●PS2層の動きと現在
「 テイルズ オブ シンフォニア -ラタトスクの騎士- 」の売上は、
初週で15万本だったそうで。
「サードのソフトが売れない」「ゲームらしいゲーム」が売れない、といわれる
Wiiにおいてはまあ、立派な数字、といいう感じですね。
実際にサードパーティに身をおくものとして、Wii市場の今後っていうのは
いろいろと注目したい部分です。
ワタシは、いわゆる「ノンゲーム」を作ることにはあんまり興味がなくて、
(無論、仕事であればやりますし、全力を尽くしますが)
できれば「ゲームらしいゲーム」「普通のゲーム」を作り続けたい、と思ってる
立場なワケですが……そういうゲームが、Wiiでやっていけるのかどうか、
っていうのは、今現在、大きな関心をもっているポイントです。
そういう意味で、この「ラタトスク」の売上は、いろいろ複雑な意味をもっています。
数字だけみれば、サードメーカーでは歴代2位。
「Wiiでもやれる」といってもいいモノかもしれません。
前作であるGC版「シンフォニア」と比べても75%ぐらいの売上だそうで、
外伝的作品であることを考えると、かなり健闘した……といえなくもないでしょう。
しかし、これだけを見て、「よし、うちもWiiにいくか」となるには
かなり厳しいのが現実です。
なにより、気になるのは、「シンフォニア」そのものの売上です。
シンフォニアは、GCでトータル30万本、
その後PS2に移植され、こっちでも30万本ほどが売れているわけです。
GC→Wiiの比較でいうなら、上で言うとおり、立派な数字です。
ただ、逆にいうと、「この数字にとどまってしまった」ことは、
PS2からWiiに移動したユーザーがほとんど出ていない、という数字でもあります。
ネット界隈ではすでにいわれているとおりですが、
結局のところ、PS2ユーザー、PS2コミュニティといわれるプレイヤー層は、
まったくWii市場に流れてきてはいない、と判断せざるをえない材料になってしまうわけです。
あるいは、発注側がGC版の販売実績に注目しすぎて、
入荷・PRが不足した結果かもしれませんが……。
類似の、よりひどい例として、「We Love Golf!」があります。
これも、発表時には「みんなのゴルフ」との類似性で話題になったタイトルですが、
売上をみれば「比べる気にもならない」数字におわっています。
●DSのときは
DSのときの任天堂の施策を振り返ってみると、まず、
「Nintendogs」や「脳トレ」、「どうぶつの森」といったソフトで、
購買層を非常におおきく拡大した点があげられます。
いわゆる「ノンゲームの導入によって、市場を拡大した」というカタチですね。
だけど、DSのときは、その購買層の拡大によって、
DSの市場全体を活性化させることに成功したわけです。
市場の拡大が、「普通のゲーム」の売上も伸ばした、という結果です。
知育系ゲームで導入したユーザーに対しても、
「Newマリオ」「ゼルダ」など、
あるいはサードでは「FF3」「DQ4」といったソフトは受け入れられ、
DS市場においては、
「新しく増えた購買層にゲームを買わせる」ことに成功しました。
おかげで、それまで縮小気味だった市場が、DSで大きくはねあがり、
メーカーにとっては、ビジネスチャンスがぐっと増したことになります。
サードパーティとしても、市場としての注目度は非常に大きくなり、
最近のDS市場はゲームファン・非ゲームファンを問わず、
魅力的な中堅タイトルがそろっている状態になっていると感じています。
これはもう、任天堂にとってはまさに「狙いどおり」ともいうべき展開で、
DSでは、ユーザー層の拡大と、その取り込みという、
大きな課題をなしとげたことになります。
当然、任天堂は、Wiiにおいても同様の結果を期待しているところでしょう。
事実、WiiスポーツやWiiFitの投入によって、
「購買層の拡大」という部分は成功しています。
状態としては、「Newマリオが出る前のDS」というのが、今のWiiの市場状態です。
では、それらの購買層を「ゲームに引き込む」施策はどうなっているのでしょうか?
現状把握の意味もこめて、GCとWiiのゲームの売上を比較してみてみましょう。
●WiiとGCを比較すると
以下のデータは、すべてVGChatzによります。
国内のWii,GCの売上本数を参照してあります。
マリオサンシャイン/ギャラクシーが、GCで86万本、Wiiで94万本。
ゼルダの伝説が、GC(タクト)が88万本、Wii(トワプリ)が58万本(*1)。
ファイアーエムブレムは、GCで15万本、Wiiで16万本。
ペーパーマリオで、GCで45万本、Wiiで57万本。
全体的にみて、GCよりは上向きである、と言い張ることも出来るかもしれません。
しかし、ハードの普及率の違いから考えると、どれも厳しい数字、といわざるをえない状態です。
Wiiのゲームの売上は今後ハードの普及とともに伸びていくわけですが……。
でも、トップクラスのブランド・人気をもっている任天堂のソフトですらこの状態なのです。
サードのソフトを比較すれば、かなり寒い結果が待っていることになります。
「Wiiスポーツ」や「WiiFit」などで、
購買層を大幅に広げた、まではよかったのですが、
その層をゲームに向ける、という部分については、
まだまだうまくいっていない、というのが現実です。
マリオカートやメイドインワリオといった、パーティ向けの要素の強いゲームは
数字でも健闘している……といえるのですが、(マリオカート:GC版87万本、Wii版144万本)
「ゲームらしいゲーム」というくくりでみると、
スマブラでさえ、GC版138万本、Wii版が173万本とややものたりない数字です。
一見、増えているように見えるが、スマブラ64版は196万本売れたわけで、
数字的には、「ハードの売上を考えるとものたりない」感じでしょう。
マリオカートも、(コントローラ同梱の需要があったとはいえ)64版の売上に届いていないのです。
(*1)トワイライトプリンセスはGC版もあるので、数字ほど落ちてるわけではない。
●サードパーティの立場から
この状況は、サードパーティのハード選択の場としては、非常に頭が痛い状態です。
上の結果を総合してみれば、「普通のゲーム」の市場規模としては、
WiiはGCとたいして変わらない、ということになってしまいます。
その規模だと、本来なら、中心市場としてみるには厳しい、というのが事実です。
Wiiが安く作れる、といっても、それはあくまでPS3やX360と比較してのこと。
DSのようなゲームとはケタが違います。
しかし、一方で、他の据え置きゲーム市場に比べると、
「かなり安定している」「わずかながら上向きである」というのは魅力です。
他の市場がダメダメ、という話でもありますが、
現時点で、「GCと同程度は見込めて、上向き材料もある」ということであれば、
ここをねらうサードパーティも増えてくるのではないかな、と感じています。
実際、モンスターハンターや天誅4とかも出てきましたしね。
「PS2コミュニティのソフトは売れない」という事実を踏まえてでも、
いくつかのサード製ソフトがWii側に移ることも十分考えられます。
サードパーティとして見れば、現状は、
「Wiiの国内市場はGC並みで、大きくはない。
だが、費用対効果や市場規模で見れば、他のハードよりマシ、という見方も出来る。
今後サードのソフトが集まることに賭けるなら、こっちを狙う手もアリか?」
という感じですかねえ。
海外の売上が十分に見込めるソフトなら、海外での注目度を意識して
PS3,X360というのもありなんですが、国内売上が期待できないと、
そんなに予算や研究費用がつっこめない→海外ソフトに太刀打ちできない
というスパイラルも予想できるんですよねえ。
今後、「Wiiで普通のゲームは増えていくのか?」というハナシでした。
サードの立場でみると、「結構アリっぽいなあ」という感じなんですが、
どうでしょう?