初出:2005年08月15日
この記事は、旧サイト より移動してきたものです。
引き続き、下の記事についての話。
http://blogs.yahoo.co.jp/hbikimoon/8068977.html
うちは、ゲーム系サイトであるからにして、
内容をゲームに落とし込んで話を続けていこう。
ゲームの企画書にも、
「顧客の要望」がデータとして示されることがある。
たいてい、企画書に載った
自説の正当性を示すためについてきたもので、
「この新要素は、こんなにユーザーから望まれている!
だから、次回作で実現するのだ!」
と語られるわけである。
なるほど、いかにもユーザー本位に考えているように聞こえる。
確かに、主にアンケートハガキなどから得られる情報には
貴重なものも多く、それを無視するよりは、
はるかによい動きであるといえるだろう。
しかし、現実を見てみれば、こういった論法が、
決してユーザー本位ではないこともわかる。
いったい、どんな理由で、アンケートを持ち出すのだろうか?
1つには、自説の面白さが説明しきれない場合だ。
新規のアイデアがあるが、それの説明が難しかったり、
説明しても(頭の固い)お偉方には
納得してもらえない、と考えられた場合、
「ユーザーが望んでいる」というデータを示して
納得させるわけだ。
もう1つは、純粋に良案がない場合だ。
「次回作は、**を作ろう!」という話は、
開発者といえど、そうそう自由になるところではない。
ユーザーの声、会社からの声、そういったものに
大きく影響を受けるものなのだ。
その結果として、「作りたくもない続編」を
作らざるをえないこともある。
えてして、そういうときなど、
「続編に加えるべき新要素が見つからない」場合があるのだ。
そういったとき、「ユーザーの要望でこれが多い!」とあれば、
それを追加してみるか、と安易に流れてしまったりするのだ。
さて、この2通りだが、
いずれも、「それが悪い」とは一概に言えない
ことだけは確認しておきたい。
実際、「ユーザーの要望」=「必要な機能」であることもあるし、
そうであれば、後者のように話が進むのは、まさに
望むとおりの展開だ。
前者だって、結果としてゲームが面白くなるなら、
なんの問題もない。
大事なのは、「ユーザーの意見」に逃げるな、ってことだ。
後者なら、本当にその意見を採用するべきなのか、ってことは
しっかり検討しなくちゃならないし、
そのアイデアの採用が、
本当にゲームにとっていいことなのかも
かんがえなければならない。
作っていて、アイデアに詰まったときなど、
「ユーザーの意見」はひどく魅力的に映ることがある。
だが、「ユーザーの意見に従う」と「ユーザー本位に考える」ことは
まったくの別問題なのだ。
そのことをしっかり踏まえて、
企画にのぞまなければならない。
……してみると、FF11のVerUpの方針は、実は、非常に興味深い。
容易にユーザーの声を聞き入れようとはせず、
むしろ、潜在的な需要をくみ出すようなVerUpを行うことが多い。
これは、こういった事情を見越してのことではないだろうか。