傘の間 | 妄想★village跡地

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めろきゅん企画の『傘の距離』 の蓮様サイドのお話デス。


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テレビ局から貸し出された、市販されているのより大きめなビニール傘。

そこに雨粒がバチバチと当たって、恋しい少女の姿が滲んで見えるのが残念だ。


(折角二人っきりなのにね)


このドラマが始まって、キョーコは目に見えて元気がない。

役柄の所為か、それ以外の何かがあるのか。

蓮にはわからない。

けれど、なんとなく避けられているのは分かったので。


(無理やりついてきて、正解…かな?)


時折、はぁっと言うため息が雨音に交じるのが聞こえる。

気がかりなことは何なのか、自分では相談に乗れないのか。

掛けたい言葉はいっぱいあるけれど。


(万が一、恋愛相談とかされたら…暫く立ち直れないぞ…? 俺…)


ここ数年、益々きれいになったキョーコ。

テレビへの露出も増えて、雑誌等で特集を組まれることも増えてきた。

蓮の所への差し入れも、めっきり減ってしまって…。


(寂しい…んだよね…)


蓮のそんな思いを気づいているのか、いないのか。

キョーコは足元ばかりを睨みつけ、視線すら絡まない。


「あめ、酷いね」


それも、寂しくて…。

無難なところで、会話の接穂を作る。


「・・・ですね・・・・」


ざぁざぁと、打ち付ける雨にも負けず。

キョーコの声は、蓮の耳に真っ直ぐ届く。


「外ロケじゃなくてよかったね」


「ですね」


会話はやっぱり途切れがちで…。


(まさか!! 俺の思いがばれたんじゃぁ…)


恋愛を拒絶しているキョーコに、蓮の気持ちが伝わってしまいそれで避けられているのかもしれない。

最悪の想像に、すぅっと背筋が凍る。


「はぁ…」


再び、空気に交じったため息。


(嫌われてるのか…? だから最近、笑いかけてくれないのか?)


否定したいけれど、好かれている自信がない。

心配で付いてきたけれど、まさか自分の心が凹むとは思わなかった。

その傷ついた心を、必死に隠して。


「足元、気を付けて」


大きな水たまりを見つけては、キョーコに注意を促して手を差し伸べる。

伸ばした腕が、緊張で湿っていて。

触れ合った指先が、小さく震えていたのにキョーコは気づいただろうか。


(っ!! 嫌われて…ないんだよな…)


きゅっと、慎ましく握り返された手。おずおずと、伸ばされたそれに。自分の気持ちは伝わっていないのだと、確信する。キョーコが知っていたら、蓮に触れようなんて思わないだろうから。

確認できたその事実と、その感触に叫び出しそうになる。


傘の間。

ほんの少しだけ野ざらしになった部分に、水滴がはぜる。

その冷たさに、互いの手が如何に熱かったのかを思い知る。


(大好きだよ…)


触れ合ったそこから、自分の気持ちが伝わればいいと。

先ほどと、矛盾することを願いながら。

小さな手を握りしめて。

一度知った温もりを、離せない。


「最上さん、こっちおいで」


繋いだ手をそのまま引き、道路側に立っていたキョーコの体が蓮と入れ替わる。


「駄目です!! 水跳ねとかしたら大変!!」


入れ替わった立ち位置に、キョーコは慌てて道路側に戻ろうとするけれど。

今度は肩を抱いて、入れ替わろうと動いたキョーコの抱きしめる。

傘がぶつかって、キョーコのそれが大きく傾いだ。

キョーコの細い体は、蓮の腕と傘で守られているような状態。


(うん。こういうの、いいな)


理想の体制に、とろっと蓮の瞳が溶ける。

そして、その眼差しを真っ直ぐにキョーコに注ぐ。


「うん、そうだね。でも、最上さん女の子でしょう? 女の子が泥にまみれる姿を見たくないな」


「でも、後輩で!!」


傾いだキョーコの傘が、蓮の肩を濡らしてゆくけれど。

そんな冷たさは、気にならない。

腕の中にある、温もりだけが蓮の全てだ。


「先輩後輩以前に、性別が違うんだから。守らせてよ」


本音がダダ漏れの、この言葉に。

久しぶりに絡み合った、キョーコの視線がふわっと揺らいで。

腕の中に抱き込んだ細い体の、温度が上がったのが分かる。


(伝われ…。君の心に、沁み込んで…。消えない跡を残してくれ…)


そう、念じながら。


「さ、皆待ってる。少しペース上げよう?」


「はい・・・」


肩を抱きしめたまま、世界の全てからキョーコを守る様に。

歩き出す。


(伝わって…。思い知って…。俺の気持ち…)


オオカミの腕の中に居ることを、理解して…。

そう念じながら、撮影所までの道を歩く。


(大好きだよ…。いや。愛してるよ。キョーコちゃん)


そう念じながら、キョーコの肩を抱くその蓮の顔はちょっとだけ晴れやかになっていた。


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め、めろきゅんって何!?


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