第188条(占有物について行使する権利の適法の推定)
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

重要度:4

メモ書き:
(1)他人が動産や、不動産を占有している場合には、その他人は所有権その他の権利を適法に有しているという推定を受ける。
(2)例えば他人から占有を承継した者は、当該他人が権利を適法に有していると信頼しても保護され、その他人の権利適法の推定が働く。但し占有者が自己の権利を主張するためには、前主からの承継の事実を立証する必要がある。

(3)判例
1. 他人の土地を占有することにつき正権原(使用借権)があるという主張については、本条を援用して自己の正権原を土地所有者に主張することはできず、その主張をする者に立証責任がある(最判昭35・3・1)[14-12-イ]。
2. 本条により即時取得者の無過失が推定される(最判昭41・6・9)[20-11-ア, 5-9-オ]

(4)出題過去問の番号:[14-12, 58-10-1, 20-11-ア, 5-9-オ]

(5)過去問
1. 民法第188条にいう占有物の上に行使する権利とは,所有権その他の物権に限られ,賃借権その他の債権は含まれない。
→×[14-12-ア]

2. 土地の占有者は,その土地の所有者である旨を主張する者からその所有権に基づき明渡しを請求された場合において,その者から土地の所有権を譲り受けた旨の主張をするときは,民法第188条による推定は働かず,所有権の譲受けに係る事実を主張立証しなければならない。
→○[14-12-イ]

3. 他人の所有する土地につき地上権を主張する占有者は,その土地の所有者に対し,民法第188条に基づき地上権の設定登記手続を請求することができる。
→×[14-12-ウ]

4. 建物の賃貸人が有する不動産賃貸の先取特権は,賃借人がその建物に備え付けた賃借人所有の動産に及ぶが,賃借人が占有している備付け動産は,民法第188条によって賃借人の所有に属するものと推定される。
→○[14-12-エ]

5. 民法第188条が適用されるのは,現在の占有者についてのみであり,過去の占有者は,その占有の間,本権を適法に有していたとは推定されない。
→×[14-12-オ]