自爆営業 | 弁護士西山良紀(兵庫県神戸市)のブログ

自爆営業

さて、4月になりました。


4月19日に「どっちの料理ショー」が放映されるようです。


「餃子VS鶏のから揚げ」がテーマのようです。


非常に悩ましい選択ですね。


ジュースのように肉汁のあふれる餃子や鶏のから揚げ、想像しただけでお腹が減ってきます。


妻に、「餃子か鶏のから揚げ、どちらを食べるか、非常に難しい選択だね。」と話したところ、妻は「答えは簡単よ」と言いました。


私のお腹を見ながら、「どちらも食べないのがベストの選択よ。」と言いました。


おっしゃるとおりですね。正解が解っていても、その通り生きることができない、難しいものです。



さて、話は変わりますが、昨日、ニュース番組の中で、「自爆営業」の特集がありました。


「自爆営業」とは、販売ノルマを達成できない従業員が、達成できないノルマ分を自分で購入することを言うようです。

テレビでは、郵政公社の従業員(非正規雇用者も含む)に年賀状販売のノルマを課して、達成できないときには自腹購入に追い込まれているといった内容だったと思います。

また、他の民間企業でも、「自爆営業」は多いらしく、中には、携帯電話を3代も購入させられた従業員もいたようです。


ここで、「自爆営業」について、法律的にはどうなのでしょうか。


 まず、企業は、ノルマを達成できなければ、従業員に対し自腹購入を義務付ける規則を作ることはできるのでしょうか。


 企業は、従業員がノルマを達成できないときに違約金の定めをもうけたり、損害倍相を予定するような規定を儲けることはできません(労働基準法16条)


 そして、自腹購入を義務付けることは、ノルマが達成できないとき違約金の支払いを義務付けることと同じです。


 よって、自腹購入を義務付ける規則を作成することはできません。


 次に、自腹購入をしないことを理由として、不利益な取り扱いをされることは許されるのでしょうか。

 

 そもそも、労働契約上、自腹購入を義務付けることはできないので、そのことを理由に不利益取り扱いをすることはできません。(営業担当の従業員が、営業成績が低いために、評価が低くなることはあると思いますが)


 ニュースでは、解雇や雇い止めをちらつかされ、自爆営業に追い込まれているようですが、自腹購入を断ったことを直接の理由として、解雇や雇い止めをすることは許されません。


 では、実際に、購入させられてしまった従業員は、どのような対応がとれるのでしょうか。、


 まず、自腹購入(契約)の無効・取消を主張することが考えられます。


 使用者と従業員という立場を利用して、過度な購入を強要することは、労基法に反するものであり、公序良俗に反し無効になる可能性があります(民法90条)。


 また、使用者と従業員の立場を利用して過度な購入を要求することは、現在の雇用の不安定な状況等に照らすと、強迫に該当する可能性もあります。

 そして、強迫に該当する場合には、契約を取消すことが可能になります。



 とはいっても、実際問題として、勤めている企業に反抗することは、従業員の立場では難しいでしょう。企業も法律的に問題があることは認識しながら自爆営業に追い込んでいるのではないかと思います。


 最後に、企業を辞めるときに、企業に対して、パワハラ(不法行為)に基づく損害賠償請求をすることも考えられます。

 企業は、従業員の職場環境についてもしっかりと管理する義務があることから、特定の上司だけが独断で、そのような自爆営業を強要したと主張しても、責任を逃れることはできないでしょう。


 自爆営業に至る過程において、何通も誓約書等を記載させる企業もありますが、その誓約書の存在もパワハラや強迫を立証する一つの証拠になると思います。また、過度な分量、明らかに自分だけでは消費できない分量の商品を購入していること自体もパワハラを立証する有力な証拠になるのではないでしょうか。


 思いついたまま、記載したので十分な検討はしていないので、まだまだ、従業員がとるべき方法はあると思います。