何かに夢中になることって、素敵だけれど、なんだか切ない。
探して探して 求めて求めて 待って待って。
そうして、ただ、果てしもなく 長い時間だけが過ぎてゆく。
切なくて、悔しくて、もどかしいけれど、それが、
生きているエネルギーなのかもしれない。
このお話を読むと、そんなふうにも思えてきます。
- チョコレートをたべたさかな/みやざき ひろかず
- (BL出版)Amazon.co.jp
ページを開くと、セピア色のトーンが印象的な、
洗練されたレイアウトデザイン。
主人公は、かわいらしい表情をした魚さん。
とても平和に、穏やかに、楽しく過ごしてきた魚が、
あるとき、出会ってしまった、
とても夢中になっちゃうもの。
この絵本の感想を聞くと、
「恋に焦がれるのと似ている」と語る人が多い。
なるほど、恋って、
夢中になればなるほどつらいし、
ふりむいてもらえなければ、
ただただ、切なくて、悲しい。
私は、そこからもう一歩、踏み込んで、
生きるってことの切なさや怖さを感じてしまいます。
このままの自分じゃいやだ。もっと幸せになりたい。
だれか助けて! 早く来て!
もっともっと、こんなはずじゃないんだよー!!
なんだか、そんな心の悲鳴が聞こえてくるような。
でも、絵本を読み終えてみると、
切ない気持ちだけでなく、どこからか温かい気持ちもわいてくる。
それは、ページの全篇にわたって、
ぬくもりのある、やさしい視点で描かれているからなのだろう。
「いいんだよ。生きてるって、そういうことだよ」って、
やさしく背中を押してくれているのかもしれません。