月夜のねこいち/越水 利江子

世の中に、たくさん「ネコ」が出てくる絵本はあるけれど、

この『月夜のねこいち』は、

怪しくフシギな夜を舞台に繰り広げられる、

ちょっと異色のネコ絵本かもしれません。



人はなぜ、「月」とか「夜」に惹かれるのでしょう。

ぞくっとするような夜の雰囲気と、


ネコたちがどんなふうに出てくるんだろう?と


思わず期待してしまう、すてきな表紙。


主人公は、カンタ少年と、黒猫のマァ。


カンタは、生まれたばかりの妹・ハルナのお世話ばかりしている


おかあさんに、最近イライラしています。


「ハルナなんか、だいきらい!」



その夜。カンタが黒猫のマァのあとを追っていくと、


なんとそこには、ずらりとネコたちの夜店がならんでいました。



「名物 またたび饅頭」とか


「遊んで楽しい ねずみフーセン」とか


「ツメとぎカーテン」とか。


夜店で売られている商品のネーミングも楽しい。


そんなとき、涙を結晶化させてつくられる(?!)という、


不思議なキャンディー屋さんで、


妹のハルナによく似た顔がうつっているキャンディーを見つけます。


「それはなんだっ?」


と思わず、飛び出していくカンタ。


おおっと!だめだめ!


ここは、ひみつのねこ市。 人間が来てはいけない場所なんです。


カンタめがけて、とびかかってくるネコたち。


ざらり、と足の裏をなめられると、カンタの体がどんどん小さくなっていくんです~!!



さあ、カンタの運命やいかに?


黒猫マァは助けてくれるのか?


不思議なキャンディのひみつとは?



・・・・と、スリルやサスペンス的要素も含みつつ、


でも、心がじーーんと温かくなる、


読み応えのある一冊。


きょうだいがいる人はもちろん、一人っ子だって、大人になっても、


カンタの切ない気持ちは、すごくよくわかります。よね。




「大好きだよ」って大切な人に伝える言葉、


毎日言っても言い過ぎってことはありません。


たくさんたくさん口に出して、子どもにも、大人にも伝えてほしいと思います♪