でろ甘いお話が読みた~いと、ごねごねしていたところ…。
こぶたのヒトリゴト。 のマックちゃんさんが、書いてくださいましたww
フリーという事で、ありがたく頂戴し拙宅に飾らせていただきました
めろめろで甘いお話の感想は、ステキマスタ様のお宅にお願いしますね★
素敵すぎるマスタ様なので、皆様ご存知かと思いますが…。
マックちゃんさんのお宅はコチラです。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆青い桜に見守られて。゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
深みを増す秋夜の風は、昼間の熱を急速に奪う風。
薄いコートの裾から入り込んできて、ストッキングを履いたキョーコの脚から、コクーンワンピースに包まれた身体から。
少しずつ、だけど確実に熱を奪っていく。
しかし繋いだ掌は蓮の熱を伝えてきて、キョーコの心臓を強く拍動させる。
手の温度と身体の温度の差が激しい…
その差にキョーコは小さく身震いをした。
「最上さん、大丈夫?寒い…?」
繋いだ手から震えが伝わったのだろうか、蓮が下を向いていたキョーコの顔を覗き込んだ。
「いえ、大丈夫です。」
蓮の綺麗な瞳に自分の気持ちまで覗きこまれるような気がして、思わず繋いだ手にきゅ・・と力が入る。
「そう?ならいいんだけど…目的地までもう少しだから、もうちょっと下を向いててね?」
こくんと小さく頷くのを確認すると、蓮は手を繋いだまま再び歩き始めた。
俯いたままのキョーコの歩調に合わせるように、ゆっくりと進む。
この蓮の気遣いが、キョーコは嬉しくて恥ずかしくて。
ささやかなこの時間が永遠に続けばいいのに…と願ってしまう。
蓮から突然デートに誘われたのは本日夕方の話。
ラブミー部室へいきなり押しかけてきたと思ったら、さっと腰を攫われてそのまま連れ去られた。
『いつものお礼を兼ねたデートだから、そんなに固くならないで?』
そう言われるものの、連れて行かれる先はアルマンディのブティックだったり、古い洋館の豪華なレストランだったり。
何より蓮の発した『デート』という一言に、キョーコはカチコチに固まってしまった。
蓮が見立てた、シンプルだけど可愛い色合いのワンピースも、蓮が予約してくれたお洒落なフレンチのコースも。
もちろんキョーコの好みドストライクなのだが。
だけどそれ以上に、自分に向けられる柔らかい蓮の微笑みがキョーコの胸を熱くさせる。
(そんな事されたら…勘違いしちゃう)
自分はもう二度と、恋とか愛とか言う愚かな気持ちは抱きたくないのに…
蓮により勝手に引き出され、溢れてしまいそうな気持ちにキョーコは戸惑っていた。
「はい、着いたよ。もう顔上げていいよ?」
思考の小部屋へと籠っていたキョーコは、蓮の言葉にハッと引き戻されて前を向いた。
するとキョーコの目に飛び込んできたのは、桜の名所として有名な公園のメインストリートが青い桜に包まれている姿だった。
「ええ…!?なんで…?」
その幻想的な情景に、キョーコは思わず目を奪われる。
よくよく見てみると、それは桜の葉が青白い外灯に照らされて青く見えているのだが…
満開の桜の花に見えるのだ。
「桜の葉が色づいて枯れてしまうと、花のようには見えないんだって。だから今の時期だけの魔法だよ?」
「魔法…本当ですね…」
淡く光る青い桜は、青い薔薇の代名詞のように思えて。
キョーコは自分の恋心まで叶うようなそんな気がして、ほわんと心が軽くなった。
「どう?気に入ってくれた?」
「はい…」
「良かった、これが見せたくて今日誘ったんだ。」
にっこりと笑いかけてくれる蓮に、キョーコの頬は熱くなる。
それが恥ずかしくて知られたくなくて、キョーコは下を向いた。
ふと、まだ繋いだままの手に目がいく。
「あ…あの、手…もういいですよね?」
『いいと言うまで下を向いていてね?あ、危ないから手を繋いでいこうか。』
そう言われて公園の入り口で繋いだ手。
もう目的地には着いたのだから、離していいはず。
その温もりが離れてしまう事を寂しく思いつつも、これ以上は自分の心臓と気持ちがもちそうにない…と感じ、キョーコは手を自分の方へと引き寄せようとした。
「ううん、まだダメ。」
しかし、逆に手を引っ張られ、バランスを崩したキョーコは蓮の腕の中に倒れこんだ。
「や、つるがさ…誰かに見られたら」
「大丈夫。この時期は誰も人は来ないんだよ。」
「でもっ」
慌てて離れようとキョーコは腕を突っ張るけれど、蓮の力にかなうわけもなく。
蓮の抱きしめる力はますます強くなり、キョーコは身動きが取れなくなってしまった。
「うん…あったかいね、最上さんとこうすると。」
「何ですか、それは…離してください、誰にでもこういうことしちゃいけないんですよ。」
言葉とはうらはらに、キョーコの手は蓮のジャケットをきゅ、と掴む。
(あたたかい……)
蓮の体温に、蓮のフレグランスの香りに心地よさを感じているのは、キョーコも同じだった。
これ以上そばにいたら離れられなくなる。
でもそばにいたい。離されたくない。
自分の心なのにいろんな感情が入り乱れてぐちゃぐちゃで…落ち着かないキョーコの心を感じ取った蓮は先の言葉に対しはぁ、とため息を吐いた。
「あのねえ最上さん…俺、前にも言わなかったっけ。『誰にでもするわけじゃないよ』って…」
「敦賀さんのその言葉は信じられません。」
―――そう、だって敦賀さんはお子ちゃまな私には手を出さないって言ったもん。
あの一言が、いまだキョーコの心を締め付ける。
私は結局敦賀さんにとっての《対象外》なんだと、キョーコが少し落ち込み始めた時。
つむじに蓮の唇がふわりと落とされた。
ちゅ・・と秘やかなリップ音が、蓮の唇から紡がれる。
「…っ!?」
「どうしたら最上さんに信じてもらえる?どうしたら伝わる?俺の気持ち…」
切ない声音に顔を上げれば、真剣な眼差しを向ける蓮の顔がすぐそばにあった。
青い桜と外灯を背後にしている蓮の表情はよくわからない。
だけどかすかに艶を帯びた瞳に射抜かれている事を感じ、キョーコの体はかぁっと熱を上げた。
「わ…私はもう、恋なんてしないんです。これ以上そんな愚かな事で傷ついてる暇があったら、私はもっとお芝居に打ち込んで立派な俳優になりたい…」
「愚かなの?俺が君に抱いてるこの気持ちも?」
「それはっ…!」
『敦賀さんの気持ちが愚かなわけがない』
そう言いたいのはやまやまだけど、蓮の想い人は自分…
今聞いた言葉が間違いでなければそう言う事になる、その事実が言葉を先へと続けさせない。
「最上さんを好きになる事が愚かになる事なら、俺は喜んで愚か者になるよ。俺は最上さんしかいらない。最上さんしか好きになれないから。」
「…なんてことを言うんですか。私が敦賀さんを傷つける事だってあるかもしれないんですよ?」
「最上さんに傷つけられるなら本望だね。だからお願い、俺を男として見て?俺を好きになって…?」
普通の人が言うと気障すぎて様にならない台詞も、『敦賀蓮』が言うと恐ろしいほど艶を纏った魅力的な言葉になる。
その言葉の魔力に、キョーコの心を縛っていた見えない『怯え』は吹き飛ばされていった。
「わ…たしは傷つけません。好きなのに傷つけるとか、そんなの嫌です…」
「そう?俺は最上さんにつけられる傷ならどんなものでも嬉しいよ?」
甘く甘く紡がれる言葉は、どこまでもキョーコの心に沁みこんで染み渡る。
まだ上げたままのキョーコの顔に、蓮は次々唇を落としていった。
額に、鼻頭に、瞼に、頬に………
ふわりと落され、つう、と滑らされるその感覚がくすぐったくて。
そして体の奥から感じたことのない何かを引き出され、キョーコはぞくりと震えた。
「だからお願い、今すぐ俺の恋人になって?この唇に触れる権利を俺にくれる?」
いつかのように、蓮の指先がキョーコの唇をつい…となぞる。
その妖艶なしぐさにキョーコはくらりと眩暈を起こしそうになった。
言葉にするのは恥ずかしい…
返事の代わりにこくんとひとつ小さく頷くと、蓮はふわりと神々しい笑みを浮かべ、そっと『好きだよ…』と囁いた。
新しく恋人になった二人の口付けをそっと見守るのは、青い桜と雲一つない瑠璃色の空。
淡く幻想的な情景に、二人はそのまま溶け込んでいった。
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