おおきな木/シェル・シルヴァスタイン


言わずと知れた、超名作です。


「ぼくを探しに・・・」などで有名な


シェル・シルヴァスタインの「おおきな木」が、


村上春樹さんの訳で再登場!!



最近、本屋さんに行くと、


絵本コーナーではなく、大人の新刊コーナーや、書店の選んだ今月の1冊!みたいな


ポップとともに平置きされているのを目にします。



作者のシェル・シルヴァスタインは、


絵本作家である前に、もともとイラストレーターとして出発し、


その後、作詞作曲、ミュージシャンなどを経て、


絵本を書くようになったそう。かなり多芸多才な方なんですね~!



気がつくと、何度も何度も、読み返してしまう、


なんとも吸引力のある、ふしぎな魅力をもった絵本です。


読むときの状況や自分の気持ちによって、


さまざまな見方が生まれるのが、楽しくて、切なくて、


ついつい、今度はどんな世界が広がるのかな?


と期待しながら、ページをめくってしまいます。



一冊のなかに込められた、少年の人生。


小さくて無邪気だった子ども時代から、


青年になり、いつしか年をとって老人になっていく。


それが、白と黒の線画のみで、表現されています。



シンプルであればあるほど、読む人は、


自分だけの創造力をふくらませ、


自分だけのストーリーを展開させていけるのでしょう。



登場するのは、おおきなりんごの木と、少年だけ。


木は、いつもいつも、少年が必要としているものを、


何の見返りも期待せず、つぎつぎに与えます。


自分が与えることで、少年がよろこぶ。


ただただ、そのことが幸せだと思う、りんごの木。



村上春樹さんの訳は、やわらかく、ていねいで、


とても穏やかなのに、いろいろな場面で、


読者の心にするどく問いかけてきます。



本を読んだあと、村上さんのあとがきに、また惹きつけられ、


うーんと考えさせられてしまう、


読後のなんとも心地よい余韻。



「あなたは木であり、また少年であるかもしれません。


あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。


それをあえて言葉にする必要もありません。


そのために物語というものがあるのです。


物語は人の心を映す自然の鏡のようなものなのです。」 (訳者あとがきより、引用)