「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」~愛情、独占欲、嫉妬 | ネコ人間のつぶやき

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 今回は「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」(2001年)を。


 スポーツ記者のイヴァン(イヴァン・アタル)の妻は超有名女優のシャルロット(シャルロット・ゲンズブール)。


 夫婦でパリの街に出れば、妻がサイン責めにあい、中々ゆっくりもできない。


 「女優が妻だと大変だろう?キスシーンとかラブシーン観てどう思うんだ?」などとぶしつけに話しかけられたり、イヴァンが電話して予約が取れないレストランも、妻に代わると予約が取れる、なんて当たり前。


 ある日、シャルロットは映画の撮影でロンドンに行くことになりますが、相手役がすぐに女性に手を出すことで有名な俳優ジョン(テレンス・スタンプ)と知ったイヴァンは・・・。


本人役で主演したシャルロット・ゲンズブール。
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"Charlotte Gainsbourg" Photo by Brian Johnson

source: https://flic.kr/p/aRFCpD


 妻のシャルロットは本人役で出演しているあのシャルロット・ゲンズブール。


 彼女は、父親がセルジュ・ゲンズブール、母親はジェーン・バーキンというサラブレッドで、シャルロット自身も有名な女優・歌手ですから、夫のイヴァンは格差婚で微妙な気持ちにしばしばなります。


 妻に「私の映画、観てくれた?」と聞かれても、嫉妬心でキスシーンやラブシーンが見てられない。


 (気持ちはわかりますが、よせばいいのに)心配でロンドンを行ったり来たりしては、嫉妬心でブレてしまうイヴァン。


 シャルロットともギクシャクしてきます。


 「男の嫉妬が世界一カッコ悪い」とよく言いますし、私もそう思いますが、この映画を観ていて「これはいたしかたないなあ・・・」と思いました。


 普通の男が女優さんを妻にするとたいへんだ、という極端な設定を通じて、男女関係の難しさと夫婦愛をコミカルに描いています。


 どちらかの一方的な嫉妬は、イヴァンのように自分が格差を勝手に気にしていることに代表されるような自分の自信のなさが引き金になっていることが多いかもしれませんね。


 で、相手を信頼できない。


 この場合は自分自身のコンプレクスの裏返しでしょうね。


 いわれない嫉妬にかられた方は、相手の思い込みや根掘り葉掘り聞かれたりして、なんだか拘束されている気分になり、段々ウンザリしてきて、喧嘩が絶えなくなり、本当に仲がギクシャクしてしまうことも。


 しかし、愛情が発生すると人間は独占欲も同時に発生しますからね。


 ですから、程度の差はあっても避けて通れないことかもしれませんね。


 この独占欲をいかにコントロールして、あまり相手を不自由にさせない、ということが大事ですね。相手を束縛することになりますし。


 かといってほっとき過ぎもよくない。そのかねあいが男女関係のキモかもしれませんね。


 妻の俳優という職業が理解できず、自ら俳優養成コースに入るイヴァンのコミカルかつ悲しいシーンがありましたが、互いにパートナーへの職業や自己実現に対する理解が重要ですけれども、口で言うほど簡単ではない、ということでもある。


 違う人生を歩んできた、言ってみれば他人が共に生きることは、素晴らしさと同時に結婚独自の困難も背負うわけですね。


 実は、夫役で監督・脚本も務めたイヴァン・アタルは、「愛を止めないで」(1991年)での共演をきっかけに交際し、実生活でもシャルロット・ゲンズブールの夫なんです。


 彼女との間にお子さんも3人みえるそうです。


 前にレヴューした「フレンチなしあわせのみつけ方」も自分の妻役でイヴァンはシャルロットを起用しています。


 公私ともにシャルロットはイヴァンのミューズ(女神さま)なのでしょう。

 

 私には、映画を通じて夫婦仲の良さが伝わってきましたね。


 「きっといい夫婦なんだろうなあ」と素直に感じました。


 シャルロット・ゲンズブールは、かわいらしさと独特な雰囲気を持ち合わせた女性ですが、彼女の魅力を監督である夫・イヴァンが最大限に引き出しているようにみえましたね。


 ラストシーンが特に良いのですよ・・・。