秒、マラソン2時間8分37秒です。(2011年時点)
いずれも日本の長距離選手としてはトップクラスの記録ですが、5000mから
ハーフマラソンの距離では川内選手を上回る選手は日本でもたくさんいます。
5000mからハーフマラソンの距離では川内選手は他の日本人選手に遅れを
取るでしょう。ところが42.195kmのマラソンになると川内選手に勝てる
日本人選手はほとんどいません。
ひとくちに長距離選手といっても、5000mからマラソンまでのレースの距離は
異なり、それぞれの選手にとって一番適正のある種目が存在します。
川内選手の場合、42.195kmのマラソンに恐るべき適性があります。
ちなみに近年の日本人選手で、それぞれの距離に適性があると思われる
例は下記のような感じです。(あくまでも私の主観です)
5000m :上野裕一郎(エスビー食品)、徳本一善(日清食品)
10000m :佐藤悠基(日清食品)、渡辺康幸(元エスビー食品)、花田勝彦(元エスビー食品)
ハーフマラソン :早田俊幸(元カネボウ)
マラソン :川内優輝(埼玉県庁)、宗兄弟(元旭化成)、谷口浩美(元旭化成)
オールラウンダー :高岡寿成(元カネボウ)、瀬古利彦(元エスビー食品)
(2)どんなレースでもその時の状態の100%を発揮できる
川内選手の稀有な才能の1つです。どんな選手であっても、その時の調子
やコンディションによって、状態に波はあります。毎回自己ベスト記録が出せる
わけではありません。とりわけマラソンという種目の特徴として、後半にペース
がガタ落ちして低調な記録に終わるという現象がよく発生します。
私自身の競技者経験も加味して述べますが、記録を出すことを念頭に置いて
走っているとレースの途中でペースダウンした時に「ああ、今日はダメだ。記録が
出ない」とあきらめに近い心境が発生したり、自分の意に反して体が動かない
状態になったときに、急激にエネルギーが萎えてしまう現象が起きます。
もちろんその他にも原因はさまざまありえますが、トップレベルの選手でも
マラソンで前半は5km15分ペースで走っていながら、後半は5km17分、18分、
あるいはもっとダウンして、最終的に2時間20分オーバーといった低調な失敗
レースになってしまうことがしばしば見られます。
川内選手にはそれがありません。どんなレースにおいても、その時の状態の
100%を発揮してフィニッシュまで走り切ることができています。
これは先天的な能力だと思います。過去にもこの能力に長けている選手は、
何人かいました。(反対に5000m、10000mでは天才的な走力を誇るのに、
マラソンになると走り切れない選手や、マラソンで一度は成功したけれども
以後のマラソンではそれが再現できず失敗レース続きという選手もいます)
(3)「根性・精神力・大和魂・武士道」的なものを持っている
これは完全な精神論ですが、川内選手の走りを見れば一目瞭然だと思います。
その走りから「根性・精神力・大和魂・武士道」的なものを感じさせます。
マラソンで苦しい局面で紙一重の勝負になったとき、雌雄を決するのは結局の
ところこういった力だと思います。よく言われる「マラソンで最後のスプリント勝負
になったら、トラック(5000m、10000m)のスピードがある選手が有利だ」という
のは一理ありますが、完全には正しくないと思います。(あくまでも個人の主観です)
最後は精神だと思います。そしてこれも天賦の才としか言いようがない能力です。
以上、川内選手の特徴として私が考える3つの点を挙げました。
トレーニング内容がどうとか、ランニングフォームがどうとか、そういった面の分析は
専門家の方に委ねます。
「市民ランナー」とか「公務員ランナー」とか、そういった環境面や肩書き面ではなく、
純粋にマラソン選手として川内選手は極めて傑出した稀有な才能を持っていることは
間違いありません。しかもこれは天賦の才、先天的な能力です。
同じ日本人として誇りに思いますね。今後も要注目です。