期間限定で復活した、メロキュンリターンズに恥ずかしながら参加させて頂けることになりました。
メロキュンプレゼンツ!!《ハッピー♡プレゼント!!》
蓮誕に後悔した、『ホワイトカード 』の続きになります。
拙宅の、ハッピープレゼンツをお楽しみくださいませ~
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キョーコは大きく息を吸い込んで、緊張を散らした。目の前にあるのは、蓮の家の扉。預かっているカードキィで、勝手に入っていいと言われている。
蓮の誕生日パーティで顔を合わせることが出来なかった。だから、とても久しぶりに会う事になる。
「……ふぅ……」
もう一度大きく息を吸い込んで、意を決して鍵を開けた。軽い開錠音を確認して、扉を開けた。薄暗い室内に、そろりと入り込んでまだ寝ているであろう蓮を起こさないように、足音を忍ばせて通い慣れた室内へ滑り込む。
カーテンが引かれたその部屋は暗く、まだ蓮が休んでいることを知らせてくれる。寝室の扉がしっかりと閉じられているのを確認して、リビングのカーテンを開ける。
「……とりあえず……。朝ごはんの用意、しましょう」
どうせ蓮は用意していないだろうと、食材は持ってきた。エコバックから取り出した食材。その一番奥に隠してあった小箱を冷蔵庫の中に隠す。それ以外の食材を使って、スペイン風のオムレツに、トースト。可愛いトマトを使ってグリーンサラダ。小さく鼻歌を歌いながら、包丁を軽やかに動かす。
「……本当に、こんなのでよかったのかしらね?」
ととんっ軽い包丁の音に、キョーコの疑問が混ざる。バレンタインの品は用意したけれど、誕生日プレゼントの『品』は用意していない。何にしようか悩んでいるときに、蓮から欲しいものが告げられたのだ。
「………」
その時の事を思い出して、包丁の音が乱れる。DarkMoonを撮っていた時の様に、『最上さんの時間が欲しいな』と、言われたのだ。あの時と決定的に違うのは、
「……私の気持ちね……」
美緒を演じていた時は、笑って蓮に向き合う事が出来たのに……。今のキョーコは、蓮のその言葉を自分の都合のいいように捉えてしまいそうになった。
蓮に言われた瞬間、高鳴った心臓の音。
蓮の真っ直ぐな瞳に、キョーコの脈拍は簡単に上がってしまった。瞳は勝手に潤みだしたし、指先は小さく小さく震えだしてしまう始末だった。
浮かれすぎた心が、想定外のプレゼントを贈らせてしまった。雪の上に書いた、メッセージカード。そのカードは、今頃雪に埋もれているはずだ。余計なことまで書いてしまったそれ。蓮が気付いていなければいいと願うばかりだ。
「……息抜きって、どこかに行くのかしら?」
蓮とキョーコの休みが重なる日は、今日しかなかったのだ。なんとなく、社長の裏工作も働いている気もするけれど……。深く考えずに、今日という日を一緒にいられることを享受する。
色々頭を悩ませている間に、朝食は出来上がった。皿に取り分けて、蓮が起きるのを待つことにした。朝ごはん用に落としたコーヒー。それを少しばかり分けてもらい、空の食器が並べられている席の向かいに腰を落とす。
「あんまり心臓に悪くないといいなぁ……」
あんまりドキドキさせられてしまうと、心臓が破れてしまうかもしれない。これ以上、蓮を好きになりたくない。でも、もっと蓮の事を知りたい。
そんな矛盾したことを思いながら、苦いコーヒーを啜った。
マグカップに入れたそれが半分ほどになった時、蓮が寝室から姿を見せた。
「おはよう。いい匂いだね」
寝起きのはずなのに、すでに爽やかな彼。何だか狡いなぁと、思いながらもトーストを焼きにかかる。いい匂いに焼き上がったそれを、テーブルにセットしたとき洗面所に行っていた蓮が戻ってきた。
「ありがとう」
珍しくおでこを出した姿に、ときめいて……。
真っ直ぐに見ることが出来ない。
「きょ、今日は何処に行くんですか?」
蓮の息抜きに付き合うという、あやふやな約束、キョーコは、何をすればいいのか分からない。
トーストを齧り、スペイン風オムレツを頬張る蓮。向かいに座りながら、視線をわずかにずらして問えば
「ん? どうしようか? ドライブもいいし、ショッピングもいいよね。部屋でDVDでも見る?」
「ぇ?」
何も考えてない。
そう行っているも同じの、蓮の言葉にキョーコの目が丸く見開かれる。てっきりどこか行く場所が決まっているんだとばかり思っていた。
きょとんっと小首をかしげているキョーコに、蓮は綺麗に笑った。
「最上さんと一緒なら、何処でも楽しいからいいんだ」
「……」
いつも以上に、キョーコの心を擽る言葉をくれる蓮。
どう返事を返していいのか分からないキョーコに、蓮は言葉を重ねてくる。
「一緒に料理でもしよっか? 買い物がてら映画でも行こうか?」
蓮が提案してくるのは、そんな甘いものばかり。
「だ、ダメですよぅ……。そんなの、まるでデート見たいです」
今のキョーコには耐えられないと、冗談として流してみる。
「ん? デートの心算で提案してるから、いいんだけど? 最上さんも、俺の事好きでしょ?」
さらりと言われた一言に、口に含んでいたコーヒーを零してしまう。口の端に伝ったコーヒーを、テーブルの向こうから手を伸ばした蓮がぬぐってくれた。
「な、なに……を!?」
あまりにもさらりとキョーコの心内を言い当てられて、動揺が言動の端々ににじむ。蓮はそんなキョーコを面白そうに眺めながら、携帯を取り出して一枚の写真を見せた。
「小さくて分かりにくいけど……。ここ」
蓮がキョーコの前に見せたその写真。それは、キョーコが誕生日に送った雪のバースディカードだ。
≪おたんじょうび、おめでとうございます≫の文字と共に描かれているケーキ。
蓮が指差しているのは、その一部分だ。
「ちいっちゃなハートが隠れてる」
とんとんっと、指差した先には……。
小さな小さなハートマーク。
(あぁ……。気づかれてた……)
気付かれなければいいと、願っていたそれは……。しっかりと蓮に見つかっていたらしい。
「これを見る前はどう口説こうか、色々プランを考えてたんだけどね。最上さんのハートを貰ったから、一緒に考えた方が楽しいと思って。一番最初のデート、何処に行こうか?」
もう一度伸びてきた手は、キョーコの頬に触れた。
固い蓮の指が、酷く冷たく感じられる。そんな風に感じてしまうほど、キョーコの頬は紅潮していた。
今にも涙は零れそうなほど。
跳ね上がる心臓は、口から飛び出しそう。
「み、見逃して……」
何とか絞り出して掠れた声は、
「い・や。今日はバレンタインだし。恋人記念日としては、ピッタリだしね。ずっと『口説き落とそう』って頑張ってた子が、滑り込んできたんだ。逃がすはず、ないだろ?」
冷たい蓮の指が、頬をくるくると辿って……。零れそうな涙をこらえるため、噛み締めていた唇を無理やり解いてしまう。
「か、からかって……」
「からかってなんかないよ。ずっと、ずっと。あれこれ手を尽くして待ってたんだから」
キョーコの反論はことごとく封じられてゆく。
「お付き合い記念日に、何をしようか?」
キョーコの真っ白なハートを、俺色に染めてあげる。
ちいちゃなちいちゃなそれを、もっと大きく育て上げて。
囁いてくる蓮の言葉に、キョーコはちいちゃく……。
本当に小さく、頷いたのだった。
冷蔵庫に隠したスペシャルなチョコレートの出番は、もう少し先のようだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんな出来でごめんなさい~~~| 壁 |д・)
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