【NoNameEyes・第18話】罪悪感
プルプルプル…
ケータイの着信音でアキは目を覚ました。
時計を見ると、まだ8時半。休日に起きるには少し早い時間だ。
着信を見ると、晴人からだった。
アキは出るのをためらった。昨夜、あんなことがあったばかりだ。
正直言って、今は晴人と話す気分になれなかった。
しばらく黙ったままケータイを見ていると、着信音はピタッと鳴り止んだ。
アキがホッとしたのも束の間、またすぐに晴人からの着信音が鳴り出した。
アキは溜息をつくと、しかたなく着信ボタンを押した。
「もしもし」
「あ…。アキ?寝てた?」
「うん。今起きたよ。」
「…昨夜は、ごめん。俺、どうかしてたよ。」
「…もう、いいよ。」
アキにはそれくらいしか、返す言葉が見つからなかった。
晴人は少しの沈黙のあと、覚悟を決めたように切り出した。
「でも、俺が言ったことは全部マジだから。今さらこんなこと言っても聞いちゃくんないかもしれないけど。」
「晴人…あたしは」
「わかってるよ。オマエはあいつに惚れてんだろ。」
「ごめん…。」
「あやまるなよ…なあ、アキ。くどいようだけど、俺はあいつがオマエをシアワセにできるとはどうしても思えない。
だから、どうにもなんなくなったら、俺ンとこに来いよ。な。」
そういいながら、晴人は強い罪悪感に押しつぶされそうになっていた。
昨夜、あの時、あの場に柊がいた。
もちろん、ふたりのキスを見た訳じゃない。
けれど、もしかしたら、ふたりの会話を聞いていたのかもしれない。
あの時の柊の表情は、確実に何かを感じ取っていた。
しかし、アキはそのことを知らない。
晴人はアキにその事を伝えなければ、と思いつつもそれを切り出すことを出来ずにいた。
「晴人、ありがとう。」
「アキ…本当にごめん。」
「もう、いいって言ってるでしょ。 晴人、なんかあったら相談に乗ってよね。」
「ああ、わかったよ。」
結局、晴人は大事なことを言えないまま、電話を切った。
二日酔いよりも、もっと最悪な気分。俺はなんてことしちまったんだろう。
「アキ…ごめんな。」
ケータイをベッドにほおり投げると晴人は大きく溜息をつき、天井を見上げた。
アキの笑顔と、彼女の唇の感触が晴人の心に沁み込んでいた。
晴人は自分の唇に指で触れると、深い溜息をついた。
──こりゃ当分、消えてくれそうもないな。
晴人はベッドに身を投げるとブランケットにくるまって、しばらくの間、アキのぬくもりをぎゅっと抱きしめていた。
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