凍てつくような つめたい風のふく夜。


フランスのとある街角。


今日はクリスマスです。


もしもあなたが、


家族も 財産も 名声も 家も 仕事も


何も持っていない、


1人の老人だとします。



「たった一つ、願いを叶えるとしたら、何がいいですか?」



こんな質問を投げかけられたら、


なんと答えますか?




今日ご紹介する、クリスマスの絵本は


『魔法の夜』です。


魔法の夜 /ドミニク マルシャン


原作は、フランスの歌手、ドミニク・マルシャン。

彼がこの物語を歌にしたのは、1972年のこと。
かつて、犬をつれて南フランスを放浪していた人物のことを

モチーフに歌った、実話から生まれた物語です。




寒さで凍えそうな、クリスマスの夜。


街を歩く人たちは、


だれもが家路を急ぎます。



けれども、たった一人、


どこにも行くあてのない老人が


何かの歌をくちずさみながら歩いています。


手にはバゲットを一本、無造作に袋に入れたものを


抱えています。



↑↑歌を口ずさんだり、バゲットを小脇に抱えていたり、


フランスだな~、小粋だな~、と妙に感心。




たった一人かな?と思っていたら、


そうではありませんでした。


彼のあとを追って、


一匹の白い犬がついてきていました。



「おや、どこから きたんだい?


おまえも ひとりなのかい?」


と瞳をかがやかせる老人。



雪が降る中、もみの木の下でひとやすみ。


いっしょにパンを分け合い、


老人は犬に、クリスマスの物語をいくつか語ったり、


静かに歌をうたったりしました。




あたりは、どんどん寒くなってきて、


老人と犬は、


近くの古い小屋にかけこみ、


そこで一晩泊まることにしました。



とてもおだやかで、静かな夜。


そばにじっとすわっていた犬が、ふいに こういったのです。



「ぼくは じつは 魔法使いなのです」



「そりゃあ、ほんとうかい?」


おどろく老人。




「あなたは、ぼくのような あわれなものにも、とても親切に してくれましたね。


お礼に、あなたの 願いを かなえてあげましょう」



老人は長く考えることなく、すぐに答えました。




さあ、何を願ったのでしょう。



何も持っていない老人が、たった一つ、願ったこと。




モノにあふれ、情報にあふれ、何もかも満ちた世界に住んでいると、


いちばん大切なものを忘れそうになります。



にぎやかなクリスマスを描いた絵本とは、ちょっと対照的ですが、


深くてやさしい愛、心と心のつながりを思い出させてくれる


とてもすばらしい一冊です。