前回のライフゲージに関する話の続き。

前回でいうところの「技術」の紹介になります。


まずは、下記のエントリをごらんください。

メビウスプロジェクトさまの文章です。


http://tkido.blog43.fc2.com/blog-entry-104.html


前回のエントリにおいて、

ドラゴンクエストを例外のように書いた理由が、このあたりにあります。

実際にプレイしたときの記憶を思い出してみれば

お分かりいただけるかとおもいますが、

こと通常攻撃に関する限り、ドラクエは、ダメージをかなり明確に管理しています。


上の記事にはありませんし、

厳密なルールになっているわけではない(例外が結構ある)のですが、

ボスを除く、一般のモンスターの通常攻撃は、まず、3ケタにとどきません。

こちらのHPが300を超えるような状況になる、最後のダンジョンであっても、

魔法や痛恨の一撃、特殊攻撃を除けば、ダメージは80ぐらいで止まります。


これは、「自分のHPが3ケタあれば、一撃では死なない」という保障を、

プレイヤーに与えていることになります(*1)。


ドラゴンクエストにおいてのHPの最大の役割は、「いつ回復すればいいか?」という目安です。

その管理面において、ドラゴンクエストは、上のような工夫をし、

「HPは、上1ケタを見れば、ほとんど事足りる」ようなデザインにしているのです。


また、通常攻撃のゆれ幅の少なさも、ドラゴンクエストが打ち出した特徴のひとつです。

DQの戦闘が、「ウィザードリィ」の戦闘を元にしたものであることは、

ENIX出版の「ドラゴンクエストへの道(*2)」でも明言されている通りですが、

ウィザードリィのダメージ計算は、ランダム要素がつよいものになっています。


元がテーブルトークRPGを元にしているだけあり、ウィザードリィは、

サイコロと同等のゆれ幅によってダメージや計算式を表現し、

DQに比べると、ややランダム要素が強い設計になっています。

これをよしとするか、悪いとするかはまったく別問題ですが、

「セーフティエリアがわかりにくい」ということはできるとおもいます。


ドラゴンクエストは、この点に非常につよい配慮を行い、

「プレイヤーが理不尽に感じる死」をかなり厳密に取り除いたのです(*3)。


DQは、このような工夫をして、「HP管理を容易に」しています。

設計面でこういう工夫をしていればこそ、

あえてゲージを出す必要はなくなっているのです。


そういう工夫をしているからこそ、ゲージを出す意味はなく、

むしろ出すだけ邪魔になる(*4)。

HPの%で危機を演出しない設計になっているんですね。


こういうのは、やはり、「ゲームデザインの技術」だと思うわけですよ。

このあたり、ドラクエのゲームデザインはやっぱりすごいです。

もちろん、ほかのゲームがやっていないわけではないんですけどね……。




(*1)その上で、敵の人数や特技や呪文の封印で「戦略性」を演出しているわけですな。


(*2)滝沢 ひろゆきマンガ ドラゴンクエストへの道


(*3)いや、DQ2の終盤とか、あるけどね……。あそこは、「調整できなかった」って言ってるし(笑)。

  回復魔法がほぼ失敗しないとか、僧侶系キャラのすばやさが高めとか、

  も、この辺の設計思想によりますね。


(*4)無論、ウィザードリィはゲージを出したほうがいい! という意味ではありません。

   DQが、「ゲージを出す必要のないRPG」の筆頭だ、という意味デス。