期間限定で復活した、メロキュンリターンズに恥ずかしながら参加させて頂けることになりました。
メロキュンプレゼンツ!!《ハッピー♡プレゼント!!》
こちらの副題に相応しいものになっているかは、甚だ疑問ですが……。
拙宅の、ハッピープレゼンツをお楽しみくださいませ~
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蓮の誕生日当日。蓮は沢山の人に囲まれていた。代わる代わる蓮を取り囲む人々は、みんな揃って誕生日を祝ってくれた。
何故だかわからないけれど、社長主催で蓮の誕生会が開かれたのだ。
(いつもの年なら、バレンタインに夢中なはずなのに……)
沢山の人にお祝いを言われ、それに応えながら会場の端にいる社長の姿を目の端に捉える。今のブームは古代ギリシアらしく、ドレープを引き摺りながら歓談している彼の顔は、企み等とは無縁に思える。
空になったグラスを取り替えようと、周りに群がる人々に断りを入れて会場の隅に下がる。目についたきつめの酒をグラスに移していると、傍らに寄ってきたのは敏腕マネージャー。
「お疲れ様」
取り囲まれて笑顔を振りまく蓮に、労いの言葉をくれた。
「ありがたいことですよ」
祝われるのも、人が集ってくれるのも。賑わう会場を見渡した蓮。無意識に、一人の少女を探してしまう。この場所にいないというのは、分かっているのに……。もしかしたら、ほんの一瞬顔を出してくれるかもしれないと思ったのだ。
敏腕マネージャーは、そんな蓮の心を読んだようで……。
「残念だったな。キョーコちゃんたち、来れなくて……」
社も会場内を見渡して、いつも元気をくれるキョーコの姿を探す。
「天気が相手なら、勝てませんからね」
残念ではあるが、今回は相手が悪かったと眉を下げた。
「だよなぁ……。北海道ロケから、帰って来れなくなるなんて……。誰も想像してないよな」
イベントの仕事で、北海道に飛んだキョーコ。本来であれば、今日の夕方の便で帰ってくるはずが、豪雪の為飛行機が飛ばず……。もう一日、北国に強制滞在させられることになったのだ。
この時期、こういう事態は時々起る。蓮だって、体験したこともある。しょうがないと分かっているし、仕方ないと思う気持ちもしっかりとある。
「誕生日、お祝いしてもらえないの……。初めての時以来だな」
出会って最初の誕生日。DarkMoon撮影真っ只中だった、あの時来の出来事だ。社に改めて言われると、寂しい風が蓮の心に吹き荒れる。
「まぁ……しょうがないですよ……」
恋人でもないし、誕生日を祝ってくれと強請る権利も持ち合わせていない。
今年こそはと、煮え立つ気持ちを強い酒で腹の奥底に沈めた。無表情で酒を煽った蓮に、社は何の言葉も掛けずに烏龍茶を煽った。
「おう、主役がこんなところにいるな」
何とも言えない沈黙を漂わせていた二人。近づけない空気を破ったのは、古代ギリシア人に扮した社長だ。トーがを握り、昔風のグラスを掲げて蓮に乾杯を強いる。
「改めて、誕生日おめでとう!! これは、俺からのプレゼントだ!!」
懐から出した紙を、蓮の手に握らせる。誕生日プレゼントという割には、シンプルなそれ。グラスを社に預けて、くるくると巻かれていたそれをひろげた。
「………」
広げたそれは、何故か卒業証書。しかも、名前は蓮のものではない。
「渡す相手が違いませんか?」
『ラブミー部卒業証書』と、隆々とした字で書かれたそれ。『最上キョーコ殿』と書かれている以上、これを受けてるべきはキョーコのはずだ。
勝手にそれを見てしまった事に、後ろめたさを感じまたくるくると丸めて社長に突っ返した。
「まずお前に見せておこうと思ってな。これで、彼女を口説く障害はなくなっただろ?」
にやりと笑ったその顔は、どこの悪人かと言いたくなるような顔。確かに、ラブミー部を卒業した彼女は、愛を取り戻したという事で……。責める手を緩めなくていいという事で……。
ある意味、一番うれしいプレゼントかも知れなかった。
「まぁ、上手くいったら……。結婚式のプロデュースさせろ。な」
それはごめんだと思うような提案を残して、社長は人ごみの中に消えていった。
「……よかったな? って言った方がいいのか?」
「……まぁ、見守っててください」
『口説いてもいい』という、社長からの太鼓判を貰い喜んでいいのか悩んだ方がいいのか……。
少しばかり複雑なものを感じながら、再び煽った酒。強いそれが空になりかけた時、胸に仕舞っていた携帯が震えた。
プライベートのそれ。番号を知っているものは、ほとんどいないはず。
まさかね、と淡い期待を抱きながら、取り出したそれ。着信ではなく、メールの受信をちかちかと告げていた。
差出人は、今話題に上っていた少女から。
少し急く気持ちを指に乗せて、メールを開くと
『お誕生日おめでとうございます』
そんなタイトルが、まず目に飛び込んできた。
『改めて、お誕生日おめでとうございます。とっても素敵なパーティなんでしょうね!! 私も参加したかったです』
彼女らしい素直な言葉。目で追うだけで、顔が綻んでくる。
『プレゼントを当日に渡せないのって、DarkMoon以来ですね。なんだか懐かしいです。あの時とはちょっと違いますが、東京に帰ったらプレゼント届けに伺わせていただきますね。……本当に、あんなのでいいんでしょうか? 後悔していたら、今からでも遅くありません。教えてくださいね』
「……後悔なんかしてないのに……」
独り言は小さすぎて、社の耳にも届かなかったらしい。
『こちらはとっても寒いです。こんな沢山の雪、見たの初めてなので、はしゃいじゃいました』
添付されていた写真。雪像や雪山。雪の上で大の字になっているキョーコの姿、なんてのもある。
数枚付いていたそれの、一番最後に……
≪おたんじょうび、おめでとうございます≫
真っ白な雪に、丸い文字で描かれた祝いの言葉。小さなケーキも、雪の上に描かれていた。端に写りこんでいるのは、ブーツのつま先。ブルーのスエードのそれは、蓮がプレゼントしたものだ。
キョーコが柔らかな雪に、指で綴った特別なメッセージカード。
降り積もる雪で、すぐに消えてしまうだろう、儚いそれ。
柔らかな新雪に描かれたそれは、時折キョーコが蓮にくれる淡い期待のようだ。
「なんだか意味深だね」
柔らかいそれを、固めてもいいのだろうか?
ほんの少しの迷いを、メールに乗せて遠い北国にいる彼女に送った。
「後悔なんかしてない。欲しいものは、最上さんだけだからね」
囁く声こそキョーコに届かないが、その気配だけでも届けばいいと願いながら……。
誕生日プレゼントに託けて、バレンタイン当日を拘束した蓮。
あと数日に迫ったその日に心を馳せ、もう少しでお開きの気配を見せているパーティに意識を切り替えたのだった。
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そんな感じで、バレンタインに続きます~
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