『「リク魔人」の妄想宝物庫
』のseiさんよりお預かりした、罠お題です。
長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。
魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~
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「はぅ…んっ…」
覆いかぶさっていた蓮の体は、しだに凭れ掛ってきて。押されたキョーコの体は押し倒される形で蓮の下に敷き込まれてしまった
引っ掻いて抗って辞めて離してと訴えていた手は、いつの間にか握りしめられて床に縫いとめられた。
「ぁぅ…」
キョーコの唇に噛みついてきた蓮の唇は、離れる事はなく踏み荒らす。
柔らかく擽って、固く抉ってくる舌。
逃げれば追いかけて、留まればねっとりと慰撫される。
その動きに翻弄されて、飲み込まれて、頭の芯が痺れてくる。
伸し掛かってくる重みと。
押し付けられた唇の熱さ。
それが、キョーコの凍りついた心にひびを入れた。
「やぁ…」
息継ぎの間に漏らした声は、吸われ過ぎて痺れた舌の所為で呂律が妖しい。
甘ったれた様な媚びているような声が、自分と蓮の僅かな隙間に溢れて居た堪れなくなる。
上から強く射抜いてくる瞳からも逃れたくて、顎を左に動かすと蓮の方に向いた耳に唇が覆いかぶさってきた。
「ひゃぁ…」
鼓膜を擽る吐息に、肩をすくめても顔を捩っても今度はそこから離れてくれない。
「…落ち着いた?」
蓮の声もどこか歪んでいるのは、キョーコと同じ理由からだろう。
キョーコが何も答えずにいると、耳たぶをしゃぶられた。
普段意識しないそこから、押し寄せる波にキョーコの体が跳ねる。
「ねぇ、落ち着いた?」
「お、落ち着けるわけ…!!」
こんなに密着されて、こんなに翻弄されて。
人並み以上に免疫のないキョーコが、落ち着いて入られるはずがない。
ばくばくなる心臓と、どくどくなるこめかみ。
絡まり合っている指先と、縺れている足。
ぴったりと重なり合っている体。
改めて意識してしまい、頭が沸騰する。
先ほどとは違う意味合いで、ひんひん泣き出したキョーコ。
「そっちの方が、君らしいよ」
獰猛な気配を消した顔で、キョーコに笑いかけながら蓮は身を起こした。
二人の間に空いた隙間に、風が流れ込んで。
そのひんやりとした風に、二人の体温が如何に高くなっていたのかを知ることが出来きた。
繋がったままの手を引かれて、キョーコの体も起き上がる。
こんどははっきりと見ることが出来た、茶色のシミ。
真っ白な其処に広がった、歪な模様にキョーコは眉を顰めた。
短い間に色々な感情を駆け抜けたキョーコの頭は、飽和状態で分かりやすい事実に逃げたのだ。
「俺がクリーニングに出すよ。壊したテーブルも、社長に言うから。ちゃんと俺と向き合って」
「…話すことなんて…」
キョーコが渋ると、蓮は痛い位に手を握りこんできた。
膝が触れ合う距離で、向かい合って。
真摯に言葉を発する蓮と、向き合う。
「俺の聞き間違いじゃなかったら、『好き』でいてくれるんだよね?」
「………」
「俺も君の事が好きです。愛してる。だから、お付き合いしてください」
真摯な言葉に、キョーコの体は竦むがもう泣き叫んだりしない。
静かに蓮の言葉に耳を傾けている。
「俺の言葉と配慮が足りなくて、不安がらせてごめん。俺が弱気になったばっかりに…。無理して恋人なんか作らなくていいんだ。好きでもない人と付き合って、自分を安売りしないで」
「………ショーちゃんに捨てられたとき、見返してやるって思えたの。でも、敦賀さんに見放された時は、そう思えなかった…。どんなことでもして、傍に居たいって。何をしたら傍に居られるだろうって、すっごく考えたの。女優だし、演技で乗り越えれば何とかなるだろうって…」
ぽつぽつと話し出したキョーコに、蓮は静かに耳を傾けてくれる。
「嫌われたり、捨てられたりするくらいなら…。そっちの方がずっと良かった…」
「そんな事できるわけないよ。ずっと自分を騙すなんて、無理だから」
「うん…。無理だったの…。怖かったし、気持ち悪かった…」
「好きな君が一人だと、俺はいろいろ不安になる。付きまとわれてないかとか…。絡まれてないかとか」
「…」
「俺をそんな不安から、開放してください。そして、君を守らせてくれ。付きまとう全てのものから、守らせてくれ」
「…また、捨てられたら…」
もう立ち直れない、というキョーコの言葉は宙に溶けた。
「そんなことは絶対にないから、大丈夫。俺の方こそ、捨てられないように頑張らないと…」
そんな蓮の言葉に、強張っていたキョーコの顔が少し綻んだ。
「キョーコちゃん、いっぱい泣かせた分大事にします。俺の全てで、君を守ります。どうか、お付き合いしてください」
きゅっと握りしめられた、手。
キョーコもそれを握り返して…。
「よろしくお願いします」
そう、挨拶を返した。
この日から、二人の関係は『先輩後輩』から『恋人』になったのだ。
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