1.「ネタバレがいやならみなければいい」?
もうだいぶ古くなっちゃったけど、Twitterで以下のようなやりとりがあったそうで。
乱暴に要約すると、桜井さんの
「発売日早々、最後の展開などの動画をアップする輩は滅びればいいのに、と思う。
『ゴーストトリック』など、シナリオが肝のゲームで平然とやられていることを思うと、
人ごとではなく落ち込む」
という発言に対し、いろいろ意見がよせられたあたりをまとめたものです。
上のまとめの流れの中でも、
「みたくないやつはみなければいい」というような意見が出てきています。
これは、まあ、ネタバレに対する態度としては、
昔からある一般的なスタンスだと思うんです。
ただ、このスタンスって、商業的な視点からみると、
ちょっとちがう話もあると思うんですよね。
会社サイドから見た場合、
「ネタバレされて、商品価値減ってる」んだけど、それはどうなの?っていう話です。
いえ、1ユーザーだけを対象に取るなら、
「ネタバレいやならみなきゃいいじゃん」という論法も、
十分成立するとは思うんですよ。
でも、商品をリリースした会社の立場からすると、
これは「商品の価値を傷つける行為」に他ならない。
上の発言にもあげられているとおり、ミステリーだの、RPGだのにとって、
先の展開とか、各種謎や伏線なんかは、その作品の「キモ」です。
その辺がバラされることによって「商品としての価値」が減ってる、
って見方が当然できます。
2.「だって、宣伝にもなってるじゃん」?
いやまあ、それでも、「だって、宣伝にだってなるじゃん」という声も、
よくわかるんですよ。
実際、ワタシだって、プレイ動画みてかったゲームも結構ありますし、
プレイ動画で知ったゲームだってたくさんあります。
確かに、プラスな面も多いと思うんですよ。
ホントかどうか知りませんが、YouTubeでの
アニメの無断UPも、DVDの売り上げをあげる、
なんて統計もあるそうですし。
ミステリーの「衝撃的な結末」でさえ、
それを知ってから買う人だっているでしょう。
ワタシは「アクロイド」も「オリエント急行」も、
結末を知ってから買って読みました(笑)
「プラスにもなりえる」というのは、間違いではないと思います。
でも、「プラスになるかマイナスになるか」は、かなり未知数ですよね。
ミステリーの先の展開とかは、あまりにマイナスが大きい。
「プラス部分」がどの程度期待できるのか、
「マイナス面のリスク」を負ってでもやるべき活動なのか。
本来、このあたりは、製作側がいろいろ考えてやるべき部分です。
「宣伝にもなるから」といってやってしまうのは、
このあたりのリスクマネジメントを無視して、
1投稿者が勝手に判断してしまっている、という状態でもあるわけです
3.広報活動をギャンブルにたとえてみる。
究極的にいっちゃえば、あらゆる広報活動は「ネタバレ」に通じます。
ミステリーで、本の帯さえみないようにして買う読者だっているわけです。
どこまで情報を開示し、どういう広報をするか、というものは、
製作側が考えてやっている部分です。
ミステリー系作品の広報活動ってのは、たとえていえば、
「作品の展開」っていう「商品価値」を削りながら、
「知名度」に変えていくという、そういう行為です。
ギャンブルにたとえるなら、ベットしているのは「商品価値」
得られるのは「知名度」「売り上げ」です。
このギャンブルは、従来、作品の作り手側、あるいは提供側がやっていたことで、
そこまでリスキーなものではありませんでした。
普通にやれば、あるいは、うまくいけば、
重大な謎を秘匿したまま、知名度を獲得できるギャンブルだったわけです。
そこに、かなりリスキーな方法が登場し、
勝手にその方法をとってしまう人がでてきた、というのが、現在の状況といえるでしょう。
その動画の投稿者がベットしているのは「商品の価値」です。
その結果、「作品の知名度」は得られるかもしれない。
ひょっとしたら、「売り上げ」も増えるかもしれない。
でも、それってどうなんでしょう?
本来、メーカーがもっている「商品の価値」を
勝手にバクチの種にされて、
「儲かるかもしれないからいいじゃないか」という論法、
成立していいんでしょうか?
表題の「他人のサイフでバクチを打つ」という例えは、
この状態をさしたものです。
プラスはあるかもしれません。
でも、そこに賭けているのが、他人の権利である以上、
やっぱりマズイんじゃありませんかね?
4.合否のラインを意識しよう、という当たり前の話
いや、別に、全部のプレイ動画を否定する気はないですよ(笑)。
ミステリー作品だって、RPGだって、発売から何年もたっていれば、
デメリットよりもメリットの側が勝るのも明らかだと思います。
そういうのは、ドンドンやっちゃったってかまわないと思います。
そもそも、これを全面的に否定すると、口コミすら否定しかねません(笑)
個人的には、プレイ動画や実況動画は大好きです。
もっと隆盛になってほしいし、おおいにやってほしい。
だいたいの人がOKとする線引き、ってのはあるでしょう。
それがどれぐらいなのか、ってのも「勝手な判断」にはなってしまいますけど、
実際、ほとんどのプレイ動画は、そのラインを守っていると思います。
(上のTogetterで挙げられている「暗黙の了解」とかもそうですよね)
そして、ほとんどの場合、それで問題ないはずだとおもうんです。
そして、その判断は、
対象となるゲームに、きちんと敬意をもって接していれば、
自然と判断できることじゃないのかな、と思うわけです。
きれいごとをいうようですが、私自身は、
この業界、ユーザーは作品に、メーカーはユーザーに、
それぞれ敬意をもってあたれば、
たいした問題はおきないはずだと思っています。
「発売日早々それはないだろう」ってのも、
本来、当然できる判断だと思うんですよ、ワタシは。
要するに、お互いに敬意をもってやっていきましょうや、
という、まとめてしまうときわめて単純なハナシなんですけど。