ミリーのすてきなぼうし(きたむらさとし/BL出版)
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古来、日本には、山や木、草、石などの自然や、



長年使っている道具や家などに霊が宿るという、



「アニミズム」という考え方が息づいていました。



この世の森羅万象、万物に魂があり、


人間だけでなく、すべてのものが何らかの意識をもって存在しているというのです。



…と、ちょっと唐突なオープニングでしたが、


この「アニミズム」の考え方って、なかなかの想像力ですよね。


現代のように、便利なものに囲まれていない分、

昔の人は、かなり想像力が豊かであったと推測できます。



かくいう私も、子ども時代は、とんでもなく想像力が豊かな子でした。


いや、「豊か」というより、古来の「アニミズム」に近いぐらい、


自分だけの想像の世界をもっていました。




「世の中のいろんな場所に妖精がいる」と、信じて疑っていなかったのです。(笑)


遊びの基地だった小高い丘、ツタのからまる美術館、一面の花畑。


ヒトミに映る何もかもが、妖精たちの住む場所でした。



あるとき、「ここには妖精が住んでいる!」と


なぜか確信してしまったお宅(もちろん知らない人の家です)に、


「○○に住む、妖精さんへ」と手紙を書き、


郵便受けに投函してしまったことがあります。




子どもながらに、「さすがに返事はこないだろうな」と思っていたら、


なんと、お返事が届いたではありませんか。


それも、「お手紙ありがとう。○○の妖精より」と、

私の想像にばっちり答えてくれる内容で・・・。




うれしかったのは、言うまでもありません。


だいぶ後になって知ったのですが、その家に大学生のお姉さんがいて、

その方が、フシギな小学生の夢を壊さないようにと、

みごと妖精役を買って出てくださったとのこと。



今でも忘れられない素敵なエピソードです。


今回紹介する絵本「ミリーのすてきなぼうし」は、

今年の読書感想文コンクールの12年用課題図書の中の一冊。


あたたかくてやさしいタッチの絵がとても印象的です。




ある日、ぼうしやさんを訪れたミリー。


とても素敵なぼうしをみつけますが、お金がありません。


買えずに店を出ますが、お店で見たぼうしよりも、



とびっきり素敵なぼうしを手に入れます。


それも、一つじゃなく、いくつもいくつも・・・。


手に入れる方法は、ホントウにシンプルで、


簡単で、子どもたちが得意なこと!


そう、自分の心で想像することです。

もちろん、実際にお金を出して、


お店のぼうしを買えたら、それはやっぱり素敵なことでしょう。



でも、すぐに手に入れられなかったからこそ、

ミリーは想像力の楽しさやすばらしさを発見することができました。


ミリーを見ていると、「ここには妖精がいるよ!」といつも想像していた

小さな自分と、どうしても重なってしまうのです。