傘の距離 | 妄想★village跡地

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初めてかもしれない・・・。

めろきゅんのお題企画。

思いついたので、形にしてみましたww


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正にバケツをひっくり返した様な雨が、地面を打つ。

滝のように流れるそれの中を歩きながら、キョーコは雨音の中にため息を紛れ込ませる。


(もぅ・・・逃げてきた意味、無いじゃない・・・)


ため息をつき、傘の内側からそろそろと左側へ視線を動かす。

視界の大半をかさに覆われたそこに立っているのは、思い人たる敦賀蓮の姿。


(何でついてきたのかしら・・・)


一緒にドラマの撮影をしているキョーコと蓮は、海岸に立つTV局本社を出て少し離れたところに立つ、大型セットが組める撮影スタジオに向かう途中。

本社からそのスタジオまでは、マイクロバスも出ていて共演者・スタッフの殆どはそれに乗って移動してしまった。

当然キョーコも乗るよう指示されたけれど、蓮と一緒に居たくない気分だったキョーコはそれを辞退して。

なんのかんのと言い逃れて、徒歩でスタジオに向かうことにしたのだ。

歩いても、10分程度の距離。

大雨の中歩くのはちょっと骨だけれど、水たまりを避けて歩くことに集中できて、気晴らしに丁度いいかと思ったのに・・・。


(本当に・・・、いじめっ子だわ・・・)


キョーコと並んで歩く、恋しい人。

キョーコがバスに乗らなかったら、何故か蓮も一緒に歩くと言い出して。

何故か、並んで歩くはめになったのだ。


「あめ、酷いね」


ざぁざぁ、すごい音を立てる雨音にも負けず。

滑らかで耳触りのいい蓮の声は、真っ直ぐにキョーコの耳に届く。


「・・・ですね・・・・」


その声を聴くだけで、恋することを思い出したキョーコの心はときめいて高鳴る。

『好き』の気持ちが溢れだして、蓮の方に襲い掛かりそうな気持ちになる。


「外ロケじゃなくてよかったね」


「ですね」


雨音の中に紛れる、会話。

途切れがちになるのは、雨音の所為かキョーコの所為か。


(このドラマ、受けるんじゃなかったわ・・・)


クーが聞いたら、激怒しそうなことを心の中に浮かべて。

再び溜息。


このドラマの仕事を貰った時は、物凄く嬉しかった。

久々に蓮と共演できたし、百瀬さんとも再会できた。

あのメンバーでまた演技ができるのが、嬉しくて。楽しくて。

最初はそれだけで、よかったのに・・・


(どんどん欲張りになるんだもの・・・・私・・・)


キョーコの役どころは、蓮に恋している少女の役。

蓮演じるちょっと『ダメ男』要素がある男に、気に入られたくて何でもしてしまう役だ。

貢いだり、持ち上げたり。

尽くしながらも、蓮に利用されて終わる、少女の役。


蓮の役どころは、キョーコの様な自分に恋する女性を弄びながら、自分の本命に向かって真っすぐにアタックしてゆく男。


(最初は、ただ演技見てるだけでよかったのに・・・・)


ちらっと、蓮を伺い。

止まらないため息。


今のキョーコの役どころは、尚に恋していたダメな時を思い出す。

そして、勘違いしてしまう。

役ではなく、本当に蓮に弄ばれているんじゃないかと・・・。

蓮の思い人役の女優さんに、熱烈にアタックしてゆくそれを見ていると、猛烈に悲しくなるのだ。


「足元、気を付けて」


大きな水たまりを見つけては、キョーコに注意を促して手を差し伸べてくれる。

小さく触れ合った指先から、思いが伝わらないかとびくびくして。

でも、触れ合えた温もりが嬉しくて。


「ありがとう、ございます・・・」


そろそろと手を伸ばして、握り返されて。


(はわ・・・・)


傘の隙間から、手にかかった雨。

その冷たさが、重なり合った手の熱さを実感させる。


「最上さん、こっちおいで」


繋いだ手をそのまま引かれて、道路側に立っていたキョーコの体が蓮と入れ替わる。


「駄目です!! 水跳ねとかしたら大変!!」


入れ替わった立ち位置に、キョーコは慌てて道路側に戻ろうとするけれど。

今度は肩を抱かれ、入れ替わろうと動いた体を止められる。

傘がぶつかって、キョーコのそれが大きく傾ぐ。

キョーコの細い体は、蓮の腕と傘で守られているような状態で。

真っ直ぐに注がれる、蓮の眼差し。


「うん、そうだね。でも、最上さん女の子でしょう? 女の子が泥にまみれる姿を見たくないな」


「でも、後輩で!!」


傾いだキョーコの傘が、蓮の肩を汚してゆく。


「先輩後輩以前に、性別が違うんだから。守らせてよ」


とろりと、甘いその言葉に。


(うわっ・・・!!)


射抜かれる、キョーコの心。

役の所為でざわめいていた心は、違う意味でざわめき出す。


(こ、こんな風に接してくれるって事は・・・、嫌われていないのよね・・・。うん。きっとそうよ・・・。好かれていないかもしれないけど・・・、嫌われてはいないはず!!)


レディファーストとは、また違う・・・。

甘やかしてくれる、腕と温もり。

肩を抱かれて。

一つの傘に入って。

交わり合う温もりに、キョーコの意識が奪われる。


「さ、皆待ってる。少しペース上げよう?」


「はい・・・」


肩を抱かれたまま、蓮は再び歩き出す。

雨からも泥からも、キョーコを守る様に。

しっかりと抱きしめて。


(しんぞう、やぶけちゃう・・・)


高鳴る心臓の音。

自覚した恋心は、どんどん膨らむ一方で。

伝わって欲しいけど、伝わって欲しくない。

そんな複雑な気持ちを、傘の内側に閉じ込めて。

雨の中じっとりと湿って、めげていたキョーコの心。


ちょっぴり凹んでいたキョーコの心は、思い人の手によってふっくらと復活したのだ。



(いつか、告白できるといいな・・・)


雨の後のかかる虹のように、キョーコの心にはそんな希望が生まれてた。


(うん、いつか・・・、きっと・・・)


右側にある、大好きな人を盗み見て。

キョーコの顔は、本局を出た時とは違い晴れやかな顔になっていた。



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め、めろきゅん・・・?



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