いっぽ | 妄想★village跡地

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アメンバ様100人突破記念祭、リクエスト第2弾は
sei様より キョーコちゃんが、「勝手にキッチリ失恋気分。恋心よ、さようなら」「恋愛感情は否定しなくなったので次の恋へ走れるなら走りたい」「そんな時に好青年の相手役(見た目は宗像;クレパラ参照)に出会い、その人柄の良さや、やさしさに癒やされちゃったら?」
必死になる蓮くんと、キッチリ諦めてある意味スッキリしちゃたキョーコちゃん。(こういう切り替えは女性のが早い)
ヘタレ似非紳士は、キョーコの蓮への恋心を取り戻せるのか。


と頂きました。
sei様に捧げます

オリジナルキャラがいますので、苦手な方はご注意ください


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あの夜、告白されたのが夢じゃないかと思うほど、ハルの態度は変わらない。


「キョーコちゃん、大事な任務を与える!!」


焚火にあたって、出番を待っていたキョーコの元にやってきたハル。

撮影の合間を縫って、こっそり囁いたかと思えば。

手渡されたのはいくつかの石炭。


「小屋の倉庫で見つけたんだ。二つ。おんなじ位の大きさの、かっこいいの選んでおいてね」


それだけを言って、またどこかへ走って行ってしまう。


「ハルちゃん、子供みたいだよね」


そういって、苦笑いするのはリツさん。

山岳救助隊の役を演じている、ベテラン俳優だ。


「そうですね。子供・・・っていうか、子犬みたいですよね」


「ははっ、そうかも。キョーコちゃんにぶんぶん尻尾を振ってる駄犬候補だ」


「リツさんっ!?」


「あいつ、分かりやすいから。いい奴だよ? いい芝居するし」


確かに、ハルと演技をするのは楽しい。

真剣を切り結ぶような、緊張感と高揚感が常にキョーコの中に湧き上がる。


「・・・いい人なのはわかってるんですけど・・・」


「他に好きな人がいる?」


「『いた』が正解ですね。失恋しちゃったんですよ? 私」


「お、じゃぁハルはチャンスな訳だ。傷心を癒すには、新しい恋が効果的だよ?」


にや、笑う年上の俳優の顔は、


「なんだか・・・・極悪詐欺師みたいな顔になってますよ? リツさん」


「酷いな。昔はモテたんだよ? あ、ハルが嫌ならオジサンと付き合おうか?」


「ふふっ。その時はお願いしますね」


「考えておいてよ、じゃ」


リツは、監督に呼ばれ焚火のそばを離れてゆく。

残されたキョーコは、ぱちぱちと爆ぜる火に手をかざし暖をとる。


(不思議。ここに来る前はあんなに苦しかったのに・・・)


蓮の熱愛報道。

再び失恋を味わった心はちりじりになって、苦しくて気持ち悪くて。

会うことも、連絡を取ることも出来なかったのに。


(今は、こんなにも穏やかな気持ちで失恋の事話せてる)


ハルの所為か?

蓮と離れていたせいか?


(社長もよかったねって言ってくれたっけ・・・。さすが、愛の使者よね)


この撮影に出る直前、挨拶に行ったところ社長がひどく驚いた顔をしたのだ。

そして一言。


『取り戻したのか・・・』


何をとも、何がとも言わない。

それだけで十分だった。


『はい』


『そうか!! じゃぁ撮影が終わったら、盛大に卒業式だなっ!!』


ただそれだけの会話。

その時のキョーコは、それ以上の事を話せなかったのだ。


(それなのに・・・・)


失恋を口にすることに抵抗がない。

受け止められてる。


(早く敦賀さんに会わなきゃ・・・)


伝えなければならないことがいっぱいある。

感謝を。

好きだったことも、今なら伝えたい。


そうしてちゃんと向き合った後、ハルに向き合おう。

今すべきは、このお話をより完成度の高いものにしてゆくこと。

決めて、台本を開く。

全て暗記しているけれど、何度も読み返すと新たな発見がある。


『ゆり』になり切る為、意識を台本の間に滑り込ませようとしたら・・・


「キョーコちゃん!! 任務終了!?」


遠くから、ハルが駆け寄ってきた。


「あ・・・・」


リツと話をしていて、すっかり忘れていた。渡された石炭は、キョーコの膝に乗ったまま。


「ごめんなさい・・・。これからなんです」


慌てて、渡された石炭をより分ける。


「でも、これ。なんに使うんですか?」


「目玉」


「めだま?」


「そう。雪だるま作るんだ。その目玉、キョーコに選んでもらおうと思って」


「楽しそうですね」


「うん。楽しいよ? どうせなら、キョーコちゃんが目玉入れてよ」


「え? 今から?」


「そ。今から。いこ!!」


あの日の様るのように、腕をひかれ小屋の陰に引っ張って行かれる。

そこにあったのは、キョーコの腰のあたりまである大きな雪だるま。

にんじんの鼻とぎゅっと引かれた線の口。

あとは石炭をはめ込めば完成だ。


「結構おっきいの作ったんですね」


「頑張っちゃった」


にこにこ笑う、その笑顔にキョーコもつられて楽しくなる。


「この子、男の子ですか? それとも女の子?」


「・・・・女の子かな?」


「じゃぁ、こんな感じかな」


丸っこいそれを、ぐりぐりと埋め込む。


「で、こう」


残った石炭で、目の上を削りまつ毛を作る。


「ほら、可愛くなった」


「ほんとだ・・・」


丸い石炭が、垂目っぽくついて。刻まれたまつ毛が女の子らしさを演出いている。


「・・・・・・・・・・・・・・・キョーコちゃんと、初めての共同作業だね」


なんか照れるな・・・


そういったハルに、


「それは、この映画でしょ?」


「えー、それならリツさんとか監督とかも入っちゃうよ?」


「皆との共同作業ですね」


キョーコがそういうと、ハルはちょっと寂しそうに口を尖らせた。


「今は、それでもいいか。あとちょっとだね。撮影」


「そうですね。あ、連絡先教えてくださいね。全部終わったら、お食事でも行きませんか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・デートのお誘い?」


「・・・・に、なるといいですね」